第24話:桜舞う旅立ちと、名前で呼ぶ絆の要塞
うららかな春の陽気が、満開の桜並木を優しく揺らす。
今日、俺たちは三年間の思い出が詰まったこの校舎を卒業する。
体育館で執り行われた卒業式が終わり、教室へ戻ってきた俺たち10人は、それぞれの胸に卒業証書の筒を抱き締めながら、感慨深げに窓の外を見つめていた。
「ハァ……ついに卒業かぁ。長かったような、あっという間だったような気がするな……」
桐生蓮が寂しそうに笑いながら、自分の席の机を愛おしそうに撫でる。その横で、橘零がフッと優しく目を細めた。
「そうだな、桐生。……いや」
レイは少し照れくさそうに眼鏡の位置を直すと、姿勢を正してレンの顔を真っ直ぐに見つめた。
「……今日からは高校も終わり、みんなで新しい家で暮らすんだ。いつまでも『桐生』と苗字で呼ぶのも他人行儀だな。……これからは『レン』と呼ばせてもらう」
「ッ!?!?! れ、レイ!? 今、俺のこと『レン』って……!?」
レンがガタッと椅子を立ち上がり、顔を林檎のように真っ赤にして目を見開いた。
「ふむ……素晴らしいな。高校卒業を機に、仲間同士が苗字呼びから『名前呼び』へと変化する関係性の進化……! 実に感動的な演出だ!」
風間凪がサングラスを外し、爽やかに微笑みながら語りかける。
「だったら、俺たち全員でそうしようぜ。俺は凪だ。……よろしくな、蓮、零、竜樹、蒼真」
「おう! よろしくな、ナギ!」
竜樹と蒼真が胸を叩いて笑い合い、小鳥遊雛と一ノ瀬夕日も顔を見合わせて可憐に微笑んだ。
「ふふっ、雛ちゃん、夕日ちゃん……これからよろしくね!」
「うんっ! さくらちゃん、ヒナちゃん、ユウヒちゃん……! みんなで名前で呼び合うと、本当の家族みたいで嬉しいな!」
教室中が温かい温もりと笑顔に包まれる。
そんな中、俺は腕の中にすっぽりとさくらを抱きすくめ、その頭を優しく撫でていた。
「……フッ。全員が名前呼びになるのは結構なことだ。これで俺がさくらに『天海』の苗字を与える卒業後の手筈も、より一層際立つというものだ」
「もう……アキくんたらっ! みんなの前でまた恥ずかしいこと言って……っ!」
さくらが顔を真っ赤にして俺の胸元に顔を埋める。
レンが呆れ半分、羨ましさ半分といった表情でツッコんできた。
「おいおいアキ……相変わらず激重過保護だな! 天海アキの愛は卒業しても衰えるどころか加速してやがる!」
「当然だ、レン。俺にとってのさくらは、世界の何よりも優先される絶対存在だからな」
俺が当然のように言い放つと、10人全員から「知ってた」「相変わらず天海くんはブレないね」と温かい笑いが巻き起こった。
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そして午後——。
俺たちは大型のトラックと共に、完成したばかりの【新築特注大邸宅】へと向かった。
「う、うわあああああッ!?!?! なんだこれええええっ!?!?」
現地に到着した瞬間、レンが絶叫した。
そこに建っていたのは、一見すると超オシャレで広大な最新鋭の二世帯風高級デザイナーズ邸宅。だが、その敷地の周囲には最新鋭の監視カメラと重厚なセキュリティゲートが完備されていた。
「これ……本当に俺たちが住む家かよ……! 天海家の資金力と権力、凄すぎだろ……!」
ナギとタツキ、ソウマも口をぐうの音も出ないほど開けて見上げている。
「さあ、入るぞ。引っ越し作業の開始だ」
俺がセキュリティキーをかざして重厚なドアを開けると、10人は一斉に邸宅内へと足を踏み入れた。
1階には、10人全員がゆったりと座れる超巨大なアイランドキッチンと、広々としたリビング空間。その奥には男子メンバー(レン、ナギ、タツキ、ソウマ)の個室が並んでいる。
「すっげぇぇぇ!! リビング広っ!! ここで毎日みんなでパーティーできるじゃん!」
レンが大はしゃぎでソファに飛び込む。
そして、レンの個室の奥に設置された「プライベートリフト」の扉を見て、レイがゴホンと咳払いをした。
「……レン。お前の部屋を経由して、私の部屋(2階)へ上がるリフトだな」
「あ、ああ……レイ。……その、用があるときはいつでも昇ってきていいからな? 俺の部屋、散らかさないように気をつけるし……」
「……フン。お前が勝手に上がってくるのは禁止だが、私が降りていく分には考えてやろう」
照れくさそうに目を逸らし合うレンとレイ。二人の甘酸っぱい雰囲気に、仲間たちから「ヒューヒュー!」と冷やかしの声が上がった。
そして——2階。
女子メンバー(ヒナ、ユウヒ)の快適な部屋を抜け、最奥の重厚な電子ロック扉の前。
「ここが……アキくんと私の部屋……?」
さくらがドキドキと胸を押さえながら見上げる。
俺は指紋認証と顔認証を解除し、ドアを静かに開け放った。
「っ……!? すごい……っ!」
そこに広がっていたのは、最高級ホテルのスイートルームをも凌駕する2LDKの超豪華な空間。
大きなキングサイズベッド、二人でゆったり座れる高級ソファ、広大なベランダ、そして完全防音と防犯システムが施された密室。
「今日から、ここが俺とお前だけの絶対要塞だ。さくら」
俺は後ろからさくらの華奢な腰を抱きすくめ、その首元に深く顔をうずめた。
「あっ……アキ……くん……っ」
「天海さくら……になるための、最初の一歩だ。……一生、俺の側から逃がさん」
「ふふっ……逃げないよ……っ。天海アキくんの、お嫁さんにしてね……?」
さくらがくるりと振り向き、可憐な笑みを浮かべながら俺の首に細い手を回してくる。
1階から聞こえてくる、レンやレイ、仲間たちの賑やかな笑い声。
そして2階の最奥で密着し合う、二人だけの甘く濃厚な熱量。
名前で呼び合う仲間たちとの最高の共同生活と、二人だけの絶対愛。
天海アキとさくらの新しい物語が、いま最高の形で幕を開けるのだった——!




