5-3 白亜紀サバイバル②
タイムマシンが崖から落下し、追手から逃れるために森の中をひた走り、日も沈み切った頃。カナタたちは、タイムマシンから距離も遠くない場所の洞窟に身を潜めていた。いや、焚火から煙が上がっているし、「身を潜めている」とは言い辛いかもしれない。
「はぁ。コーヒーが恋しい」
焚き火を見つめながらマコトが呟いた。
「退勤の前に飲むのがルーティーン化していたからな、お前は。仕事溜めまくってるクセに、きっかり定時で帰るその前に」
レイカがチクリと刺したその時、カナタとリゲルが洞窟に戻ってきた。ボロボロになったタイムマシンを押して。
「ふ~、疲れた疲れた」
カナタも焚き火の側に腰を下ろす。その一方で、リゲルはタイムマシンのボンネットを開き、肩を落としていた。
「やっぱり、壊れちゃってますか」
「exactly。耐crashプラスチックでmakingしていたんだがなぁ。まあbut、butだ、一晩もあれば、simpleなrepairができる。orbのrepairも含めて、俺に丸一日please」
「構わない」
「さて。二人も帰って来た事だし、食事にするか。念のためにキャンプ用品とレトルト食品は一式持ってきている」
レイカは立ち上がり、タイムマシンのトランクを開けに行った。
「やっぱりお前は仕事ができるな、月海。ってかよく荷物無事だったな」
「あ、カレーってあります?」
「むしろカレーしかない」
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現代の時計で言えば、もう日を跨いだ頃だろうか。
リゲルは謎のエナジードリンクを一気に喉に流し込んでから、レンチを力一杯捻っていた。
そこに、カナタが起きてきた。
「お疲れさま、リゲル」
「ああ。can't sleepなのか?」
「――――そう。それに、星見たかったしさ。都会だと、星の『ほ』の字も無いから」
「sure。こっちもunderground cityだ。天然の、しかもこんなにbeautifulなstarry skyは、初めてかもしれない」
リゲルも首を曲げて、空を見上げる。見渡す限りの星、星、星。天の川も空を縦断して、壮大に光輝いていた。
「――――なぁ、こういうことはheardすべきじゃないかもだが、Mr.カナタ、辛いか? 今朝、reunionしてからやけにfineだったから気になって……」
そう言われて少しの沈黙の後、カナタは口を開く
「辛い、そりゃ辛いよ。今すぐにでも後を追いたいくらい。でも無意識下でかな、取り繕えちゃってる。普段通りのテンションで、どうにか保とうとしてるのかな? あ、過去改変でどうにかなるかも~っていう希望も、少しあるからかも。これがダメだったら、今度こそ俺は……」
「なら」と、リゲルは語気を強めて言った。
「過去をchangeすればいいだけの話だ」
少し間を起き、カナタは「そだね」と呟く。大きなあくびを一つして「そろそろ寝るね」と告げ、洞窟の中に戻った。
「good night」
リゲルの修理は、一晩中続いた。
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次の日。太陽は既に天高く上り、自然超豊かな地球を照らしていた。
午前中は見回りを兼ねた付近の偵察をして過ごし、時刻はだいたい正午前。火の消えた焚き火を囲んで、ランチミーティングをしていた。
「これが、新たなorbだ」
そう言ってリゲルは、以前の豪華絢爛さはそのままに、少しメカメカしくなった首飾り、もといチェンジャーを手渡した。
「ありがとう。それで、新たな~って、どういう意味?」
「new systemを搭載させてもらった。detailsはorbにhearしてくれ」
その時、オーブがリズミカルに光り出した。カナタは覚えていた。初めて、起動認証を行った時を。手を優しくかざしたら、見慣れたデジタルドットの顔が浮かび上がった。
