表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/18

幕間:絶対的な王の苦悩

 王、テオドリク三世は苦悩していた。ただひとりで。


 大陸にて現在最大の領土を持つ国、ヴェリタス王国。

 その権力基盤は先の王たちの偉業で絶対王政化が完全になり、政治の中心は貴族たちから官僚制へ移行、国王直属の常備軍を持ち、重商主義による積極的な投資により商業も発展させ経済も十分に強くなった。

 また王家の権威性の保証として女神教の儀礼派を巻き込み、王家は女神からの啓示により選ばれた一族なのだという逸話を定説化させた。教会の催事でもことあるごとにその逸話を語ることを数世代にわたり行い、もはや王国でその話を知らないものはいないぐらいになっている。


 王国は一見盤石に見える。しかしその実としては権力の腐敗が進んでいた。

 官僚たちも貴族出身で世襲の者たちが多く、賄賂や恣意的な予算の執行や横領などが報告されている。常備軍はとにかく金がかかるが、ここしばらくは平和で大きな戦争をしていないため訓練のみで実戦を知らない兵士も増えている。商業の発展は税収も増えるが、どうしても力を持った商人と官吏との癒着にもつながる。


 ただしこれでも貴族たちと謀略を繰り返していた時代、徴兵中心の泥沼の戦争の時代、経済が弱く物が足りてなかった時代よりは格段にましなのだ。

 ただよりよい施策を進めても新たな問題は次々と出てくる。


 テオドリク三世は先代たちの偉業を讃えつつも、絶対王政であるがゆえに王国のあらゆることの責任を負う重責を押しつぶされそうになっていた。父である先代の王が数年前に病で亡くなり、若くして受け継いだこの冠はあまりにも重すぎた。

 官僚たちからも教会組織からも担ぐには軽い王だと思われているに違いない。最終的な決裁権は王が握っているが、次々と決裁のために運ばれてくる各政策については正直細かいところまで把握しきれていない。


 できるだけのことはしている、王国を善くしようとは考えている。

 ただ能力も経験も足りていない。権力と知識だけではどうにもならない。


 人として善く生きたいが、それだけでは国家は持たない。誰かの味方をすることは誰かの敵になる。誰かの利益は誰かの不利益にもなる。すべての人が納得する答えはない。個々に割けるだけの努力と誠意、そして多くの妥協が残るだけだ。


 王は国家におけるすべての決定権を持つ。しかしそれはあくまでも形式的なもので国家を思うがままに制御することなど不可能だ。

 例えるなら多数の犬の首につながる紐を握る飼い主のようなものでで、様々な方向に行きたがる彼らをどうにかこうにかなだめすかし前に進もうとしている。どうしても相反する方向に引っ張られた時にはどこかの紐を離すしかなくなるときもある。


 ただテオドリク三世は強い権力と弱い自己の矛盾にじっと向き合っていた。

 民のため、国家のために弱くともできることをやらねばならないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