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俺は建物を出て北に向けて歩き出した。
スマートデバイス──《ドライブモディフィケーション》から投影されたホログラフィックの地図に赤い三角形の印が目的地を指し示している。
俺が向かっているのは綾乃から指定された軍事基地だ。
綾乃に軍事基地と聞かされた俺は懸念を抱いた。そんな俺に綾乃は『ここは何者にも侵されない領域よ安心しなさい』と一言、口にした。
彼女はその意味深な言葉を発した後は何も教えてはくれなかった。
ただ無表情ながらもその言葉には彼女の誠意が籠っているように感じた。
だから今俺はその軍事基地を目指している。
ただ一つだけ疑問が残った。
何故、赤い三角のカーソルはここ六本木の中にあるのかということ。
六本木に米軍基地があったことは知っている。でもそれは何十年も前の話。
基地は米軍から日本へ返還が行われ、同時に封鎖が成された。基地のある付近一帯は今も尚立ち入りが禁止されている。ではこのカーソルが示している場所は一体なんなんだろうか。
俺は目的地に表記されたunknownという単語をまじまじと見つめた──。
閑散とした街中、道路を埋めた車の列。
照明の落ちた建物の数々。
この街だけ時間が止まっているかのような感覚を覚える。
同時に込み上げる悲しく虚しい気持ち。
視界に広がる情景が俺がこの街に取り残されている現実をまざまざと思い知らせる。
綾乃の口にした言葉が頭の中に蘇った。
『生きる意味なんて探せばいいわ。そのうちにすぐ見つかるわ』
見つかるのだろうか。
見つけられるのだろうか。
顔を上げた俺は透き通った青空に視線を移した──。
不図した瞬間、耳元で何かが音を立てた。
辺りを注意深く見渡した俺は腰から下げたホルダーから伸縮式のスティックを取り出した。
綾乃から護身用の拳銃を拒んだ為に代わりに持たされた武器。
グリップに付けられたボタンを押すと短かったサイズのスティックが目線の高さまで一気に引き伸ばされる。
俺は正面にスティックを構えた。
照明の落ちたコンビニ。
目の前に映ったコンビニが音の発生源のように思えた。
逃げた方がいいかもしれない。
でも、もしも取り残された人だったら……。
今までに何回も人が死んでいく光景を目にしてきた。
自分の命は惜しくない。だけど自分以外の命が消えるところはもう見たくない……。
俺は視線に映ったコンビニにゆっくりと近づいた。
人、一人が入れる隙間の開いた半開きの自動ドア。
俺はその隙間から店内に入った。
まず飛び込んできたのは腐敗臭だった。
この炎天下の中、冷蔵機器が停止すれば食品が腐るのは当然のこと。
俺は鼻を突く腐敗臭に耐えながら店内を見渡した。
「誰か! 誰かいるんですか!」
声を発した瞬間、物音が奥から聴こえた。
スティックのグリップを握った手に力が入る。恐る恐る商品棚から顔を出すと視界に映ったのは見知った二人の姿だった。




