5-7 牢獄
「オラッ、ここに入れッ!」
四人が押し込まれたのは、七王子宿の北の外れにある屋敷の中に設置された、木造り格子が付いた四畳程度の広さを持つ牢屋だった。
施錠されて早々、四人は大きなため息を同時に一つ。
「なーんでこうなっちゃったかなぁ……」
「戦いを見た近所の人が、田んぼ荒らしだと思って岡っ引を連れて来たらしい」
リゲルを除く三人は再びため息を吐き、彼をじっと見つめるようになった。
「何だよ。meが何かしたか?」
「いや。リゲルさんが魔術を使えたら、こんな牢屋すぐに脱出できただろうな、と」
マコトが言った。
「反魔術カルトでsorry」
そう投げ捨てるように言ったリゲルに対し、「誰もそこまで言ってない」とレイカが否定した。
「実際、魔術を使わなくてもこの牢屋は壊して脱出できそうなんだが……問題は奪われた持ち物だ」
「うん。チェンジャー、チェンジガン、釘原さんと月海さんの拳銃と刀と警棒、それとリゲルのウエストポーチ。これ全部取り返さなきゃだよね」
「そうだ。ところがそれがどこに保管されてるやら見当がつかない」
四人はまたまた大きなため息を吐いた。
「とりあえず、奉行所送りになる前に見回りシメて脱出しよう」
マコトのその提案に、全員が力の抜けた声で「お~」と返事をした。
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夜。月明かりが窓から差し込み、牢の中を照らす。
四人全員が、寝苦しい環境ながらも寝入りかけた、そんな時だった。建物の壁の木の板を、外側から軽く叩く音がした。続いて「おーい、いるか?」と、ここ二日で何度も聞いた男の声が、耳に入ってきた。
その声に、全員が目を覚ます。
「一ノ瀬さん?!」
「ああ俺だ」
「どうしてここに?」
カナタが尋ねた。
「ちょっくら千人同心の用事でな」
勘十郎は少し間を起き、口を開く。
「今回の件は悪かった。おいらももう少し上手く弁明できたらよかったんだけどな…………で、これからお前らを助けに行く」
牢の中の四人の頭に、物騒な牢獄破りの風景が思い浮かんだが、勘十郎の「なに」という言葉でそれも薄れゆく。
「力ずくじゃあないさ。一同心の立場でどうにかなるかは分からないが、話をつけてみる」
「お願いします! 今はあなただけが頼みの綱です」
「おう。任せとけ」
三〇分が経った頃だろうか、未だに戻ってくる気配はない。もしや成功したのではないか、とは全員が思ったはずだが、外からこっちに向かって聞こえてくる足音と、開口一番の「すまねぇ」で一転、諦めモードになった。
「無理だった……」
その報告に、マコトは覚悟を決めて口を開いた。
「そうでしたか。では、この建物の構造を、教えてもらえますか?」
「ま、まさか力ずくで脱獄するんじゃねぇだろうな?!」
「申し訳ありませんがその通りです。我々ならきっとやれます」
「バカ言うな! もしそれで捕まりでもしてみろ! 打首もあり得るんだぞ!?」
「安心して。俺たち本物の未来人。必ず逃げれる算段も技もあるから。ねっ」
そう言って現実世界の頼れる大人二人の方に目をやったが、不思議と逸らされて目は合わなかった。
「――――分かった。この建物の構造、教えてやるよ。まず・・・」
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二〇分後、建物の中は深夜にも関わらず大騒ぎとなっていた。なんでも、捕らえて収監されていた不審者が看守を気絶させ、牢を破って逃げ出したらしい。
「こっちには居ない!」
「あっちを探せ!」
合流した二人の警備の男は、まっすぐ廊下を走って探し回る。
そんな彼らが気にすら留めずに通りすぎた壁に、逃げ出した四人は隠れていた。
「hey、どうだmeがinventedした透明マントは」
「最っ高に隠れやすいよ」
流石は科学者、といったところだろうか。魔術でカバーできそうなところでも、科学の力で道具にしてみせる。しかも人数分を携帯までしていたとは。
「これからもお役立ちtoolがwantなときは、いつでもtell してくれ」
それからも四人は隠れながら進み、一つの鉄でできた扉の前で足を止めた。
「ここが押収品保管庫だね」
「ああ、その筈だ」
レイカが扉の錠前部分にスタンバイ。持ち合わせていたスパイ道具の一つ「なんか鍵ピッキングするやつ」を用いてロックを解除した。
「入るぞ」
こっそりと扉を開き、保管庫に侵入する。中に誰もいないことを確認し、忍び足で進む。
そして、木箱の上に探していた物たちがあった。
「見つけた。おーい、こっちにあったよ」
カナタが小声で三人に呼び掛ける。
「よくやった」
四人は各自の持ち物を取り、装備する。あとは建物を出て、本来の目的を完遂するのみ。
「nowが九日のnightだ。ms.スピカがzombieをsettingしたのは、遅くとも一〇日のnight。そろそろ張り込んでなきゃbadかもな」
「よく分かるもんだね」
そう小声で情報共有をしているうちに、四人は建物の裏口にあたる戸の前に到着した。ここから出れば、もう自由の身だ。
カナタがそーっと戸を引いた次の瞬間、戸のすぐ外が爆発。衝撃で吹き飛ばされた戸ごと、カナタは奥の壁に打ち付けられた。
「大丈夫か?!」
心配したマコトが駆け寄る。
「なんとか……」
その時だった。煙の中から、余裕のある乾いた足音が聞こえてくる。誰だ。その疑問が全員の脳裏を通過していく。
やがて姿を見せたのは、今朝カナタと戦っている最中に逃げたと思われた、処刑人タカトであった。
彼の姿を確認したマコトとレイカは、すぐさま拳銃を向ける。だがそれは、タカトの眼中には全く無かった。さしずめ、「拳銃程度で私を殺せるものか」と言っているようなものだろう。
「立て、春晴カナタ。迎えに来てやったぞ」
「迎え……?!」
「ああ、決闘のな」
そう返したタカトは、クククと不気味な笑いを浮かべた後、昂って口を開いた。
「ここで、この時代で、私とお前の一ヶ月に及ぶ因縁に、決着をつけようぞ」




