ゴリラさんより、ゾウさんのが当てはまりません?
17
「おにいちゃんと、おねーちゃん、ありがとです」
「よし、良く言えたぞ」
番長…… いや、江田 樹が、妹の真琴ちゃんのお礼の言葉を誉めて頭を撫でる。
うんうん、良く言えたよな。
「実際は知らせただけだし、気にしないで」
「いや、いずれ、何かしら報いるからよ」
……そういう言い回しとかがバンチョーだってのに。
「それにデートの邪魔したみたいだし」
「へ、うん、いいえお構い無くぅ」
迫力に負けて、伽耶ちゃんが少し引き気味。
「羽月さん、だよな。桂馬と付き合っていたんだ」
「ええ、ラブラブし始めたの」
「今日は笠木と平さんもいるよ」
「そうか……」
クラスメートの名前を告げたが、樹にも予定があるのだろう、広場の時計を気にしている。
もう解散しておこう。
「何か予定があるんじゃないのか?」
「あぁ…… 何にしろ、ありがとう。またな」
「真琴ちゃんも、ばいばい」
「きれーなおねーちゃんも、ばいばーい」
真琴ちゃんからの言葉に、伽耶ちゃんは可愛らしい服の中に縮こまるように照れていた。
「何か、付き合わせちゃったね」
「うぅん、良いことしたのだもの、むしろどや顔して」
いや、どや顔はよく分からない。
「僕らの関係の宣伝にはなった…… かな?」
「一回のアピールで伝わるのは、ここにどれだけクラスメートがいるかによるんだけど、わかんないし気にしなくていいんじゃない?」
暖簾に腕押し、ぬかに釘。
それを言ったら、行動の甲斐がない。
それはそれとして、どや顔ってどんな顔?
「……ふふはふはひ、あははっ、何ぃその顔!?」
「……どや顔が分かんないから…… 歌舞伎っぽく?」
「ぷふぁっ、はっひあははははは、ぃやっば、お腹いたい……」
「何故だ……」
まぁ、変顔ではない、というのは分かった。
☆
僕らはランチ予定のファミレス前に居る。
合流するまで、伽耶ちゃんと一緒に生活雑貨と電化製品とかを流し見て、海外衣料品をガッツリ見た。
教えてもらった通り、だいぶサイズのバラツキが有ってためになった。
「ありがとう、また服を選んでもらっちゃって」
「どぞどぞ、マッチョのマネキンには事欠かないから」
「いや、悪いから何かお礼しなきゃ」
「今も振り回してる自覚はあるのよー? これでも釣り合わないかなぁって思うし……」
伽耶ちゃんがスマホの画面を確認する。
イマドコの返事すらない。
「……来ない、ね」
「来ないわね」
伸と平さんからの連絡がない。
時間は10分過ぎた位だけど、周りはだいぶ混雑し始めていたので、店内に先に入って待つことに。
低価格なりの味を守るこのファミレスには良くお世話になっている。
雰囲気は暗すぎず、明るさを控えた店内は落ち着ける。
4人分の席を確保して、注文はしていない。
「どうしたんだろう、笠木くんも反応ない?」
「ないね…… まさかトラブルか……」
でなければ、先走って伸が告白したか。
……今日ここで彼女に告白するつもりはなかったハズ……。
「初穂ちゃん、まさかまたナンパされてるのかしら」
「あー…… 白いワンピース、目立つと言えば目立つし、伸もいるからそんなに絡まれないのでは」
そう思うのは僕だけか。
伽耶ちゃんは思わない様だ。
「桂くんはあのたわわに、抗えるの?」
どうしてもそっちの方向に行くね、キミは。
「ストレートに友人を下ネタに巻き込むんじゃありません」
「……それとも、私みたいに控えめのが、好き?」
「んっ…… と、ね? 落ち着こう」
伽耶ちゃんが隣の席に移ってきて、手を引いた。
彼女の両手に包まれた右手が幸せだ。
「どっち……?」
「……あぁの、近い近近近っ……」
横に座るまま体を寄せてくる伽耶ちゃん、TPOを。
TPOを、考えて。
パニックにさまよう目線が、待ち焦がれた人物に重なる。
「……ごめんなさい、ちょっと早すぎました」
「たいらさんっ!」
逆に遅かったよ……。
「うん、ケーマ、このモテゴリラめ。ここは、お前のオゴリな」
「そうね。お店の中でベッタリしているのは流石に、ギルティーかしら」
「初穂ちゃん、コレは桂くんがムリヤリっ」
「かわいそうな伽耶ちゃんっ」
ガシッとして笑い合うコンボの後、真相が明かされた。
伽耶ちゃんが、僕と秘密の相談があるので待ち合わせに20分くらい遅れて来て欲しいと二人へ連絡をしていたのだ。
「私も乗ってしまいましたし…… 伸君も同罪ですからね」
「え? ……うん。おもしろそうだったし」
「ごめん、さっきの質問したくって……」
アレを、質問するために?
