表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の彼方と異世界クロスオーバー 〜アニメの勇者+αと共同生活はじめました〜  作者: 高橋聖
第五章 タイムスリップ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/88

5-13 もう一つの現実世界

「いってきま~す」


 普段となんら変わりのない秋の金曜日の朝。ちょっといつもと違う点があるとすれば、今日が体育祭だということだろうか。

 春晴カナタは愛用の黒い電動自転車にまたがって、家の前の坂を下る。最初の曲がり角を曲がろうというところで、思いもよらない非日常がひょっこり顔を覗かせた。


「うわぁっ!」


 咄嗟に急ブレーキをかける。

 「ごめんなさい」とカナタが言う前に、彼は口を開いた。


「おはよ。俺」


 カナタは、目の前のもう一人のカナタの顔を見つめる。


「え、俺が、もう一人……は?」


「詳しい事情は後で話すから、とりあえず乗せて。『金縁くん』」


 カナタはこの世界のカナタが金縁の丸メガネをかけていたことから、『金縁くん』と呼んだ。彼のことは以後、というよりこの話に限り『金縁カナタ』と呼称する。


 話を戻そう。

 カナタは金縁カナタの自転車の荷台にまたがった。ノーヘル二ケツに重量オーバーとスリーアウトだが、金縁カナタはとりあえず出発した。


「で、事情って?」


「単刀直入に言うね。俺がもといた世界では、俺以外みんな死んだ。父さんも母さんもセルアもマキナもチハヤもみんな」


 金縁カナタは焦って思わず急ブレーキをかけた。


「……は? それってどういう冗談?! 俺がもう一人いる時点で別の世界の存在は疑わないけど・・・」


「話は最後まで聞いてよ、金縁くん。あと早くしないと遅刻する」


 そう言われて、金縁カナタは渋々自転車を再び漕ぎ始めた。


「……で、俺は全滅の原因がある過去を変えるために江戸時代まで行ったわけだけど・・・」


 また急ブレーキ。


「今度はタイムスリップぅ!?!?!?」


「だーかーら! いちいち驚いて自転車止めないでよ」


 金縁カナタはまた自転車を漕ぎ始める。


「……で、過去改変は無事成功。みんな生きてるかなーって現代に戻ってみたら、それが全然、ダメだった。リゲル曰く・・・」


 またまた急ブレーキ。


「リゲルって、リゲル・ルゥアのこと?!」


 カナタは呆れた様子で「そう。だから出発進行ー!!」と指示した。そして再び動き始める。


「まさかリゲルまで現実世界に……」


「そうそう。……で、リゲル曰く『過去を変えても別の未来が別の世界線として生成されて、自分達のいる世界線の未来そのものは変わらない』って」


 その事を聞いても金縁カナタにはよく分からなかった。橋の上に吹き付ける風も、答えを教えてはくれない。


「で! 今いるこの世界が『全滅しなかった世界線』ってわけ!」


「……は? つまり俺は、オリジナルじゃない……ってこと?」


「それは知らん」


「知らんかぁ……まぁいいや。俺は俺で今生きてるし」


 金縁カナタ、驚くほどポジティブである。


「……で、俺らはちょっと用事があってこの世界に来たんだ」


「用事って?」


 すかさず尋ねる。


「それは・・・」



 **********



「また来たのか!? 異世界から」


 同じ頃、春晴家のリビング。七西中の体育祭を見に行く準備で、やれ「ビデオカメラどこ」とか「椅子が足りない」とか「マキナが起きてこない」とかドタバタやっていたそこに、現れたのだ。


