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虹の彼方と異世界クロスオーバー 〜アニメの勇者+αと共同生活はじめました〜  作者: 高橋聖
第五章 タイムスリップ編

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5-2 白亜紀サバイバル

 幕末にタイムスリップしたはずが、なぜか恐竜時代に来てしまっていたカナタたち。

 今は降車先で不運にも出会ってっしまった、腹を空かせたティラノサウルスから、全力で逃げている真っ最中だ。


「hey! あまりtime machineから離れないでくれよ」


「いや無理無理無理無理!! そんなこと考えてる暇無いって」


 この間にも、ティラノサウルスは地を揺らし、大きな音を立てながら迫ってくる。


「釘原! 早くその刀を使え!! 今使わないでいつ使う?!」


「そういえばそうだな」


 マコトは足を止め、大きく右回りをして後ろを向き、刀に手を添えた。


 息を細く、多く吸って、精神を研ぎ澄ます。刹那、瞼の奥でティラノサウルスの首に「キリトリ線」のような線が見えた。


「セイッ」


 おそろしく速い抜刀、そして一振り。ティラノサウルスのその太い首は、鮮血を垂らしながら一瞬にして地に落ちた。


「やった! ありがとう釘原さん!」


「どうってことない」


 釘原は刀に付着した血を振り払い、鞘にしまった。


 そして、ティラノサウルスの体も倒れ切るだろうと、誰もが確信したその瞬間、ティラノサウルスの体はピクリと一瞬痙攣を起こし、再びバランスを取って立ち上がった。


「what!?」


「なぜ死なない……!」


「なんでかって?」


 その声が聞こえたのは、ティラノサウルスのすぐ後ろに生えていた、一本のスギの木の枝だった。フードをかぶった青白い肌の小柄な人物。そう、


「クラハ・ステイシー! なんでここにいるの?!」


 魔王軍幹部でまじない師の彼も、この恐竜時代に来ていたのだ。


「ちょーっと恐竜の肉を調達しに『時間渡り魔術』でね。で、たまたま近くでお前たちがこいつから逃げてたワケ。絶好のチャンスだし、デーモンにしちゃおうと思って」


 四人の目線が、木の上のクラハから目の前のティラノサウルス「だったもの」へ移る。そこには、血走った目が無数に増殖し、全身の皮膚がゴツゴツした岩石のように変化し、体中に太く張り巡らされた赤紫色の血管が異様に目立つ、『ティラノサウルスデーモン』の姿があった。


 新たに生えた首の大きな口で一段と大きな咆哮をあげ、再び襲いかかってきた。

 今度は逃げることなく、全員が交戦状態に入る。カナタはチェンジガンを構え、マコトは再び刀を抜き、レイカは両手に警棒を持って展開させる。もっとも、リゲルは普段から非戦闘員であるため、木の陰に隠れたのだが。


「変身……」


 カナタは首飾りを着けてオーブリンク……できなかった。


「なんで?!」


「lend me!!」


 言われるがまま、カナタは首飾りをリゲルに投げ渡した。

 受け取って、ぐるっと見回してみたところで「oh……」と声を漏らした。


「orbがbreakだ。これじゃchangeできないぞ」


「マジか」


「そのpistolでどうにかfightしててくれ。time machineにtool boxがあるから、それでrepairすればいい」


 「で!?」と、釘原が叫んだ。


「今の俺たちでは到底対処しきれそうにないが、そこはどうすればいい?!」


「hmm……この際だ、time machineを取って来て、一度体勢をrebuildしよう」


「そうだな。私もそれが賢明と見た!」


「じゃ、お願い!!」


 リゲルは首飾りを抱えて走り出した。

 大自然の中、かつ白亜紀ということもあって、地面の様子はかなり悪かった。具体的に言うとデコボコ、石でゴツゴツしている。注意を払わずに走ったら、足を取られてしまいそうだ。


「させないよっ」


 それを追うように、クラハも軽い身のこなしで木々の間を飛び回って迫る。


「ま~て~よ~、地底土人く~ん」


「ハッ。bloodにまみれたvampireにだけは言われたくないぜ!」


 リゲルは途端に進路を変更、右に大きくカーブした。タイムマシンの方向はそっちではないというのに。何か策があるのだろうか。


 クラハも木を軸にして、ポールダンスの要領で向きを変えた。だが彼の視界に、既にリゲルの姿は無かった。


「逃げられると思うなよぉ」


 地面に降りて、近くを探し回る。草の根をかき分けて探してみたり、小型の草食恐竜の巣を覗いてみたり、岩をひっくり返してみたりしたが、どこにもいない。


「おっかしいなぁ、ボクから逃げきれるなんて。地底土人く~ん! 痛いことはしないから出ておいで~!」


 少し離れた場所から、水が轟々と流れる音が微かに聞こえたが、クラハがそれに気づくことはなかった。



 **********



 その音の源である、大きな滝。そのすぐ下には、かなり大きな池ができている。

 白く飛沫が上がっている滝つぼから、1本の線を描き、波紋を広げて動いているものがいた。それは、どんどん陸地に近づいていき、


「っ、あ~、drownedかと思った」


 なんと、池からリゲルが這い出て来た。ブロンドヘアが顔に張り付いて、少し不気味というか、メロいというか、そのような感じになっている。


「Indeed、周りを見ておくことはimportantだな。waterfallがあって助かったぜ」


 髪を顔面から剥がしたリゲルは再び走り出した。

 カナタたちにとっても、追われているリゲルにとっても一刻を争う状況だ。さっさとタイムマシンを回収して、助けに行かなければならない。濡れた服が体に重くのしかかり、ギラギラの太陽が肌を刺す中、その一心で歩みを進める。


