5-4 ティラノ倒していざ幕末
カナタたちが車型タイムマシンに乗って、昨日ティラノサウルスデーモンと戦った場所へ向かう一方その頃クラハ・ステイシー。お目当ての恐竜の肉を大量にゲットし、城へ帰る用の『扉』の前でティラノサウルスデーモンと涙の別れを繰り広げていた。
「ごめんねぇ、ティラノ。スピカが『城じゃ飼えない』って言うし、デイノケイルスも『俺以外に竜族を増やすな』って言うからさぁ……」
クラハは涙と鼻水を、肉塊を持ってない方の腕の袖で拭い、前を向き直した。
「元気で生きるんだよ」
ガオ、と、大して大きくも小さくもない鳴き声で、ティラノサウルスデーモンは返事をしたように思えた。
「じゃ、バイバイ」
そう言い残して、クラハは扉の中へ消えた。直後に、扉も光のチリとなって消えた。
と、その時、カナタたちの乗ったタイムマシンが、ティラノサウルスデーモンの背後に停車した。
「見つけたぞ、ティラノサウルスデーモン!」
真っ先に降車したマコトが、剣先をティラノサウルスデーモンに向けて叫ぶ。
相対したティラノサウルスデーモンは、威嚇するように大きく吠えた。
「――――! 全く。うるさいったらありゃしない!」
「例の作戦、でいいですよね?!」
カナタが尋ねた。
「ああ。行こう!」
その言葉を皮切りに、三人は一斉に戦闘態勢に入った。マコトは刀を構え直し、レイカは警棒を展開、カナタはゴニンコスモガード+に変身したのだ。
マコトとレイカを背後に隠すようにして、コスモは重い体で地響きを起こしながら、ティラノサウルスデーモンに向かって走り出した。相手は丸腰。最初の、普段より何一〇倍も重いパンチは、ティラノサウルスデーモンの固い皮膚を容易に破壊した。
「今です!」
コスモの背後から、目を瞑って精神を研ぎ澄ましているマコトが飛び出した。
彼の時間は、周りよりも少し遅くなっていた。その間で、暗闇の中から手探りで急所を見つける。彷徨って、彷徨って、彷徨って、やっと見つけた。
目を開いて、彼だけに見える「キリトリ線」を、バッテンの形に沿って、斬る。
斬った場所から、デーモン怪人特有の紫色の血が噴き出た。
ティラノサウルスデーモンは痛みのあまり咆哮を上げているが、致命傷ではなさそうだ。
「カナタくん、もう一回頼みたい」
「オッケー。あ、そういうことなら……」
コスモはスライドを三回引き、オーブリンクを行う。『チョウ・ヒッサツ』と聞こえれば、急いで頭部に照準を合わせてトリガーを引く。
『ショット・フィニッシュ・ショット・パワー!!』
光の弾丸は握り拳のような形で、ティラノサウルスデーモンの頭に命中。固い皮膚を前足の手前辺りまで破壊した。
「今です!!」
「ああ」
柄に手を構え、暗闇の中で再び精神を研ぎ澄ます。
――――見えた。
「ハァーッ!!」
目にも留まらぬ一太刀が、ティラノサウルスデーモンの首を断ち斬った。
次の瞬間には、ティラノサウルスデーモンの体は大きな音と炎を上げて爆散した。
「ぐはっ」
吹き飛ばされて、受け身を取り損ねたのか、地面に打ち付けられたマコトの口から声が漏れる。
「コア、早くコアを回収しろ!」
レイカが叫んだ直後、爆炎の中から赤黒く光輝く球体が浮かび出てきた。プカプカ浮かんでどこかに逃げようとしたその時。
「えいっ」
網で捉えられた。網といっても、虫取り網のような何かだ。
「nice catchだ俺」
「リゲル、その網はどこから?」
「necessaryなitemはいつもこの、マルチポケットにinしてcarryしている」
腰のウエストポーチを得意気に叩いて見せたリゲルは、網の中で暴れているデーモンコアを連行し、タイムマシンの燃料補給用の穴に押し込んだ。
その瞬間、大きな音を立ててタイムマシンのエンジンが始動した。
「さあ、come on! time machineは待ってくれなさそうだぜ」
三人は急いでタイムマシンに乗り込む。リゲルがそれを確認すると、エンジンを一つふかして、アクセルを踏み込んだ。初めてタイムマシンで時間を渡った時以上の力が、彼らにかかる。思わず「ぐっ」と、声も漏れる。
その時、タイムマシンの周囲はまばゆく、目を潰されてしまいそうなほどの青白い光に包まれた。
しかし、気がつくと彼らは力から開放され、慣性の法則に体を揺すられていた。
「いたた……」
「今度こそ本当に、着いたんだろうな?」
「maybe成功……Yay! successだ」
リゲルがそう言った理由、それはカーナビ部分に表示された年/月/日が、
一八六五年/一〇月/七日を示していたからだ。
窓の外を見渡すとあったのは、白い漆喰の壁と墨色の瓦の建物と、そこで客引きをする団子屋のおじさん、通りを歩く着物の老若男女。そして青い空は、彼らを明るく照らし、活気に満ち溢れさせていた。
「俺たち、ほんとに来ちゃったんだ……江戸時代に……!!」