「……はい。科学者で僕たちの協力者でもある、リゲル・ルゥアです」


 と、セルアが紹介して「nice to meet you♪」とリゲルはウインクを決める。

 呆れたわけではないが、タイチはため息を一つ吐いた。


「とりあえず、飯、食うか?」


「あぁ、thank you。but、やらなきゃならないことが俺にはある。mr.カナタのチェンジャーはwhere?」


「カナタくんのお部屋じゃないですか?」


「thank you、ms.ラーシャ。行ってくる」


 階段を上る最中、リゲルはふと思う。「この家は、人がいればこんなにも賑やかなのか」と。


 二階に到着。彼はカナタの部屋の扉を開けた。


「good morning、ニコーラー・マカリスター」


『――――ダレですかあなた』


「I'mリゲル・ルゥア。the underground cityのgenius scientistだ」


『そんなヒトが、ワタシにナンのヨウで?』


「ちょこ~っと、modificationを……なっ」


『えっ? それはどういう……あっ、ちょっとヤめてください! そこねじハズさないで! フタトらないで! キバンにはんだごてアてないで! イヤーっ!!!』


 その叫び声に、布団でぐっすりだったマキナは叩き起こされた。


「朝から何よ? ……うるさいなぁ……」


 髪を乱雑に掻きながら廊下を歩く、寝起きのだらしない姿の彼女。その青い目に留まったのは、カナタの部屋でチェンジャーの改造に励むリゲルの姿だった。


「えっ、リゲル!? リゲルよね!? なんでこの世界にいるの!?」


「shut up!!」


『わっ。ツバがキバンにチりましたぁ!』


「作業中に話しかけたら怒る感じもそのまんまリゲルだ……じゃ、また後で」


 そう言ってマキナはリビングへ降りていった。


 『もうやだあ』と泣き顔をドットで浮かべるニコーラーを押さえつけて、リゲルは改造を続ける。


「まあまあ。youやmr.カナタがstrongerになるためにnecessaryなことだから……」


 いくら嫌でも暴れないことが、リゲルにとって助かる点だろうか。改造作業は、まだまだ続く。



 **********



 また同じ頃、国道大通りから少し外れた飲み屋街の一角にある廃雑居ビル。ここの三階、以前はホストクラブがあった場所に、刃那伊地タカトは居を構えていた。


「今日こそ、春晴カナタを、殺す。絶対」


 その時、ガサッと背後で何か音がした。


「誰か、いるのか?」


「ワタシだ」


 向こうの世界から来たタカト(以後タカトA)が、元カウンターだった場所から腕を組んで登場した。おもわずこの世界のタカト(以後タカトB)はフリーズする。処理に時間を要しているのだ、これが機械人間が驚いた時の反応である。


「私が、もう一人、だと」


「そうだ。ワタシは、別の世界から来た、貴様だ」


 その瞬間、タカトAはタカトBに頭突きをした。タカトBの思考回路が揺れる中、タカトAはそしてこう良い放つ。


「全て、思い出せ。貴様が何者で、どんな何万年を過ごしたか、全て、思い出せ」


「ウ……ウ……ウワァァァァァッ!!!」




 数分後。


「落ち着いた、か?」


 全てを思い出したタカトBは取り乱して、息を浅く吸ったり吐いたりしていた。機械人間なのに。


「あぁ。ありがとう、ワタシ」


「落ち着いたなら、これを、見ろ」


 タカトAの手には、自分も見せられたカナタのスマホinファンタジーワールド(動画配信サブスク)があった。




 さらに一時間後。


「魔王軍、か。吐き気を催すほどの、外道だったな。そのような集団と、同じようなことを、ワタシはやろうと、していたのか。それにセルア・レイズ、マキナ・アーロウ、ゴルダン・クロルド、ラーシャ・マグナ、彼ら彼女らは、真の英雄だ。その勇ましい心は、決して、罪人の物などではない」


