13
《赤坂セントラルベース》
整列した自衛官達が所狭しと室内を埋める。
隊員達の横にいた自衛官が一人の男に告げた。
「三島隊長お願いします」
洋画のアクション俳優然とした体躯の男が隊員達の正面に立つ。視線を左右に振り、咳払いの後に口を開いた。
「……あー、今回、隊長を任された三島三等陸佐だ。六本木周辺に化け物が現れたことは聞かされていると思う。俺達に課せられた任務は民間人の保護だ。間違っても化け物と戦闘するようなことはするなよ! 化け物退治は専門のスペシャリスト達に任せろ! ここにいる全員で任務を遂行することだけを念頭に置いておけ。絶対に死ぬなよ! 死ぬことは俺がゆるさん! 返事は!」
『はい!!』
鬨の声が上がり熱気で満たされた室内を揺らした──。
三島隊の車両が列をなして六本木の車道を走り抜けてゆく。
渋滞が比較的少ない道を最新鋭のGPSナビが導く。それでも時折、捨てられた車が街道に並んでいた。
時には止められた車両の隙間を走り、時には歩道や道無き道を走り、なんとか渋滞をやり過ごしていく。
「ここまでは順調か……。スペシャリスト達はしっかり働いてるようだな……」
顎髭を触った三島は車内無線を手に取った。
「些細なところにも目を配れよ! 民間人一人として見落とすなよ……」
三島は閑散とした街に目を光らせた。
無線を戻した三島は地図を広げた。地図には三つの印がつけられている。
α、β、γ……。
別々の場所に書かれたギリシャ文字が丸で囲われいる。
「分離地点に到着しました……」
運転席に座った自衛官の声が三島に向けられた。
自衛官の声を聞いた三島は無線を握った。
「……よし。第2小隊、第3小隊は以後、俺の指揮権を離れる。各自、課せられた任務を遂行し必ず生きて帰る様に……。俺らには神様がついてるんだ! 無事任務を終えたら神谷一尉のおごりで飲みにいくぞ!」
無線から歓声が鳴り響く。
「なっ! 神さま!」
「え!? いや、あの……」
三島が運転席に座った神谷の肩を叩くと神谷は面食らった表情で動揺した。
「……はぁ、冗談だよ、冗談。部下に俺がそんなことさせると思うか?」
「…………」
「おい。なんか言ってくれよ……」
真顔をした神谷から返答が返ることなかった……。
三島の訓示が終わると部隊は三手に分かれる。
「必ず戻ってこいよ……」
ミラー越しに分隊する小隊を見た三島は呟いた───。
部隊が分岐して10分以上が経過しようとしていた。
辺りの景色に変化はない。
人気もなければ、化け物が現れる気配もない。
「……静か過ぎる。神はどう思う」
訝しむ三島が運転席を見た。
「嫌な予感がします。……これは自分達に課せられた任務と何か関係があるんじゃないかと思えてきます」
「お前もそう思うか……。コイツが最重要機密だなんて、上は一体何を隠してる……」
三島は手に持った写真を真剣な眼差しで見つめた。
写真には一人の学生の姿が写っていた……。
「見えました。目標地点に到着します」
「何事もなく終わればそれでいい……」
三島はフロントガラスの先に映る景色を見つめた……。
車両が校門を通過し、車両は校庭の端に停車した。
「……一体何があった」
三島の目に破損し炎の上がる体育館が映った。
全ての車両が停車したことを確認すると三島と神谷は車両の扉を開けた。
神谷が拡声器を口元に当てる。
「自衛隊です。事態は急を要しています。各車両の隊員の指示に従い直ちに車両に乗り込んで下さい……」
「で、最重要機密はどいつだ……」
三島の声を聞いた神谷は拡声器を口元から下ろした。
二人は辺りを慎重に見回していく。神谷の視界の先で女子生徒を抱えた男子生徒が倒れた。
「三佐! あれが機密の少年です」
神谷は転倒した生徒を指差した。
「あいつか!……ん〜。俺には普通の坊主にしか見えねぇが……。ん?」
三島は怪訝な表情を生徒達に向けた。
「……様子がおかしくないか?」
不気味な動きをした生徒が機密の少年に近づいていく。そして女子生徒が立ち上がった瞬間、素早い動きで女子生徒の頭を叩き潰した。
生徒に思えた人影は倒れた機密の生徒の真正面に立った……。
「ちぃっ! 嫌な予感が的中した! 俺がいく! 神! 援護射撃の用意だ! 俺と生徒には当てるなよ!」
自動小銃を手にした三島は機密の生徒に向けて一目散に駆け出した──。




