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虹の彼方と異世界クロスオーバー 〜アニメの勇者+αと共同生活はじめました〜  作者: 高橋聖
第四章 体育祭編

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4-10 体育祭昼休憩の部

 七王子西中学校の体育祭は、昼休憩を迎えた。


 人の波に乗ってテントから校舎に戻る道中のカナタは、聞き馴染みのある少女の声に足を止めた。


「やっ」


「マキナ。どしたの? ここまでわざわざ」


「忘れ物を届けにきたの。はい」


 彼女が差し出したのは、白色の包みに入った弁当だった。


「あ、俺の弁当! 忘れてたのか~。ありがとう。そういや、マキナたちはお昼どうするの?」


「近くにある美味しい『チュウカ』? のお店に行く予定」


 そこに、もう先に行ったと思われていたエイタが現れた。


「おー、カナタ、姉ちゃん来てんじゃん」


「親戚のね、親戚の。弁当届けてくれたの」


「弁当忘れるってやってんな」


 そう笑いながら言って、続ける


「行こうぜ。あ、後でSNS諸々交換しません?」


「ナンパすな。それじゃ、後楽しんでね~」


 カナタはエイタを連れて、その場を後にした。

 昇降口までの道中で、彼が密かに背筋を震わせたのは、ここだけの秘密だ。


「春晴さん?」


 マキナの背後から、今度は彼女にとって耳に覚えのある声がした。「ん?」と振り替えれば、そこには柳葉高校でのクラスメイトの、小鳥遊キイチがいた。


「キイチくん! どうしてここに?」


「俺は妹を見に。そっちは?」


「私も……親戚の子を見に」


 この関係性をどう言っていいのか、マキナは未だによく分からない。だが、上手く言い繋げた。


「そうなんだ。じゃあ、また学校で」


「うん。またね」


 二人は軽く手を振り合って別れた。



 **********



 昇降口で上履きに履き替え、反対の校舎にある教室に戻る途中で、カナタはセルアと出会った。


「――――なにしてんの?」


 セルアはちょうど、白の軽バンからパンの入ったコンテナを降ろしているところだった。


「カナタ! 会えると思ったよ。これは秦辺商店からの差し入れ。『アンパン』なるものだよ」


「マジ!? えー嬉しい」


 その時、廊下の突き当たりからカナタを呼ぶ鋭い声がした。


「はいはーい?」


「はいが多いです。返事は『はい』! それに伸ばさない」


 その声は、冬雪チハヤのクラスの担任で、彼女曰く「鬼教師」の鬼怒川イサオだった。


 セルアと別れの挨拶を適当に交わして、カナタはイサオのもとに駆け寄る。


「はい。で、どうしました?」


「この段ボールを一つ、あなたのクラスに持っていってください」


「分かりました」


 持てる力を全て振り絞って段ボールを持ち上げる。


「中身、何なんですか?」


「よく見なさい。箱に印刷してあるはずですが?」


「あほんとだ。――――スポーツドリンク……? マジすか、あざす!」


「お礼なら、お金を出して買ってくださったPTAの皆様に言いなさい。午後からも、頑張ってくださいね」


「はい!」


 疲れた体にスポーツドリンクがピッタリなことは、ここ半年のいろんな出来事のお陰で、既によく知っている。嬉しくてスキップでもしたいが、今のこの状態と、カナタの体力では到底不可能だ。