『おヒサしぶりですカナタサマ! ニコーラー・マカリスター、アタラしくなってフッカツしました!』
「久しぶり! いきなりだけど、新しくなったって、どんなとこが?」
『はい! まず、フタつの『ゾクセイトッカガタシンケイタイ』がツイカされました!』
「属性特化型新形態? それって、『炎』とか『水』みたいな属性に特化する、ってこと?」
『いえ、『がーど』と『すぴーど』です。ツカってみればワかりますよ』
「急に説明放り投げたなぁ。ま、百聞は一見に如かず。使ってみるよ」
カナタは腕を大きく広げて伸びをし、首飾りことゴニンチェンジャーを装着。そこからいつもの変身プロセスを踏む。
『『がーど』は、すらいどをヨンカイです』
「あ、そうなんだ。追加で一回、と」
すると、普段のどこか幻想的な電子音の待機音とは打って変わり、工場や工事現場を思わせる機械音、重低音が待機音として付近に鳴り響いた。
「変身!」
カナタは掛け声のすぐ後にトリガーを引いた。
最初は普段のゴニンコスモこと『コスモ』に変身したが、新形態はここからが本番だった。コスモの身体中に、たくさんの銀色の武装が生成されていく。
あっという間に、『ゴニンコスモ:ガード+』に変身を完了した。その姿には「パワードスーツ」という言葉が一番似合うだろう。とにかく"ゴツい"のだ。
「comfort of use、使い心地はどうだ?」
「体に重りが付いた感じ。小学校の時に『高齢者の体を体験しよう』みたいなのをやったんだけど、その時のと似た感覚かも」
もっと分かりやすく具体的に説明すると、両手に八キロ前後のダンベルを持ち、同じ重さの足枷を両足に、両肩には米袋を乗せたような感じである。
「ああ、俺もやったことがあるな」
「というか……それは異世界人に伝わる例えなのか? 下手すれば現代人にも伝わらないぞ……」
「あと、視点高いの慣れるのに時間かかりそう」
それもそのはず。ガード+は、ガードとは言いつつも巨体なパワータイプだ。故に、普段のコスモより一・五倍、高さも幅も奥行きも大きくなっているのだ。
「で、スピード属性はどうやるの?」
『すみません、イうのをワスれてました。『すぴーど』は、ゲンザイチョウセイチュウなんです……』
そう言うニコーラーのデジタルドットは、ヘルメットを被ってペコリとお辞儀をするものに変わっていた。
「ありゃ。――――まあ大丈夫、大丈夫でしょ。ウン」
「済んだなら、そろそろ本題に入らせてくれ。『ティラノサウルスデーモンを倒す方法』について」
マコトの言葉に、全員が真剣な面持ちを見せた。
「まず、解決すべき問題点が一つ。奴の肌の固さだ。俺の剣術でも、カナタくんの銃でも太刀打ちできないほどの固さだった。そこでだ。さっき見せてもらったカナタくんの新フォームで解決できないか? 奴の皮膚はおそらく『岩石に近しい性質の何か』だ。見た目と、一瞬だが触感での判断だが、そう推測できる」
「……そういうことか。『斬る』だったり『小さな一点への集中攻撃』じゃ太刀打ちできなくても、ガード+のパワー攻撃なら『面での攻撃』になるから破壊が簡単、ってことだよね!?」
「そういうことだ。固い皮膚の部分を砕き、脆くなった部分を、斬る。という作戦で行こうと思う」
その後、彼らはキャンプを撤収し、タイムマシンに乗って移動を始めた。スピードは、普通自動車が普通の道で普通に走るぐらいより少し遅いというだけあって、不安定な白亜紀の地面事情を鑑みても、安全な方だ。
「で、作戦にaddだが、ティラノサウルスデーモンのpower sourceをgetすることはpossibleか? time machineのpower souceに転用したい」
「それなら、デーモン怪人を倒す時にコアみたいなのが露出して逃げようとするから、それを捕まえればいいね」
タイムマシンは安全に、だがなるべく速く走っていく。昨日のあの場所に向かって。
強化フォーム回でした!!




