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虹の彼方と異世界クロスオーバー 〜アニメの勇者+αと共同生活はじめました〜  作者: 高橋聖
第七章 クリスマス編

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7-19 プレゼント

 電話から五分と少しで、不動台高校の前に九台の中型トラックが集合した。


「vestigatio/トラッキング これで元あった場所が分かるはずです」


「ほんとだ、見える……! まるで魔法みたいだ」


 集まったドライバーの一人が、覗き込んで言った。


 ――――本当の魔法なんだけどね。


「よし、中学校の通学区域でドライバーを分ける! 西中エリアは瑠堂、南中エリアは打師夜、中央中エリアは壇沢、北中エリアは普羅澤、東中エリアはヴィエット、三ツ橋中エリアは米井、幸百中エリアは弓皮、立近中エリアは奴為、善蔵中エリアは鰤津だ、いいか?」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


「俺は春晴さんと釘原さんと一緒に、春晴さんの家で司令塔役をやらせてもらう! みんな、頼んだぞ」


「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」


 バケツリレーの要領で、エリアごとに積み込みを終えると、カナタたちも急いで荷台に上がる。打師夜のところにセルア、壇沢のところにゴルダン、普羅澤のところにラーシャ、ヴィエットのところにタカト、米井のところにリゲル、


「チハヤも手伝ってくれる、よね?」


 カナタが聞いた。


「もちろん。やるに決まってるでしょ」


 セルアと同じく打師夜のところに乗り込もうとしたが、人数合わせの関係で引っ張り降ろされ、弓皮のところに乗せられた。やっぱり不満そうだ。

 さて、奴為のところにレイカ、鰤津のところにマキナ、そして瑠堂のところにカナタが乗って、プレゼントを配って回る布陣は完成した。


 荷台の扉が閉じられようとしていたその時、


『マってください』


「二コーラー、どした?」


『どろーんもーどのワタシを、タクサンフクセイしてみました。イチダイにつきジュッキあります』


「マジ? 助かるよ二コーラー!」


『おヤクにタててなによりです』


 というわけで、二コーラードローンも配備されることになった。


 ドライバー九人に、魔人ジャーズと非メンバーが九人、司令塔三人、そして配達用ドローン九〇機で、寝ている間に奪われたプレゼントを子供たちに返すべく、市内を走り回る。


『タイムリミットは……これから七時間後の、一二月二五日午前七時。だがなるべく早めに頼む』


 もう既に不動台の坂を、列を成して下るトラックの中で、彼らはバラバラに返事をした。




 どのくらい走ったか、荷台からでは分からないが、何となく他のトラックたちとは分かれた気がする。サンタの代わりとしての仕事が始まるのももうすぐか、なんて考えていたそんな時、マキナから電話がかかってきた。


「もしもし? どしたの?」


 彼女の声は電話の向こうで口ごもっていた。


「もしもーし?」


『あ、カナタ……あのさ! えっと……その……』


 テンパっているのか、言いづらいことがあるのか。


「ゆっくりでいいよ」


『うん…………ねえ、カナタってやっぱり……私のこと、好き……なの?』


「……へっ?」


 いきなりそれを聞かれても、なんて返せば良いか分からない。こっちも困惑していたら、


『だって、今朝・・・』


 彼女は、今日一日の胸中を、カナタに打ち明けた。これまで異性から恋愛感情を向けられたこともない、という事実も。


『・・・だから、今、ここで、聞かせて?』


「――――分かった。俺は・・・」


 その時、電話の向こうで扉が開く音がした。マキナの方は最初のポイントに着いたのだろう。


『あっごめん。私の方、着いちゃったから、後で聞かせて』


「うん……分かった」


 電話を切った直後、カナタの方もポイントに到着した。


 運転手の瑠堂によって、荷台のドアは開けられた。この場所は駅前の繁華街ということもあり、オートロック付きのマンションがほとんどだ。チャイムを鳴らして入るわけにもいかないので、二コーラードローンによってベランダに配達される。


「じゃんじゃん行って〜」


 一個配達したら、戻ってまた一個取ってまた配達。その繰り返しだ。




 ポイント近くの配達が終われば、次のポイントに移動する。今度の場所は、オートロックの無いマンションやアパートもある地域。そこのところは、カナタや瑠堂も手に持って配達を手伝う。それは他の区分けでもそうだった。




 配達は続くよ最後まで。途中コンビニチキンを食べて休憩を挟み、また次のポイントだ。

 住宅街は、あの長い階段が無いぶん、楽だった。配達も比較的サクサク終わる。ただ、不動台のように坂が多くあるのはキツいところだった。




 プレゼントも残すところあとわずか。最後のポイントに向かおうとしていたそんな時だった。


「ウソだろ!」


 瑠堂は急ハンドルを切る。逆走車だった。一瞬だったが、酒に酔っているような顔の高齢者が、ライトに照らされて見えた。トラックもそれなりのスピードが出ていたこともあり、ブレーキは間に合わず、勢いを落とせぬまま電柱に正面衝突してしまった。


「大丈夫ですか?」


 変身解除して、カナタは運転席のドアを開けた。コスモの力で、荷台のドアを破壊して出てきたのだろう。


「ああ……すまない……」


 二人はトラックから降りて、顔を見合わせた。


「これじゃもう、配達は……」


 瑠堂は大きなため息をつき、顔を手で塞いだ。

 諦めの空気が漂う中、カナタは立ち上がる。


『変身!』


 コスモのパワー用いれば、たった十一個だけなら、全て持って運べる。


「すごい……ゴニンジャー、本物だ……」


 さすがは国民的特撮ヒーローというところだろうか。今を生きる元男児たちは、色違いでも分かるものだ。


「瑠堂さんは一応ここに居てください!」


 それだけ言い残して、コスモは駆け出した。


 ニコーラードローンも追いかけてきた。


『オテツダイシマス』


「じゃあお願い!」


 最後の一個はカナタ自身が届ける。住所からして、届け先の家は知っているところかもしれない。毎朝カナタが自転車に乗って通りかかるタイミングで、母親と一緒に玄関から出てくるカエルのリュックサックが特徴的な幼稚園児の家。

 今走っている場所が通学路上だったこともあり、カナタは裏道に曲がる。暗いが、ここがかなりのショートカットポイントなのだ。


 夜明けが近い。空が徐々に薄青がかっきている。スマホで時刻を見てみると、もう六時五〇分を超えていた。


「やっべぇ」


 コスモは走るスピードを上げる。雪道で滑りやすいことも考慮し、速くも確実な一歩一歩を心掛けて。


 裏道を抜けた。届け先の家は目の前だ。コスモは走る。玄関のドアに突っ込む前に、ブレーキをかけた。そして、プレゼントを置く。誰かがドアを開けて一番に見つけられるように。


 その時、右斜め上から視線を感じた。この家に住んでいる、上述の男の子だった。


「あ……」


 見られてしまった。しかもゴニンコスモのスーツ姿を。

 だが、男の子は何も言わず、優しく手だけ振ってくれた。コスモもそれに応えて振り返す。

 少しばかりのサービス心はあった。カナタは、変身ポーズと名乗りポーズをして見せた。すると男の子はキャッキャッと笑った。それを見届けて、「じゃ!」と手を挙げて、コスモは去ることにした。



 **********



「では、私はこれで」


「はい。今回はありがとうございました」


 春晴家の前まで送り届けてもらって、瑠堂とはそこで別れた。


 だが、家に入っても、誰もいなかった。


「なんで?」


 それにしても、今日はとてつもない快晴だ。一昨日から降っていた雪は止んだが、そいつらが積もっているおかげで、まるでこの世ではないかのような風景。


「……ぁ」


 もしかして、と思って、カナタはもう一度靴を履いた。

 雪道の坂をひた走る。


 やっぱりだ。この不動台の一番高い場所、展望台にみんないた。


「遅い~」


 チハヤは笑う。


「プレゼント、ちゃんと全部届けられたかい?」


 セルアの問いには「うん」と答えて、


「……あの時の返事、聞かせてよ」


 みんなが見ている目の前で詰め寄り、


「おおマジか」


 マキナ『が』カナタを壁ドンした。


「ひゃいっ」


 こんな経験、誰かを好きになってからするなんて思ってもみなかった。


「……さっ」


「う、うん……俺は……マキナのことが……す……いや、超大好き」


 二人のこの赤さは寒さのせいか、いや、違う。


「――――そっか。ありがとう。私のことを、好きになってくれて」


 彼女はカナタを解放して、大きく伸びをした。


「ん~。これで、一個すっきりしたわ」


 そのまま手すりにもたれかかって、


「ねぇ。もう少しこの景色見たらさ、朝ごはん食べに行かない?」


「いい案ね」


「よっしゃ、じゃあ行くか。釘原さんたちもどうです?」


「いえ。我々は事後処理もありますので」


 そんな会話たちを横目に、カナタも手すりに寄り掛かった。


 朝日に照らされた銀世界の街が、この上なく、幻想的に見えた。

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