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演台の前に立った校長が講話を始めた。
テンプレに沿った話が延々と続く。
俺は退屈な校長の話を只々聞き続けた。
校長の話が終わると成績最優秀者、在校生代表の田中流理が壇上に上がった。
眼鏡姿の田中流理が目に入る。
容姿端麗、成績優秀、そしてこの学校内では品行方正な生徒として模範とされている女。二面性を持つ彼女に俺は不快な気持ちを募らせた──。
蝉の鳴き声が辺りに響く。
青く澄み切った空に白い雲。
体育館を出た生徒達が教室に向け行列をつくっている中、校舎と体育館を繋ぐ連絡通路から出た俺はしばらくの間、夏空を見上げた……。
「なんだあれ?」
教室に戻り、席に着こうとした時だった。クラスメイトが窓の外を指さした。
「……戦闘機じゃね?」
もう一人の生徒が放った言葉に合わせてクラスメイト達の目線が一斉に窓の外へ向けられた。
俺もつられるようにして窓辺に近づく。
確かに戦闘機のような飛翔体が空中を旋回しているように見えた。
乾いた音が微かに聴こえた瞬間、教室に据え付けられたスピーカーからサイレン音が鳴った。
「これは避難訓練ではありません。繰り返します。これは避難訓練ではありません……」
高さを抑え、落ち着かせた声で言葉は続けられた。
「全校生徒、全教職員はすばやく体育へ向かってください。また校舎の外には絶対に出ないでください。繰り返します。全校生徒、全教職員は……」
繰り返される放送を聞いたクラスメイト達は不安な表情を浮かべながらもゆっくりと教室の外へ歩き始めた。
外では何が起きているのか。
俺は窓から広がる景色を見つめた……。
胸中にざわつきを感じつつ自分もクラスメイト達の背を追った。
廊下は体育館を目指した生徒達で溢れた。
教室で怪訝な顔をしていたクラスメイト達は何事もなかったように会話をはずませている。
クラスメイト達に歩調を合わせ廊下を歩いていると突然、轟音が耳をつんざいた。
音源はさほど遠くはない……。
大音量の爆裂音を聞いた生徒達の表情は一変し瞬時にして凍りついた。
間髪入れずにもう一度、爆音が校舎内に響きわたる。
生徒達は恐怖の表情を浮かべたと同時に一斉に走りだした。
何が起きているかわからない未知の恐怖。
脳が一瞬にして危険を感知すると俺は悲鳴と怒声が行き交う廊下の中を駆け出した。
走りだした瞬間のことだった。視線の先で我先にと駆け抜けていく生徒の群れに一人の生徒が弾き飛ばされた。
徐々に弾かれた生徒との距離が縮まってゆく……。
セミロングの黒髪に整った顔立ち。赤い縁の眼鏡をかけた女生徒……。
俺は足を止めて女生徒を見据えた。
床に座り込んだ女生徒がゆっくりと顔を上げる。
見間違うことのない顔。
目に涙を溜めた田中流理が俺の顔を見つめていた……。




