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兵士たちの平凡な幸福

「なあ、この仕事ってやってる意味あるのか?」


 ある山の通り道の関所にて、兵士がふたり立っていた。ここは古い小さな砦でもあり、山を越えて取引をする商人たちの休憩所でもあった。しかし商人たちがくるのもまばらではあり毎日ではない。

 基本的には兵士たちが近くの村々から交代でやってきて駐屯し、通過する人々の確認をしたり見張りをしているだけだ。ここ数十年は戦争らしい戦争もやっていないため、盗賊や魔物の被害がでたりしない限りは特に緊張感のある仕事でもない。兵士というよりは休憩所の管理人といったほうが正しいかもしれないぐらいだ。


「まあたしかに退屈な仕事ではあるがよ。俺たち下っ端の兵士なんてこんなもんじゃないのか。いいじゃねえかよ、適当に立ってたりここの掃除したりで時間潰してるだけで金がもらえてよ、それで酒も飯も買える。十分じゃあねえか」

「そうだけどよぉ。なんかもうちょっと他にやれることあるんじゃないかねぇ。ここなんて数日おきに商人たちがくるぐらいじゃねえか、暇でたまらねぇよ」

「なにいってんだ、俺の村よかまだここのほうが人が来てるよ」


 彼ら一般兵士は田舎の農民の三男など継ぐ土地もなく、手に職もないものたちが地域の練兵所で最低限の読み書きや兵士としての訓練を受けて配属された者たちだ。特に目立つ才もない場合は出身の地域の警備などに回されるか、兵士とは名ばかりの工夫こうふとして道を作らされたりする。

 この二人はそうやってここの関所に配属されていた。ある程度は出身の村に近く、非番の間はたまに帰ったりもできているし、給料も田舎の仕事としてはそこまで悪いというわけでもない。ただただ退屈なだけだ。


「俺のじいさまはよ、前の隣の国とのいくさに出たとかでことあるごとに自慢してくるんだよなぁ。その時に受けた傷の痕だとかを百ぺんは見せられたね。それに比べて若いもんは戦も知らんでたるんでるとかなんとかさ」

「あー、じじいたちはすぐそうやって自慢するよなぁ。もう何十年前の話だよって」

 現在は隣国との戦争も小康状態であり、兵士は盗賊や魔物と対峙するほうが多いぐらいだ。しかしそれも基本的にはもっと練度も装備もしっかりしている兵士や騎士たちが担当している。

 この砦にしても、無人にしていると山賊や魔物などが住みついてしまうため常に誰かが居ないといけないというだけで維持されているようなものだ。しかし二人とも祖父たちのように名誉のために戦争に行きたいかというと別にそんなわけでもなく、ただ生きるためのの日銭を稼ぐためだけに兵士を続けているだけだ。


「ガキの頃はもうちょっと夢のある大人になると思ってたんだけどなぁ。話に聞くような騎士様や魔法使いなんかに憧れたもんだぜ。棒切れもってこれは伝説の剣で、俺は竜を殺す英雄だなんてな」

 二人とも村での子供たちのごっこ遊びを思い出してがははと笑う。昔のごっこ遊びでは聖剣を振り回す英雄様だったが、今では暇を持て余している田舎の下級兵士だ。竜なんか一度も見たこともないし、剣もろくに扱えないままでいる。


「まあそんなもんさな、人生なんて。せいぜい金を稼いでそのうち村で土地を少し買って畑で麦でも作るさ」

「えらいなあおまえ、俺なんて酒で無くなるから金なんて貯まんねぇよ」

 そんな話をしていたら道向こうから商人の荷馬車がゆっくりとやってきた。少し日も傾いてきたためおそらくここで夜を明かすのだろう。二人は酒でももってたら売ってもらおうぜなどと言いながら商人を出迎える。


 平凡で退屈だがそれほど悪くもない兵士たちの日々がゆっくりと過ぎていく。

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