12
迷彩色の車両が間隔を空けて続々と停車していく。
校庭の半分以上を横に整列駐車された車両が埋め尽くした。そして各車両から迷彩服を着た隊員達が姿を現わしていく。
「自衛隊です。事態は急を要しています。各車両の隊員の指示に従い直ちに車両に乗り込んで下さい」
一番端に止められた車両から降りた隊員の一人が拡声器でそう述べた。
大きく溜息を吐いた……。
身体全体に張り巡らされた緊張が幾分かほぐれていく。
でもまだ安心はできない……。
黒煙の上がる方角を一瞥した俺は視線を戻し自衛隊の車両まで足を走らせた──。
突然、背中に強い衝撃を受けた。
俺は走っているその勢いのまま、田中と共に地面に倒れた。
視界をあげたその先に見えたのは担任の教師が去り去っていく姿だった……。
担任は後ろを振り返ることなく、車両まで一直線に走りそして何事もなかったように無事車両に乗り込む……。
憤りを覚えることを忘れ、思考を止めた俺は、彼のその姿を見つめていた……。
我に返った俺は瞬時に身体を起こし、田中に視線を向けた。
「田中、大丈夫……」
「……うん、ちょっと擦りむいただけだから」
苦しみを隠すかのような笑顔が俺をみつめた……。
「あと一人! あと一人乗れます!」
顔を上げたその先で隊員が叫ぶ。
「こちらもあと一人です!」
少し離れた場所からも声が聞こえた。
田中を抱き上げようとした時、
「……青空君。あとは大丈夫だよ。青空君も早く車に乗らないと──」
落ち着いた笑顔でそう言った田中は立ち上がろうと身体を起こしはじめた。
田中に肩を貸した俺はゆっくりと立ち上がる。
「俺は田中を車に乗せた後でも大丈夫だよ……」
「ううん。これ以上、青空君に迷惑かけられないし、それにね。ほら……」
田中は俺から離れると一人で直立した。
「ね? 私ならもう大丈夫だから……」
朗らかとした笑顔……。クラスでも見たことのない笑顔が俺に向いた。
「…………」
「青空君! 色々とあり……」
屈託のない笑顔を見せた田中が喋り始めた時だった……。
不快な音が目の前で鳴った……。
それは骨が砕ける音……。
それは肉が破裂する音……。
飛沫となった液体が飛び散る。
飛沫は俺の顔と全身に飛び散った……。
心の底から可愛いと思ったその笑顔が一瞬のうちに破裂した。
「うあああぁぁ!!」
突然のことに理解が追いつかない……。
一秒前まで笑っていた田中の顔が今はもうない。
足に力が入らない……。
腰が抜けた俺の身体は地面に崩れ落ちた。
頭をなくした田中の身体が俺の目の前に倒れると拒絶反応を起こした俺は後ろに這って後ずさった。
否が応でも田中の亡骸が目に入る。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
頭が働かない。
何が起きて何が起きたのか……。
何もかもがわからない……。
辺りに悲鳴が鳴り響く。
目の前に何かが立っていた……。
「……えっ?」
制服ようなものをつけた人型の何かが目の前に屹立している。
下手なボディペインティングでもしているかのような制服。所々斑が見られ液体と個体の中間ような黒々とした身体を覗かせる。制服から伸びた四肢は黒光りするヘドロのようなものだった……。
頭は付いているが人の顔には思えない……。
生気が微塵も感じられない顔には表情がなく人形の頭をそのまま取り付けたようなものに思えた。そしてその顔につけられた口が開いた。
「オ、オ、オ……。オ、オ、マエ、ノ、ソレ、ホ、ホ、ホシイ……」
機械音に似た不気味な音声。
人型の物体は俺の目の前へ歩みよった……。




