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虹の彼方と異世界クロスオーバー 〜アニメの勇者+αと共同生活はじめました〜  作者: 高橋聖
第七章 クリスマス編

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7-16 聖夜決戦③

 マルチタスクが要求されている。


 これまで相対してきたデーモン怪人の固有魔術を対処しつつ、サンタクロースデーモンに、攻撃を与えなければならない。相手が披露してこなかったものもあるが、固有魔術に対してこれと言った対策も見出さずにゴリ押しで倒していた弊害が、今出てしまった。


 ――――一つ一つは単純なのに、それらがかけれていくことでどんどん複雑になってる……


 そもそも、近づけなければ意味がないのだ。攻撃は最大の防御なりとはまさにこのこと。全自動防御が使えるセルアを前衛にして、ムカデ競争の要領でゴリ押せばたどり着けるかもしれない。だが、それはそれで彼の負担が重すぎる。既に一回使っているのだ。基本的に一度の戦闘で一回使用を想定しているであろうため、これはナシ。いつしか聞いた魔力の使いすぎのデメリットが、カナタの頭の中で反響する。

 いや、自分にあるじゃないか。勝利のためにここは多少、危険な橋を渡るべきだ。


 と、そこに、セルアが舞い戻ってきた。全盛の時と比べて少しばかり勢いは落ちているものの、やはり圧倒的だ。その圧倒的な剣捌きと、素早く柔軟な体の使い方で、すぐさまサンタクロースの目の前にたどり着いてしまった。


「ここで倒す」


 有無を言わさず首をはねた。黒くドロっと粘性のある血が飛ぶ。だが、本体の背中から生える無数の腕が、空に上がった頭を掴み、付け直した。


「そうくるか……!」


 セルアは再び距離を取り、コスモと並び立つ。


「やっぱり、勝つには何か条件があるのかな」


 コスモはいつの間にか、ガード+にフォームチェンジしていた。


「直近のベースボールデーモンや、カナタたちが会ったって言うボードゲームデーモンからして、そうだろうね」


「サンタクロースに勝つ条件……」


 奴との意思疎通は、現状取れそうにない。てか口が無い。何かどこかにヒントがありそうだが、サンタクロース要素と言えば見た目だけで、それも現状無いことになる。


「子どもの幸せとか考えてなさそうな見た目と所業だしなぁ…………てか、タカトは?」


「確かに、いつの間にか居ねぇぜ。セルアと入れ違ったみてぇによ」


 その瞬間だった。サンタクロースが、縦に真っ二つに割れた。


「……オイオイ」


「ウソでしょ……なんで?」


 分断されたサンタクロースの向こうに、煙とともにマゼンタのネオンに光る、忍者風のスーツが見えた。


「……え? タカトー?」


「ああ。『ニンジャ・サイバーNEO』だ」


 そういえば、タカトは先ほどリゲルに新しい『鍵』らしきを貰っていた。それを用いた結果が、この新形態なのだ。


「すげー」


 だが、今回の騙し討ちも、効果はさほど無かった。それどころか逆効果だった。

 「やったか?!」という空気の目の前で、斬られたそれぞれの半身から、新しく半身が生えてきた。事実上の分身だ。


「驚き、驚き、驚き、やってしまった」


「タカトの喋り方が、急にAIみたいに……!」


 体が二倍になったということは、もちろん放たれる固有魔術群も二倍になるということだ。

 回避したり、防御したり、魔術で相殺したりする余裕も無くなってくる。次から次へと攻撃が降り注ぐ。お陰で道路もボコボコ、電信柱がいくつも倒れたせいで電線も垂れ、この通りの一角だけ大震災が来たかのようだった。


 そこにとうとう、外から入り続ける戦闘音と揺れにしびれを切らした近所のおやじが、金属バット片手に飛び出してきた。


「おい! さっきからなんの騒ぎ……だ……」


 おやじは絶句した。目の前で、まるで特撮ドラマの撮影が行われているような、いや特撮ドラマよりバイオレンスで、破壊されまくった状況になっている。


「すぐに家の中に逃げて!」


 マキナが叫んだ瞬間、サンタクロースの手の一つが、彼の首を掴んだ。持ち上げ、力強く締める。

 それに気づいたコスモは誰より早く飛び出した。ガード+のまま走り出したのは馬鹿だったかもしれないが、最近レベルアップさせていたトレーニングと慣れが功を奏してか、以前より軽々動けていた。そんな彼が力強いパンチをサンタクロースの腕に叩き込んだら、しゅるしゅると帰っていった。


「大丈夫ですか?」


「あ……ありがとう」


「危ないので家の中で大人しくしといてください」


「わ、わかった!」


 おやじは大慌てで家の中に引っ込んだ。


「ただの近所のおじさんに手を出すなんて許せない! タカト! みんな! これで決めるよ!」


「承知、した」


 センチネルはニンジャ・サイバーNEOのまま『鍵』を三回捻る。コスモはスライドを一〇回引く。マキナは地面に手を付き、超高火力魔術発動のための魔法陣を展開。セルアとゴルダンは剣と拳を構え、ラーシャはチハヤを保護するための一時的なバリアを展開した。


『ショット・フィニッシュ・ショット/パワー/フィーバー!!!』

『Punishment:S.S.Slash:NINJA』

「Radius clarus/ブライトビーム !」

「ハァーッ!!」

「古式武闘術十一番:四八超打撃ィ!!!」


 ほぼほぼマキナの使った魔術のせいではあるが、この瞬間、サンタクロースは技のぶつかり合いによって生まれた凄まじいエネルギーに包まれ、激しく光を上げた。まるで金属同士が擦り合わさったような不快な断末魔が周囲に響く。


 光が収束した頃には、そこには見る影もないサンタクロース、いや、真っ黒焦げシワッシワのヒトガタがあった。


「流石にもういい……よね?」


「そうだと願いたいね」


「もう無理ぃ……」


 クリスマスの決戦も、これにてめでたしめでたし。




 のはずだった。新任現場監督のスピカ・ターヴォさえ許してくれれば……!


