テレパス
ザッ
ヘスが武器を構えた。
紅炎馬が近づいてきたみたいだ。
「ヘス、武器を下ろして。」
なんだか、紅炎馬は何かを言いたそうだ。
フガ。フガ。
うーん。
流石に俺にはわからない。
〈テレパスを使いますか?〉
また、セイバーか。
テレパスってなんだよ。
魔法か?
〈いいえ。魔法ではありません。これは、ヒロ様専用初期プログラムに組み込まれているものです。そして、これを使えばある一定の範囲内にいる全ての人がお互いの言葉がわかるようになります。〉
便利だな。
よし。早速使うか。
セイバー、よろしく!
〈わかりました。テレパス、起動。〉
「フガッ…先程は私に刺さっていた針を抜いてくれて本当に助かった。痛くて、痛くてしょうがなかったんだ。」
「誰?」
「誰ですか?」
「…?」
グラン、クララ、ヘスがどこから声が聞こえてきているのか分からず、ポカンとしている。
あっ。ごめん。
伝えてから使った方が良かった。
「これは、紅炎馬の声だよ。俺の能力で言葉が通じるようにしてみたんだ。」
「流石ヒロ様。そんなこともできるのですね。」
クララに褒められると、悪い気分にはならない。
「お礼に、お前に仕えてやってもいいぜ。」
紅炎馬が言う。
なんと上から目線な言葉なんだ。
まぁ、仕えてくれるんなら、それが嬉しいけど…。
「俺はパーシヴァル様に仕える身だ。それでもいいのか?。」
「そんなこと別に気にしないよ。」
じゃあ、いいや。
それよりも…
「何か儀式はあるの?」
パーシヴァルとの儀式を思い出したのだ。
「いや、特にないよ。名付けをする人もいるけど。」
ふーん。
特にないんだ。
じゃああれはレアな経験だったんだな。
あと、名付けしてあげたら強くなるよな。
〈はい。名付けをすると、魔力を消費して名付けた相手を強くすることが可能です。〉
ふーん。
じゃあ、どうせなら、名付けしとくか。
「おい。紅炎馬。名前つけてやるよ。」
俺は舐められないように、できる限り大きな態度で話しかける。
「これがいいとか希望はあるか?」
「かっこいいやつ。」
紅炎馬が答える。
出たー!めんどくさい答えだ。
かっこいいやつとか考えるのめんどくさいんやぞ!
うーん。
うーん。
何にしよう…。
「じゃあ、赤兎馬なんてどうだ?」
「うん。渋くていいんじゃないですか?」
だから、なんでお前は名前つけてもらう側なのに偉そうなんだよ!
〈では、この紅炎馬を赤兎馬と名付けますか?〉
はい。
俺の視界が暗くなっていく。
体の力が抜けていく。
俺はもうダメかもしれない。
そんな状態で俺は紅炎馬が倒れていくのをチラリと目にした。