5-1 リゲル・ルゥアと解決の鍵
いよいよ先が読めなくなって参りました。
翻訳アプリをお供に、お楽しみください。
マキナがこの世を去ってから、五分あまりが過ぎた。その間、カナタは彼女を雨から守るように、ずっと抱き抱えていた。
生前の彼女の甘いいい匂いとはうってかわって、血の、鉄のような臭いが彼の鼻をツンツンと刺激している。
――――俺も死にたい。
この五分間、絶えることなく頭の中を巡っていたこと。大切にしていた仲間、友達、幼馴染み、きっと両親も、が立て続けに亡くなったこの世界で、何が楽しくて生きればいいのだろう。
心のどこかで静かに決心がついたのだろうか。カナタはチェンジガンを取り出し、自らの頭に突きつけた。
――――きっと耐えられない……
「heey hey heyちょっとstop、そこの希死念慮boy」
「――――は?」
カナタは知っていた。「地底訛り」とファンタジーワールドの作中では呼称されていた、日本語の中に英語が混じった独特な喋り方。
ハッと勢いよく、後ろを振り向いた。
「こんだけのcadaver見てdespairしたか?
まあ、no wonderか。感じからして、少なからずfriendsやfellowのもあるだろうし」
――――cella……makina……goldan……lasha…… 皆passed away……か
「あなた……もしかして……」
「ん? you,もしかして俺のことknowか?」
「はい。リゲル・ルゥアさん、ですよね」
鎖骨辺りまであるボサついたブロンドヘアに、四角い黒縁メガネ。それに白衣を着た、少し気だるそうな細身な男。彼こそが、セルアたちの「協力者」である地下都市の科学者、リゲル・ルゥアだった。
「よく知ってたな。youとも、this worldともfirst contactなのに、wonderなこともあるもんだぜ。まあ、nowは一旦、この場をleaveしようや」
その時、彼らの背後、校舎の内と外を繋ぐ扉の方から、二人の間に割って入るマコトの声がした。
「待て!」
彼は銃を構えていた。ゾンビパニックを聞き付けて、JATやレイカと共に急行してきたというところだろうか。
「釘原さん……」
「カナタ君から離れろ! そしてどこの誰だ!!」
「落ち着いて、釘原さん。この人はリゲル・ルゥア。ファンタジーワールドの、まだアニメ化されてない範囲だけど、セルアたちの助っ人的な立場の科学者キャラで……」
その発言を聞いて、マコトは銃を下ろした。
「――――そうか。『味方』として捉えても良いんだな?」
「that's right! それで頼むよbrother」
そう言って、リゲルは右手を前に差し出した。
「ブ、ブラザー? アメリカ人みたいなノリだな。まあいい、よろしく」
マコトはその手を取った。
「ねぇ、まだここにいた方がいいかな? できればもう、知ってる人の遺体は見たくない……」
「分かった。この人と一緒に、先に家まで送ろう。後で話は聞くけどね」
そこに「いやstop」と、リゲルが割って入った。
「俺はここでもう少しinvestigationがしたい。この一連のincidentのcauseをelucidationだ」
「もう何がなんやらだ。月海にポケット翻訳機持ってきてもらおう……」
**********
帰宅して、いつの間にか寝ていたのだろうか、気付いたら翌朝になっていた。しかも普段の寝床とは感触が違う。リビングのソファで寝落ちしていた。
昨日の悪天候とはうってかわって、カナタの心に反比例しているかのように、酷いぐらい晴れている。
「good morning、Mr.カナタ」
ソファの背もたれ部分から、リゲルの顔が覗いていた。
「わっ! おはようリゲル……」
「breakfast が用意済みだぜ。まあ、近くのmini shopでbuyしたsimpleなベントーだがな」
「ありがとう。……でも今はいいや。とても食べる気にはなれない」
「まあ、そうだな。そうだよな。OK。でもとりあえずこっちの、dining chairにsit downだ」
促されるまま、カナタはダイニングテーブルについた。そしてリゲルも、反対側に座った。
「to put it bluntly、単刀直入に言うとzombieはMs.スピカにmanipulatedだった」
「どういうこと? 操られてたって……」
「herのUnique magicは『錬金』だ。metalをmakeしたり、shapeをfreelyにremakeすることもできる」
「その形をいじる力で、ゾンビたちを動かしてたってこと?」
