4-5 ライバル登場!異世界からの処刑人
二学期が始まってから一週間と少しが経った九月のある日、七王子西中学校二年三組には、転校生がやってきた。
「では、自己紹介をしてください」
担任の曽根崎にそう言われた、ミントグリーン色の髪をした転校生は、一歩前へ動く。
「ハナイチタカトです。刃に、那覇の那に、伊藤の伊に、地面の地で、刃那伊地です」
淡々と、まるで警官や軍人のようにキリとした口調で自己紹介を終え、曽根崎が指示した席へと移動した。
その隣の席に座っていたのは、カナタだった。
「マジか。俺、春晴カナタ。よろしく。珍しい髪色だね」
「まあな。よろしく頼む」
カナタが差し出した右手を、タカトは取った。だが、タカトの握る力は次第に強くなっていき、それにカナタも思わず顔を歪めた。
「痛たたたた、ストップ、刃那伊地くん握るのストップ……」
「ん?」と、なに食わぬ微笑み顔でカナタと目を合わせるタカト。この瞬間さえも、カナタの手は力強く握られている。
――――やべこれ先生に助け求めた方がいいか……
そう考えた途端、タカト側の力は一気に弱まり、囚われの手を脱出させることに成功した。
「ひぃ~ 痛てて……」
――――なんか変わった奴だなぁ
「春晴カナタ」
タカトに呼ばれ、少し不満そうな顔でカナタは向き直る。
「この後、時間はあるか?」
「昼休憩にならあるけど、どした?」
「折り入って話がある。なるべく人目につかない……校舎の裏手に来い」
「――――分かった」
――――何? 決闘?
**********
昼休みの校舎裏、もとい駐輪場前。約束通りに行くと、既にタカトが仁王立ちで待っていた。
「来たか」
「で、何。話って」
「まずは改めて名乗らせてもらおう。我の名はTK-001。世界0833、機械人間が支配する世界の第505世代目において一番最初に生まれた者だ」
「――――はっ?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔で立ち尽くすカナタ。
世界0833? 機械人間? 何のことかさっぱりわからない。その事を自分にだけ明かした理由さえもわからない。一体何を言っているのか、というのが、今現在彼の脳内を駆け巡った思考だ。
「いきなりどうしたの? 何かのゲーム?」
「ゲームなどではない。これは全世界を揺るがす大事件だ。それを受けて、我はお前のところに来たのだ。処刑人としてな!」
タカト、いや、TK-001は謎の剣を取り出し、構えた。
「なに、それ……」
「見てわからぬか。こういうこと……だ!」
TK-001は、柄と鍔の境にある、円形の部分に、魔王軍の持つものとはちがう、とても綺麗に輝く『鍵』を差し込んだ。
鍵穴が赤く光ったかと思えば、背後に不気味な両開きの扉が出現。隙間からは瘴気が漏れ出ており、辺りは不気味で嫌~な雰囲気に包まれた。
「変……身……!」
『鍵』は回された。その動きに連動するかのように扉が勢い良く開く。噴出した瘴気がTK-001の身体を包み込んだ。
「何何何……」
それも五秒が過ぎる頃には晴れ、TK-001は、CODE:センチネルに『変身』を完了した。
「嘘でしょ。君も変身するんだ……」
「驚いていられるのも今のうちだ。貴様には死んでもらう。全世界の、秩序のためにな!!」
剣『コード・ブレイド』を両手で構え、こちらに斬りかかって来るセンチネル。『X』を描くように振りかざされる刃を、ギリギリのところで回避する。
「ちょっと、やめてくれる!? ここ学校だから、やるなら別のところで」
「知るか。私にとってそれは重要ではない」
「俺が大問題なんだけど……ここじゃ変身できないし……あーもう! ついてこーい!!」
その瞬間、カナタは背を向けてフェンスをよじ登り、学校の敷地から脱出した。
――――計算通り!
センチネルも学校の敷地を出て、ひた走るカナタを追いかけ始めた。
「こっち!」
撒いてしまわない程度に、家と家の間の曲がり角を活用して、センチネルを誘い込む。
そして、彼らは住宅街の中にある小規模な公園にたどり着いた。
「ここならいいよ」
藍色のオーブがついた豪華絢爛な首飾りを装着し、チェンジガンをオーブにかざして『オーブリンク』。スライドを三回引いて撃てば、カナタはゴニンコスモに変身した。
「今日はこれもいっちゃおう! バトルフィルム『シャーク』、セット!」
文字通り映画のフィルムの形をしたアイテムを、チェンジガンの撃鉄部分にセットして、手でカララララと回す。
『アーマード・シャーク』
すると、コスモの右腕にホホジロザメを象ったサメアーマーが装備された。
「実戦初使用! さあ、かかってこい!」
その刹那、センチネルは地面を蹴ってコスモに斬りかかる。が、コスモは右に逸れて攻撃を避け、ほんの一瞬の隙を見せたセンチネルの左の肩から腕にかけてに、サメの牙パンチを五発叩き込んだ。
「ぐっ……」
センチネルは攻撃を受けた部分に目を向けると、変身で纏った武装が、一部破壊されていることに気付いた。
「ええい。この際、一撃で沈めてしまおうじゃないか」
センチネルは柄と鍔の間の鍵穴に差し込まれている『鍵』を三回ひねった。
『Punishment:S.S.Slash 』
剣がそう呼んだと同時に、センチネルは横一文字に剣を振るった。斬撃は飛び、コスモに命中。しかし、右腕のサメアーマーがダメージのほとんどを肩代わりした。おかげで、コスモは無傷だ。
「やったな~!」
コスモはスライドを一〇回連続で引いた。すなわち『チョウ・チョウ・チョウ・ヒッサツ』の合図。
トリガーを引くと同時に銃口から放たれた光の球は、完璧な精度でセンチネルに命中。彼はすぐさま爆炎に包まれた。
「ふぅ。一件落着……?」
変身を解除し、コスモがカナタに戻ったその時だ。遠くから学校のチャイムが風に乗って聞こえてきた。
「やっべ昼休み終わる」
公園の真ん中で燃え盛っているセンチネルを放置したまま、カナタは学校に大急ぎで走って戻った。
**********
カナタが教室に帰ってきたのは、授業開始後一分が経ったときだった。
「遅れてすみません!」
「次からは気をつけるんだぞ。分かったら席に着けー」
「はーい」と気の抜けた返事をし、自分の席に戻る。
「よう」
まさかの事が起こった。今さっき倒したはずのセンチネル、もとい刃那伊地タカトが席に座っていたのだ。もっとも、顔に怪我を負ってはいた。
「なんでいるの……」
「貴様の技が悪くてな、命拾いだ。それに、今は学生の身分。授業に出ねば怪しまれるだろう」
悔しそうに口元を歪めたカナタ。それを見て嘲笑を浮かべるタカト。そんな彼らを気にも留めず、曽根崎は話を進める。
「では、この時間は体育祭の準備の続きを行いたいとおもいます」
次話につづく!