「これで終わりか? サンタクロースデーモン」


 スピカは以前よりさらに改造を施したネイルガンを、すぐ近くの家の屋根から向ける。頭部に狙いを定めて、トリガーを引いた。魔術が刻み込まれた釘だ。着弾と同時に、三段階目の強化魔術が発動する。


 彼らは言葉を失った。四方八方空の向こうからクリスマスプレゼントらしきものが飛んできて、大の字で息絶えているサンタクロースを中心に、渦を巻いて舞っている。


「おい……んだよ、コレ」


「理解、不能、だ」


 クリスマスプレゼントはどんどん数を増していく。そしてカナタたちの周りの空を傘、というより屋根のように埋め尽くしたところで、全てがサンタクロースに、瞬く間に吸収された。

 サンタクロースの体はどんどん肥大化していく。マッチョというよりかはデブだ。どんどん、どんどん、どんどん、膨れる、膨らむ、膨れ上がる。


『HO HO HO』


 立ちはだかるその様は、パッと見でウルトラマンより少し小さいか、というレベルだ。だが、横に大きい。まるで壁だ。こんな姿で暴れ回られようものならたまったものではない。


「マキナ、巨大化魔術!」


「悪いけど、魔術じゃあの大きさまでにはなれないわ!」


「マジかよ……」


「こういう時に巨大ロボットとかあればなぁ」


 その時、タカトは記憶の中から釣り上げる。もう一つ、あったと。


 ――――この『鍵』なら。


 橙発光の、リゲルから貰ったもう一つの『鍵』。タカトはブレイドに差そうとした。だが、弾かれた。


「何故……」


 とうとう為す術が無くなったか。そう思われた瞬間だった。


「in a bindのようだね」


 前にコスモがチハヤを引っ張ってやって来た方向から、彼の声が聞こえた。


「リゲル……」


「助けに来てくれたの?!」


「that's right。そのkeyのhow to useで迷っているとthinkしてね」


「よく、分かった、な」


 リゲルはタカトの左手から橙の『鍵』を取り上げて、


「this keyは、こうuseする」


 カナタの首からかけているチェンジャーの、オーブにかざしてオーブリンクした。


『うわっ! イマ、ナニをりんくしました??』


 ニコーラーの戸惑いを尻目に、リゲルはその時を待った。まだ実験が十分に行えていない代物、一か八かだ。だが、賭けは成功する。『鍵』は、巨大化した。


「何が……始まるんですか?」


 ずっとその場に座って見ていたチハヤは尋ねる、ずっと付き添いのラーシャに。


「私も知りません……」


 返ってきたのは高速で首を横に振る、という反応だけ。


「ms.マキナ、跳躍魔術レベルマックスだ」


「オ……オッケー。saltus praeclarus/超跳躍」


 マキナはリゲルの脚に魔術を、三重にかけた。念には念をの気持ちだ。


「……行ってくるぜ」


 彼はサンタクロースとは逆方向に、巨大化した鍵を抱えて走り出す。以前のカナタよりも弱い身体で、息を切らしながらスピードを上げる。そしてタイミングを見計らって、ホップ、ステップ、大ジャンプ!! 魔術のおかげで、とてつもない高さまで跳んだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「なんかよくわからないけど、いっけぇぇぇぇぇ!!!」


 サンタクロースの胸の下辺りまで達したか、というところで、リゲルは鍵を空に差した。異世界へ渡るための『扉』を創り出す要領で、だ。

 やはり、『扉』はメキメキと音を立てて現れた。いつもより何倍も何十倍も大きなサイズで。


「なんだ……これは……?」


 その時、リゲルからマキナに着信だ。


『クッションtypeの魔術をprepareしといてくれ』


「了解。Pulvinar aquae/水のクッション」


 魔術で創り出した次の瞬間、リゲルが『鍵』から手を放して、降ってきた。


「nice!」


「どういてしましてっ」


 それとほぼ同じタイミングだった。両開きで『扉』が開き、中から濃いスモークがキラキラと共に現れた。


「リ……リゲルぅ? ナニ造ったの? これ」


「まぁdon't take your eyes off it」


 大きく、地面が揺れる。もう一つ、地面が揺れる。また一つ、地面が揺れて、姿を現した。


 オメガタイタン、映画の中から発進だ。

【橙の鍵うんぬんしてる時のスピカ・ターヴォ現場監督】

何故、あの太っちょはなかなか動き始めないのだろう……




オメガタイタンが分からない人は『4-3 ニコーラー・マカリスターはボディがほしい』を読み返そう!

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