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彼女は俺の頭から手を退けた。
「自己紹介がまだだったな。私の名はミランダ。ミランダ・ハサウェイだ。今後少年とは長い付き合いになる」
長い付き合い……。
ミランダの言葉に疑問が湧いた。しかしそれよりも彼女が今の今まで発していた威圧感が急に消えた事の方が俺には不思議で仕方がなかった……。
「俺の名前は……」
「少年の名は綾乃から聞いているぞ」
俺の言葉はミランダの意表を突いた言葉にかき消された。
「えっ? 綾乃さんのことを知ってるんですか!?」
「ん? 知ってるも何も……」
ミランダは不意に押し黙った。
「……ミランダさん?」
「私から話せということか……」
独り言のような口調でそう言ったミランダは人差し指で頬を掻いた。
「すまんな少年、説明は後だ。今はここから退避することが先だ。わかるな」
俺はミランダの言葉に渋々頷き返した──。
この人は何を知っているのか……。そして彼女は綾乃とどういう関係にあるのだろうか……。
ミランダは俺が車両に乗り込んだことを見届けると先頭の車両に乗り込んだ──。
人、1人としていなくなった廃墟と化した街中を進み、やがて見えてきたのは辺り一面鉄格子で覆われた広大な敷地だった。
《ドライブモディフィケーション》に投影された目的地。
『unknown』
現在地を示すカーソルは今『unknown』の元へとたどり着いた。
六本木内にある何十年も前に封鎖された元米軍基地……。
予想通り《ドライブモディフケーション》が指していた場所はこの場所だった。
先頭の車両から兵士が数人降りてチェーンで厳重に固められた鉄格子の扉を開錠しているのが車窓から見える。
数分した後に錆びた鉄同士が擦れ合うような甲高い不快な音と共に鉄格子が開かれ、そしてゆっくりと車両は動き始めた──。
基地内に人の姿は見当たらない……。
長い間、人の往来がなかったことがひと目でわかる年月を感じさせる劣化した建造物の数々。
ここがあの人の言っていた、『何者にも犯されない領域』なんだろうか……。
まあ確かにこんな錆びれた軍事基地を利用しようなんて考える変わり者なんていないだろうが……。
敷地内の道路の真ん中で車両が停車する。
俺は不審に思い窓から前方に映る景色を伺った。
「えっ…………」
眼前に、広がった状況に俺は唖然としてしまう。
道路の一画が次第に迫り上がってゆく。そして迫り上がった道路の真下には地下へと続く通路が姿を現した。
そして何事もなかったように再び車両が動き始め、仄暗い未知の空間へと進み始めた──。