女子はドッキリとかハプニングが好きなんだな。
「またか…… やれやれ。いいけど」
伽耶ちゃんによるドッキリというコトで何事もなかったのなら。
僕の返答、何かおかしかっただろうか。
「これでも動じないのな……」
「ゴリラさんより、ゾウさんのが当てはまりません?」
「はっ、ゴリラとゾウだと、どっちにも巨乳はいないよね?」
「お前は何を言ってるんだ」
「お肉が付かないから困ってるのよぅ」
「スリムでカッコいいのに」
「えっ…… そ、そう?」
「伽耶ちゃん、チョロい」
「ケーマ、やるやん」
まあいい、気にしないでおこう。
改めて注文をして、程なく料理が揃い、服を汚さない事だけ気を付けながら食べた。
伽耶ちゃんが二人前のドリアを平らげていたので伸が驚いていたが、チャットで知っていた僕は少し優越感に浸れた。
「ああ、そうそう。次はボーリングね」
言って、伽耶ちゃんは鞄から招待券を取り出す。
なんか人数分以上にあるね。
「お隣のお肉屋さんのスタンプの景品だったの。期限があるからって、まとめてもらっちゃった」
「おお、今月中なら使えるのか」
「またすぐ来るのも、いいですね」
「みんなで使おうネー」
「でも、元は伽耶ちゃんのだからね。代わりに何かしらをおごらないと、と思うんだけど」
「じゃあ…… またデートね?」
「うん、もちろん。ダブルデートだね」
そう答えてから、僕は烏龍茶を飲む。
「……ちっ」
カップを上げた瞬間に舌打ちが聞こえたような。
飲みきって下げると、伸の顔色以外は何も変わらない。
「どうした、伸?」
「鈍感系って、こええな」
「え?」
そんなに言われる程に鈍いだろうか。
僕からすると、平さんも鈍そうだけれど。
☆
息を止めて…… 投げる。
重たい音を立てて、玉が進むーー。
「と、とった!」
「うわ、すごいですね」
「スプリット成功…… カバーありがと!」
思わず熱中していた。
少しだけ恥ずかしいが、僕は伽耶ちゃんとハイタッチした。
「ふーっ、なんとかね。また平さんがストライク出しちゃうと引っくり返るけど」
「ふむむ…… 役に立ってなくて申し訳ないぃ」
「いや、初めてにしては上手いと思うよ」
練習ゲームを一回してから、僕と伽耶ちゃん、伸と平さんのダブルス対戦をしている。
ボーリングの経験者は、僕と平さんだけだった。
伸は軽い玉を選び、なるべく真っ直ぐ投げられるようにまだ練習している。
伽耶ちゃんは重たい玉を使いたいと言っていたが、指が細くて小さい手では、それ程重いものは振り回せない。
結局、平さんと同じ重さの玉を使い、フォームを教えてもらったら直ぐに投げられるようになっていた。
しかし、当然、経験がモノを言うゲームだ。
僕はボーリングをあまりやっていなかったが、平さんは別格だった。
「ストライク!」
「……うわぁ、初穂ちゃん、ぷろふぇっしょなるる?」
うん、緊張感なく出してるね。
それに、いい笑顔だ。
伸が程ほどに真っ直ぐ投げられたため、平さんのカバーで確実に点数が伸びて、僕らは二回挑んでも勝てなかった。
スカートを翻してストライクを取る平さん、カッコいいな。
こうなるのが当然だったようだ。
評価とブックマークしていただけると喜びます☆
ヨロシクお願いします☆(°▽°)