 小さな崖をやっとの思いで越え、草やぶを突き進んだところで視界に入る、恐竜時代にはそぐわない、銀色の物体。


「見っけた」


 勢いよくドアを開けて乗り込み、キーを回してエンジンをかけようとする。だが、空ぶかしが続くだけで、一向にかかる気配がない。


「why……!」


 痺れを切らしてハンドルを力強く叩いたその時、エンジンがかかり、車内のコンピューターにも電源が入った。


「okay……!!」


 シフトレバーを操作し、エンジンを踏み込むと、やはり初速から猛スピードで発車した。


 地に足つけて走っていた時より幾分かはマシだが、やはり地面がゴツゴツしていて不安定だ。一つの、小さな操作ミスでも横転しかねない。

 そんな道を走っていたら、見えた。ティラノサウルスデーモンと戦いを繰り広げているカナタたちの姿が。


 リゲルはハンドルを直角に切り、タイムマシンをティラノサウルスデーモンの左足めがけて、横滑りさせて突っ込む。ティラノサウルスデーモンは大きく転倒し、タイムマシンはカナタの文字通り目と鼻の先で停止した。


「さあ、for now!!」


「ありがとう!」


「助かった」


 カナタ、マコト、レイカの三人が来た時と同じ配置で乗り込むと、間もなくタイムマシンは発車した。だがエネルギーを使いすぎたのか、普通の自動車が幅が公道で出すぐらいの速さしか出ない。


 そこに、リゲル捜索を諦めたクラハも戻ってきた。


「あー! いつの間に。さあ立って、ティラノくーん」


 クラハに起こしてもらい、立ち上がったティラノサウルスはいつになく大きな咆哮を上げて、タイムマシンを追いかけ始めた。その足の速さもタイムマシンと同じく、普通の自動車が公道で出すぐらいの速さに匹敵していた。


「来てる! ティラノが来てるぞ!!」


 マコトが後ろをついてくるティラノサウルスデーモンを見て叫んだ。


「ああ、とっくにunderstandだ!!」


「もっとスピードを出せないのか?!」


 アシストグリップを強く握っているレイカが尋ねた。


「maybeエネルギーのoverusedだ! これ以上はImpossibleかもな……」


 何度も何度もアクセルを踏みつけているが、一向にスピードが上がる気配が無い。それどころか減速しているようにも思える。ティラノサウルスデーモンも、どんどん距離を縮めてきている。


 その時、タイムマシンが揺れた。カナタがハッと後ろを振り向くと、そこには鼻先でタイムマシンを突っついているティラノサウルスデーモンの姿があった。


「やばい! もう真後ろまで来てる!!」


「shit……」


 加速に一縷の望みをかけて、再び大きくアクセルを踏み込んだ。すると、その望みを神が受け入れたのだろうか、タイムマシンのスピードがぐんと上がった。

 後ろの窓の向こうでは、ティラノサウルスデーモンがどんどん小さくなっていく。


「よし……」


 このまま逃げ切れる。そうタイムマシンに乗っていた誰もが思ったその時、彼らの前に新たな問題が立ちはだかった。


「なあ、目の前……崖じゃないか?!」


 釘原に言われて、前を向き直したリゲルとカナタの目に飛び込んできたのは、地面の先が青空に向かって伸びている様だった。


「あっやばい。リゲル、このタイムマシン飛べないの?」


「マークツーでcan flyにするplanだったんだよ!」


 崖はもう目の前に迫っていた。


「お、お前らぁ、衝撃に備えろー!!!!!」


 レイカが叫んだ刹那、タイムマシンは崖から飛び出した。空中ではハンドルの操作は効かない。

 彼らはどうすることもできないまま、体を丸めた。


 タイムマシンは前に傾き、直角一歩手前というところで、地面に勢いよく衝突した。


「あーあ。落ちちゃった」


 クラハはティラノサウルスデーモンと共に崖下を覗いて呟いて、


「まー、死んだでしょ。うん。死んだ死んだ~」


 意気揚々と帰っていった。



 **********



 落下の衝撃で、車内は激しくシェイクされていた。だがエアバッグが作動したのと、四分の三が体を鍛えていたお陰か、幸いなことに大怪我を負うものはいなかった。


「み、みんな無事か……?」


「ああ、なんとか……」


「いってぇ、頭打った……」


「みんな、stand up……追手がcomeする前にrun awayするぞ」


 ひっくり返ったタイムマシンから脱出した四人は、至る所が痛む体に鞭打って、森の中に向かって走り出した。

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