「that's right、察しがいいな」
ここで、リゲルは一本の焼け焦げたボロボロの釘、先っぽが不気味にうねって、延びて、変形している釘を取り出した。
「これは?」
「Ms.スピカがmakeしてuseしたmetal pieceだ。これが、おそらく全部のzombieにembedされていた。parasites、寄生虫いや、skeletonみたいなroleを果たしていたんだろう」
「――――じゃあゾンビは? それが内骨格なら、ガワの死体はどこから? 学校のある場所に、昔お墓があったとかは無いはずだし……」
「あれは……聞いてsurprisedするなよ。あれは、あのcadaverたちは……一六〇年前にはもう、Ms.スピカにmodificationされていた」
「一六〇年前……慶応元年か。そんな昔にはもうゾンビを仕込んでたのか……」
「そのケーオーってのはI don't knowだな。ともかく、俺たちはそれをstopしなきゃならない。これは時間科学のone typeに当てはめて考えると、Ms.スピカがzombieを用意したのは、現代のtimelineで考えるとyesterdayよりbeforeなのはobvious、明白というわけ。その時にherをkillすれば、あのtragedyは発生しない」
「えっ……タイムスリップしてスピカをまた倒す、ってこと?」
「yes。そのためのmachineを、last nightのうちに取ってきておいた」
「――――さっすが天才科学者ぁ~」
「さあ、Let's preparation。準備でき次第出発だ」
二人は席を立ち、幕末への時間旅行へ出発するための準備を始めた。
**********
カナタより一足先に、というか既に準備を終えていたリゲルは、自動車型タイムマシンのボンネットを開け、最終調整を行っていた。
「――――――――よし……っと。adjustもfinishだぜ」
ガチャリと、外門の開く音。父の大きめなリュックサックを、重そうに背負ったカナタが出てきた。
「準備、できたよ。行こ」
「だな」
「「ちょっと待て」」
昨日ぶりに聞いた声と、もう一つ。マコトとレイカも、なぜか準備万端でそこにいた。
「私たちも連れていってもらおうか」
「ahh……OK。詰めれば can rideだ。maybe」
「で、釘原さんたちは俺たちが過去に行くこと、なんで知ってたんですか?」
そう聞かれて、マコトは言いにくそうに答える。
「実は一応、監視のために盗聴機と隠しカメラを設置させてもらっていて、それでな……」
「そういうことだったんですね。で、続き続きの質問にはなるんですけど……なんなんですかその刀みたいなのは!!」
カナタはマコトの肩から斜めに飛び出している、刀の"柄"のようなものを指差して聞いた。
「これか? 刀だ。妖刀と言えば分かりやすいかな」
「こいつの家に先祖代々伝わるものらしい。私も一度、使っているところを見たことがあるが、なんとも不気味なやつだ」
マコトに代わり、レイカが自分の視点からの見解を含めて説明した。
「ほら、seatのprepareがcompleteだ。さあ、let's ride……!」
JNIAの二人は後部座席に、カナタは助手席に、そしてリゲルは運転席に乗り込んだ。
エンジンをかけ、マニュアル車にある形のシフトレバーを大胆に操作すれば、ブゥーンと、大きな排気音がガレージに響く。
「are you ready?」
「うん」
カナタは深く頷いた。
「Let's go、一六〇年前!!」
その瞬間、タイムマシンは初速からありえないほどの速さで動き出した。時速一〇〇キロメートルは優に超えていると思う。
カナタ、マコト、レイカの三人は、慣性の法則によってシートと密着せざるを得なくなった。しかし運転手のリゲルだけは、その細身な体格からは想像もできないような握力で、前のめりになってハンドルを握っていた。
このままでは向かいの家の塀にぶつかる……! と、思ったその時、タイムマシンの周囲が木々に囲まれた森の中の風景に変化していた。
「これは成功……なのか?」
真っ先に降車したレイカが、周りを見回しながら言った。
「maybe成功……」
その時、彼らの背後から大きな、獣が喉を鳴らすような音が聞こえてきた。
「――――まさかとは思うけどぉ……」
カナタは全身に冷や汗をかいたまま、恐る恐る振り返る。
――――あ、終わった。
音の正体は、とても大きなティラノサウルスだった。次の瞬間には、腹を空かせたティラノサウルスの咆哮が、森中に響き渡った。
「Oops! 失敗sorry」




