第23話:雪の卒業前夜と、絶対的合格保証
季節は巡り、木々が葉を落として街が白銀の雪で覆われる冬。
俺たち三年生にとって、高校生活の終わりと未来を賭けた最大の山場——受験シーズンが到来していた。
アキの実家が手配した特注邸宅の建設が着々と進む中、俺たちは連日、俺の自宅の書斎に集まって猛勉強に励んでいた。
「くっそ〜〜〜っ! この数学の過去問、解いても解いても意味不明なんだけどっ!! なんで微分積分の中にこんなトラップが仕掛けられてんだよ!!」
頭を抱えて叫ぶ桐生蓮。その頭を、隣に座る橘零が分厚い参考書でパシッと軽く叩いた。
「騒ぐな桐生。公式の代入手順が根本から間違っている。お前は計算力以前に集中力が足りん。……ほら、ここをこう解くんだ」
「うぐっ……レイ、お前なんでそんな教え方上手いの……? 見た目は可憐な美少女なのに、中身がスパルタ家庭教師すぎるだろ……」
「フン、誰の部屋経由で専用リフトに乗ると思っている。お前が落ちて別の大学にでも行かれたら、あの特注邸宅の防犯システムが狂うからな」
文句を言いながらも、真剣に教え合うレンとレイ。
その周りでは、風間凪、城ケ崎竜樹、一ノ瀬夕日、荒神蒼真、小鳥遊雛の面々も、静かに、けれど熱く参考書に向かい合っていた。
「ふむ……全員で同じ大学群を目指し、共に受験という試練を突破する……。物語の『第23話』として、クライマックスへ向けたこれ以上ない美しいタメの展開だな」
凪がペンを回しながらニヤリと呟く。荒神が熱く拳を握りしめた。
「ああ! 全員で合格して、あの10人の特注邸宅に胸を張って乗り込むぞ!」
「うんっ! みんなで絶対合格しようね!」
雛と夕日も笑顔で頷き合い、和やかな熱気が部屋を満たす。
そんな仲間たちの喧騒から離れた書斎の最奥——特別仕様の特注デスクにて。
俺は、膝の上にすっぽりとさくらを抱きかかえ、あいつの腰をガッチリと左腕で固定した状態で、右手に握ったペンで英語の過去問を添削していた。
「あ……アキくん……っ。みんなが真剣に勉強してる目の前で、この抱っこ体勢は恥ずかしすぎるよぉ……っ」
さくらが顔を真っ赤にして身悶えする。膝の上で可憐に揺れるあいつの体温と柔らかな髪の香りが、俺の鼻腔を甘く満たしていく。
「恥ずかしがる必要はない。お前の脳疲労を和らげるため、俺の体温と血流を直接供給しているのだ。それに、この距離でなければお前の答案の微細なミスを見落とす可能性がある」
「見落とすわけないでしょ!? アキくん全教科満点なんだから……っ!」
「当然だ。さくらに勉強を教える以上、俺が満点以外を取ることは許されん。……ほら、この文法問題だ。関係代名詞の限定用法と非限定用法の解釈が少し甘い」
俺は後ろからさくらの手元を包み込むように手を重ね、ペンを一緒に握って正解を書き込んでいく。
耳元で吹きかかる俺の熱い吐息に、さくらは「ひあぁっ……」と甘い悲鳴を上げて首をすくめた。
「ア……アキくん、距離が……距離が近すぎて集中できないよぉ……っ!」
「集中しろ。俺の目指す大学にお前を確実絶対で合格させることが、俺の最優先任務だ。お前と別のキャンパスに通うなどという地獄のような選択肢は、この宇宙に存在しない」
「激重過保護なのは嬉しいけど、スパルタだよぉ……っ!」
さくらは涙目になりながらも、俺の手の誘導に従って熱心にペンを動かしていく。
一年の月日を経て、さくらの学力は跳ね上がっていた。それもすべて、俺が毎日毎日あいつを膝の上で抱きしめながら、超至近距離で叩き込んだ愛の英才教育の賜物だった。
「……おい橘、あいつら勉強してるのかイチャついてるのか分からんな」
「言うな桐生。あれが天海の『絶対合格保証システム』だ。あのプレッシャーに耐え抜いている白石さんも大したものだがな」
レイとレンが呆れ顔で見守る中、夜は静かに更けていった——。
——そして、模試も受験本番もすべての試練を圧倒的な成績で突破し、春の気配が迫る卒業前夜。
明日には高校の卒業式を控え、俺の自室のキングサイズベッドの上で、俺とさくらは二人きりで静かに横たわっていた。
カチャリと鍵のかかった密室。シーツの海の中で、俺はさくらの華奢な身体を抱きすくめ、あいつの可憐な顔を見つめていた。
「……アキくん。明日、卒業だね」
さくらが俺の胸元に顔をうずめ、少し寂しそうに、けれど深く満たされた声で呟いた。
「ああ。三年間通ったあの校舎とも明日で別れだ」
「なんだか、あっという間だったなぁ……。入学したときは、アキくんが私の安全のためにって、毎日お弁当チェックしたり、登下校で不審者を撃退したりして……すごく驚いてばかりだったのに」
「当然の処置だ。お前の安全と幸福を守ることが、俺の人生の絶対命題だからな」
「ふふっ……知ってる。アキくんの愛、三年間でずっと重くなっていったもんね」
さくらはクスクスと笑うと、胸元から顔を上げて、潤んだ瞳で俺をじっと見つめてきた。
「……ねえ、アキくん。明日卒業したら……私、本当の意味でアキくんのものになるんだよね?」
「当たり前だ」
俺はあいつの腰を強く引き寄せ、逃がさないよう身体を密着させた。
「卒業した瞬間から、お前は俺の『お嫁さん』だ。あの特注邸宅の2階最奥で、俺と毎日寝食を共にし、一生俺の過保護な愛に縛られ続ける。拒否権はない」
「拒否なんて……最初からするつもりないよ」
さくらが愛おしそうに微笑み、自ら背伸びをして、俺の頬にそっと可憐な手を添えた。
「アキくんの激重な愛……私、一生受け止めるって決めてるから。……ねえ、卒業する前に……今夜はもっと、アキくんの印をつけて?」
可憐で、健気で、甘い誘惑。
俺の中の凶暴な所有欲が、ドクンと激しく爆発した。
「……さくら。途中で『重い』と泣いても、絶対に許さん」
「うん……っ。アキくん……んむッ……!?」
言葉が終わる前に、俺はさくらの柔らかい唇を深く、濃厚に塞いだ。
卒業前夜の静かな室内。
何度も角度を変え、舌を滑り込ませて互いの唾液を貪り合い、さくらの白い首元や鎖骨に新しい甘い噛み痕を深く刻み込んでいく。
「んあっ……っ……アキ……くん……あつ……い……っ」
「さくら……愛している。世界がどうなろうと、お前は俺の永久の所有物だ」
「私……も……アキくんを……愛してる……っ!」
明日の卒業式、そして待望の特注邸宅での新生活へ向けて。
二人だけの絶対愛の絆は、クライマックスへ向けて、どこまでも深く、濃厚に実り結ばれていくのだった――。
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