「住む世界は違えど、同じワタシ。抱く感想は同じ、か」


 その時、タカトB唐突に立ち上がった。


「遅刻だ。学校に、体育祭に、行かねば」


 そうかそれもあったなと、タカトAも思い出す。時計の針はとっくに九時半を指していた。


「最後に、一つ、聞かせてくれ」


 タカトAは尋ねる。


「魔王軍とは、手を組んで、いるのか?」


「いや、組んでいない。単独で、襲撃する、予定だった」


「そうなの、か」

 ――――これは、カナタに、伝えておかねば、な。



 **********



「今度はカナタがもう一人ぃ?! 勘弁してくれよもう」


 体育祭をやるということで、校門が解放された七西中。春晴家の一団が保護者テントの一角に陣取ろうとしていたその最中、別世界から来たカナタとエンカウントしたわけだ。


「どーも」


「どーもじゃねーよ。別世界から~って、一体何の用だよドッペルカナタ」


「ドッペルカナタとは失礼な……まあいいや。単刀直入に言うね。俺がいた世界のみんな、体育祭終わった直後に死んでるの」


 マキナたち全員の顔が、一斉に青くなった。それに、困惑も浮かんでいた。


「悪い冗談……よね?」


「それこの世界の俺にも言われた。……そうだったら、来てないよ」


 その時、一歩、カナタの足が前に動いた。また一歩、またまた一歩、さらに一歩。そしてとうとう、カナタはマキナに抱きついた。

 花の柔らかな匂いがした。体は柔くもあり、どこか筋肉質でもあった。三~五センチばかり背丈が上の彼女を、カナタはぎゅっと、抱きしめた。


「ちょっと……やめてよ、ここ外よ? せめてどこか・・・」


「ごめん。それは俺もよく分かってる。分かってるけど…………寂しかったから……」


 マキナの服の肩辺りに、じわりと涙が滲んだ。


 彼女も周りも少しの間、何も言わなかった。彼女はただ抱きしめ返して、カナタを受け入れていた。


 そして、口を開く。


「……そっか。辛かったね」


 その瞬間、カナタに溜まっていたものがぶわっと溢れた。目の前で喪った大切な人と、世界線が違うとはいえ、


 やっと


 また


 会えた。



 **********



  そして、時は午後三時。各組が激闘を見せた七西中の体育祭は、何事も無く幕を閉じた。


 春晴家の七人+別の世界線から来たカナタとタカトとリゲルを乗せた車は、ほんのりとした橙と青が混ざる空の下を走り、家に向かっていた。あの世界線とは違って、雨は降っていなかった。


「カナタは今日、晩飯どうすんだ?」


「あー……そういやアテ無いなぁ」


「いや、そっちのカナタじゃなくて……メガネかけてる方」


「俺は今日はクラスで祝勝打ち上げ~。焼肉行ってくる」


「了解。別の世界から来た三人も、今夜はうちで食べて行きな」


「oh、thank you」


「ワタシは、いらない。機械人間だから」


「ほぉ! 君はサイボーグか! いいねぇロマンあるねぇ!」


 タイチにロマンと言われても、彼にとっては何がやら。


 そうしている内に、車は家に着いた。

 家に着いたらまずやることと言えば、伝達事項の確認だ。


「youのチェンジャーにも、new systemを搭載しておいたからな」


 金縁カナタの机の上には、改造が終わってからずっと涙目風なドット絵を浮かべたニコーラーがいた。


「ガード+とスピード+、それぞれ防御と素早さに特化したフォームだから、頑張って使ってね」


 そうそう、と思い出したようにカナタは自らのチェンジャーからバトルフィルムを二つ、召喚して金縁カナタに手渡した。


「あっバトルフィルムだ」


「うん。レックスとゴースト。これも、使ってみてね」


「分かった」


 それと、とリゲルもウエストポーチをまさぐった。ごちゃついたポーチの中から救出され、金縁カナタに渡されたのは手紙だった。


「もうすぐ、this worldの俺がやって来るだろう。そうしたら、このletterをhand overしてくれ」


「分かった。渡しとく」


 用事は以上だ。三人は揃って金縁カナタの部屋を出て、リビングに向かった。そこには、カナタが何度願ったか、あの日の風景がそこにはあった。ソファーで談笑するゴルダンと父、キッチンに立つ母とセルア、ワークとにらめっこしているマキナとラーシャ。どれも、もう見ることはできないと、カナタは思っていたものたちだった。


「もう、行くの?」


 そんな母の、察した優しい声。


「うん。やることは全部、済んだから」


「……そう。会いたくなったら、いつでも来てもいいからね?」


「じゃあそうする。あっちの世界の色々が片付いたら、また」


 カナタは最後に大きく息を吸って、胸を張り、満面の笑みを見せた。


「ありがとう。みんな、大好き――――じゃあね」


 それだけ言って、カナタとリゲルは家を出た。


「用事は済んだ、か?」


 玄関の外では、タカトが待っていた。


「ああ。無事にな」


「なら、帰ろうぞ」


 そう言われて、リゲルは鍵を空に差し、「『世界〇〇〇一 天の川銀河 太陽系第三惑星地球 日本国 東京都 七王子市 不動台』解錠」と唱えた。

 そして現れた扉の中に、リゲルとタカトが先に消え、カナタは最後に、七人が明るく日々を過ごす我が家を目に納めて、幸せな世界に別れを告げた。




「あっ、もうすぐ約束の時間じゃん!」


 しんみりとリビングでくつろいでいたカナタが、ハッと気付いて叫んだ。


「おぉマジか。店、どこだ? 送ってってやる」


「サンキュー父さん。えとじゃあ不動台下りたとこのスーパー銭湯の隣の・・・」


 この世界での日常は、どうやらまだまだ続くようだ。

 ゾンビパニックが起こった世界線に戻ってきたカナタはふと思い出す。


「あ、晩ご飯食べてくるの忘れた」

 ――――まあ、いっか! また今度、行ったときに食べよう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