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車両は下り坂になった通路を降りると停車した。
窓から見えたのは数多く止められた無人の軍用車両とその奥に重々しい雰囲気を醸し出した。重厚な扉だった。
隣に座った兵士に車両から降りるよう促され、俺は車両の外に降り立った。
廃棄された米軍基地の下にこんな空間があったなんて……。
何のためにこんな所を造ったのだろうか……。
考えを巡らせても浮かんだ疑問に答えが出ることはなかった。
俺が周囲を見回していると車両から姿を現したミランダが奥にある重厚な扉の前で足を止め、扉横に取り付けられたカードスロットにカードを通した。
「虹彩認証ヲ開始シマス。瞳ヲ画面二、近ヅケテ下サイ」
機械音声が鳴った後にミランダはカードスロットの真上にあった小さな画面に顔を近づけた。
「虹彩認証開始……。識別確認。アメリカ陸軍所属ミランダ=ハサウェイ大佐ト識別確認。扉ヲ解錠シマシタ。御待チシテオリマシタ。ハサウェイ司令」
機械音声がそう述べた後に重厚な扉がゆっくりと開いてゆく。
そして車両から降りた隊員達が続々と扉の中に入っていく。その中には遠藤の姿と担架に乗せられた朋也の姿も見てとれた。
「少年! 何をしている。早く来ないかッ」
呆気にとられているとミランダの声が車庫内に響いた。
俺の身体は反射的に駆けだしていた。
「遅いぞ……。少年」
「す、すいません」
怒鳴られる思い俺は身構えたがいつまで経っても怒られる気配がない……。
俺は恐る恐るミランダの顔を窺った。
「そう警戒してくれるな。私は早々怒らんよ」
ミランダは若干、物憂い気な表情を浮かべた。
「…………」
俺は口から出かかった言葉をゆっくりと飲み込み、芽生えた気持ちをそっと心の奥にしまった……。
「聞きたいことは山程あるとは思うがまずは何も言わず私に付いてきてくれるか」
俺はミランダの言葉に頷き返し、歩き出したミランダの横を歩きはじめた。
扉の中に広がった空間は地上にある古びた基地とは違い最近造られたような真新しさを感じた。
しばらくの間、通路を歩いていると大きなスライドドアが目に入る。。
「ここだ……」
扉の前に立ち止まるとドアが開閉する。
ミランダが扉の中に入ると俺も彼女の背に続いた。
暗がりの室内に明かりが灯ってゆく。
「………………」
眼前に広がった景色に唖然とした俺の口から感嘆な溜息が漏れた。
正面に巨大なモニター。そしてディスプレイとキーボードが一体になったコンソールユニットが並べられ、まるでSF映画の世界に出てくるような近未来を感じさせる空間が目の前に現れた。
正面に屹立したミランダが振り返ると正面に取り付けられた巨大なモニター、そしてコンソールユニットの画面が起動し『EarthGuardOrganization』と英語表記の文字が浮かび上がった……。
腕組みをしたミランダが俺を見据えた。
「アースガードオーガニゼーション。それが私たちの組織の名だ……」
「地球を守る機関……」
「表面上はそういうことだ……。だが本意は別にある」
「それはどういう……」
「君だ、少年。この組織は各国の思惑や全ての脅威から少年を保護するために発足された。私達は少年と共にあり、私達はいかなる時も少年の意向に従う」
「……それは、俺があの化け物と戦わなくてもいいってことですか」
「そうだ! 少年がそう願うなら私達は君の意向に従い、少年を戦わせないように働きかける。だからそう不安がるな……」
ミランダは俺に歩みよると肩にそっと手を置いた。
頼もしく、そして優しい彼女の言葉に抱いていた不安が取り除かれようとした瞬間……、辺りの空気が一変する。
「まあ……、分かっているとは思うが、もし少年が倫理に反する間違いを起こそうとしたときは私自ら少年の性根を叩き直すがな……」
ミランダは不敵な笑みを浮かべ、力を込めて俺の肩を握った……。




