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無線から響いた怒声は悲鳴に似た叫び声だった……。
急停止する車両。
次の瞬間、正面から大きな爆発音が聞こえ始めた。
助手席に座った三島が素早く窓を開けて身を乗り出す。
瞬時に頭を引っ込めた三島が運転席に顔を向けた。
「神! 後退しろ!」
必死の形相をした三島の横顔。
即座に車両は後ろに急加速をする。
フロントガラスの向こうに何かが見えた。目に見えたのは勢いよく向かってくる砲弾のようなものだった……。
次の瞬間、目の前で爆発が起きた。
爆発の衝撃が車内に伝わると車内に悲鳴がこだまする。視界が二転三転し俺は車内の内装に身体を叩きつけた。
やがて衝撃が止むと車両は停止する。荒れ果てた車内は逆転し、ぐったりとした生徒や先生達が横倒しになっていた。
車両の外からは悲鳴が鳴り響いていた。
三島が破損したドアを蹴り壊す。運転席側の扉も取り壊された。
「お前ら、早く出るんだ! 早く!」
取り壊された扉から生徒達が抜け出してゆく。生徒達が車外に出て行く中で倒れて動けないでいる先生が目に入った。
俺は先生を肩に担ぐと逆さになった車内を背を屈めて歩いた。
「その人は俺達にまかせろ。坊主は早く外に出るんだ」
三島が俺から先生を別つと自分の肩に担ぎ直した。
俺は三島に頷き返すと急いで車内を後にした。
車の外は漏れたであろう燃料の匂いが辺りに舞っていた。
視線の奥では車両が勢いよく燃えている。
悲鳴をあげた生徒達が車両の列に沿ってこちらに向かって走ってくる。その中には担任の体育教師の姿も見えた……。
燃えた車両の付近に何かがいた……。
黒い塊。
校庭で田中を殺したものとよく似た全身ヘドロに覆われた生物。
しかし何かが違った。
目を凝らしてよく見ると腕の形状が違うのがわかった。
円筒状になった両腕がこちらに向けられていた……。
逃げる生徒に向けてその両腕から何かが放たれた。
撃ち出された物体は必死に走る生徒達の中に着弾する。
大きな爆発が起こると逃げ惑う生徒と担任は瞬く間に消し飛んだ。
「…………」
視界に広がった光景に言葉がでない。
俺があんなことを願ったからなのか……。
蔑んだ奴らが次々と死んでいくこの光景を俺は望んだのか……。
嬉しくなんともない……。
只只、悲しかった、悔しかった。
俺は破滅を望んだ自分の腐った性根を悔いた。
「おいッ! 何してる! 早く逃げるぞ坊主ッ!」
先生を担いだ三島が俺の後ろに立っていた。
「馬鹿野郎! 泣くなら後にしろ! 神! この泣き虫坊主を連れてこいッ!」
俺の顔を見た三島が激しく怒鳴った時、何かが視界の隅に映った……。
その物体は横転した後ろの車両に衝突する。
次の瞬間、大きな爆発が巻き起こった……。
「ぐぁッ」
俺は数十メートル先の地面に身体を打ち付けた。
「……うッ」
全身に痛みが走る。
生きてるのか……。
身体の痛みがまだ自分が生きているということを感じさせる。
痛みに耐えながら俺は顔を上げた。
横転した車両はおかしな形に変形し巨大な炎を上げ燃えていた。
自衛隊の人たちは……。
周囲を見渡すと散り散りに倒れた三島達の姿が目に映った。
痛みに耐えながら全身に力を入れる。俺はゆっくりと身体を起こしていく……。
「くッ……」
ヘドロの化け物が目の届くすぐ側まで迫っていた。
「……坊主! 頭を下げろ!」
頭を下げると銃声が鳴り始めた。
正面に何かがそびえ立った……。
そこには左手をだらんと垂らした三島が立っていた。
「……坊主。お前だけでも逃げるだ」
振り向いた三島の額からは血が流れ出ていた。
「で、でも……」
「でもなんだッ!? 安心しろぉ! こんなとこで俺らは死ぬようなタマなんかじゃねぇ! わかったら早く行けッ泣き虫坊主!」
「…………」
俺はゆっくりと立ち上がり三島を見つめた。
「……死ぬなよ」
薄っすら笑みを浮かべた三島は視線を正面に戻した。
俺は足を踏み出した──。




