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今日もこの洋館の前で足を止めていた。
いつ見てもこの感覚を覚える。
この洋館には俺の消えた記憶と何か関係があるのだろうか。
思い出せない記憶。
俺は何を忘れているのだろうか。
そして、あの力は一体……。
あの力の発現は今回が初めてじゃない。あの時もそうだった……。
考えを巡らせていると何かに肩を叩かれた。
「よっ! 大地。こんなとこで何してんだよ」
高校で出来たたった一人の親友がそこにはいた。
「いや、俺にもよくわからなくて……」
俺は朋也に苦笑いを返した。
「なんだよそれ!? あ、昨日の話聞いたぜ? 太田の奴、ぶっ飛ばしたんだってな。やるじゃん大地! あいつに喧嘩で勝っちゃうとかさ」
興奮冷めやらぬ。そんな表情が俺を見つめた。
「…………。太田に怪我をさせたから、今日、学校に親、呼ばれてるんだ……」
「なんだよそんな浮かない顔して! まっ、言いたい事はわかるけどな。大地の担任、頭固そうだからな……」
朋也は俺の胸を小突くと話を続けた。
「そんな心配するなって。大地は一人じゃないんだぜ? 俺もちゃんとあの頑固体育教師に言ってやる。大地は悪くないって。俺はいつだって大地の味方だぜ?」
朋也は握り拳から突き出した親指で自分の顔を指差した。
朋也の心強い笑顔を見た途端、涙が頬を伝った。
泣くなよといじわるな笑みを浮かべた朋也は俺をつついた──。
教室に入ると俺を見る目が昨日までと明らかに違っていた。
所々から耳打ちする声。
太田がいないことも相まって教室の雰囲気は様変わりしていた。
あんなものを見せられたら誰だって恐怖するに決まってるじゃないか……。
頭に浮かんだ不安感を無理やりに振り払うと俺は席に着いた。
しばらく窓の外を見遣っているとチャイムの音が教室内に響く。
チャイムを聞いた生徒達は次々と教室を出ていった。
無音が耳の中に響く。
俺はゆっくりと席から立ち上がった──。
湿気が満ちた蒸れた体育館。
喧騒とする人混み。
俺は整列した生徒達の中を進んでゆく。
列の先頭に立った雨田が俺を見つめていた。
怯えた目……。
俺が先頭に立つと雨田は避けるようにして後ろに下がっていく。
昨日までとは違った疎外感……。
俺は何も考えないように心掛け、舞台上の演台を見つめた。
チャイムが体育館の中に響きわたった。