 現に、三階の教室に帰った頃には、競技を三つでも連続して終えたのかというほど疲弊していた。


「お! スポドリじゃん! サンキューカナタ」


「あ゛と゛て゛あ゛ん゛ぱ゛ん゛も゛く゛る゛よ゛~……」


 膝立ちで、教卓の隣に置かれた空き机に突っ伏しながら言った。


「誰だよカナタにこれ一人で持たせたやつ。ゾンビみたいになってら」


「キヌガワセンセイ……」


「鬼怒川か。あいつならやるな」


『やる』


 何人かの声が揃った。


 その裏で、ビスケは箱を開封して、中のスポーツドリンクを教卓に並べていた。


「三八、三九、四〇、と。今日って何人?」


「今日来ているのは三九人だ。釜井が休んだからな」


 イオリが答えた。


「なるほど。先生の分はたぶん度外視だから……スポドリ二本いる人立って! じゃんけんするぞー!!」


 その報せに心を踊らせた八人余りが、弁当を食べ進める手や友達との会話を止めて、その場に立ち上がった。


「俺も参加……」


「俺も俺も!」


 弱っているカナタと、それとは対照的に元気なエイタ。二人も手を上げた。


「よし、いくぞー。最初はグー! じゃんけんポン!」


 しかし、一度では勝負はつかなかった。ちなみに、この時点でカナタは敗退している。


「残念。切り替えて弁当食べよ……」


 続く二回戦。ここでも決まらなかったが、二人が勝ち残って三回戦に進んだ。


 三回戦。あいこ二回を経て、見事スポーツドリンクの余りを勝ち取ったのは、藤木エイタだった。


「おめでとエイタ」


 負けて早々弁当を食べ始めていたカナタが、自らの席に戻ってきたエイタを祝った。


「どーも。にしても美味しそうだな、カナタの弁当。もしかして、姉ちゃんが作ったのか?」


「残念、母さんでした」

 ――――まあ、セルアも作ってたけど。昨日の夜のうちに。


「そうなん」


 そう言いながらエイタも弁当の蓋を開けた。




 そして、もうじき食べ終わるという頃に、なにやら隣の四組からやけに騒がしい声がしてきた。


「なんだろ」


 最後の一口を食べきり、弁当箱を光の速さで片付ける。そしてその声の方へ足を運んだ。


「――――んー?」


 後ろのドアから顔をのぞかせると、そこでは黄団団長の(きの)と緑団の団長が腕相撲をしていた。周りはギャラリーでごった返している。


 「番外マッチ、レディーファイッ!!」と二年の男子生徒が叫ぶと、二人は同時に手のひらに力を込めた。

 両者一歩も引けを取らない勝負。押しては押し戻されのぶつかり合い。しかし、紀がじわじわ相手を追い詰めていく。


「よし、行ける行ける」


「なにやってんだ? あー、腕相撲か」


 エイタも合流した。


「ちょっと、通してほしいんだけど……って、カナタ」


 そこに、スバルも現れた。


「あ! 荒巻スバル!」


「君は、カナタの友達のエイタくんだよね。ほら、夏休みに遊園地で会ったでしょ」


「だな。まあ、ここでまた会ったのも何かの縁だし、これからも仲良くしようぜ」


「そうだね」


 エイタとスバルの二人の仲が一層深まったその時、腕相撲の方では形勢逆転が起こってしまった。

 相手の緑団団長は手の力をより一層強め、紀の手を押し戻し始めたのだ。

 それに対抗して、紀も力を強める。


 最後の力を振り絞り、緑団団長は、紀の手を机に叩きつけた。


 緑団のメンバーであろう生徒からは歓声が、黄団のメンバーであろう生徒からは残念がる声が上がり、他の団のメンバーは普通に帰っていった。


「あぁ、惜しかった」

 ――――午後、幸先悪いなぁ。


「じゃあ、僕はこれで」


 スバルは教室から出ていく人に逆行して、教室内の自分の席に戻っていった。


「俺らも行こうぜ」


「そだね」



 **********



 同じ頃、一階の職員室。二人の教師が会話をしていた。


「あ、そういえば甘川先生、天気予報見ました? 午後から雨予報出てるみたいですよ」


 甘川と呼ばれた教師は、カナタたち二年生の学年主任を務める教師でもある。


「えぇ!? そうなんですか。何事もなく、終わってほしいものです」


 そう言って彼は、窓の曇りガラス越しに空を見上げた。

 空はまだ、青くて明るかった。

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