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しばらくの間、無言の間が続く。
俺の手を握っている田中の手は自分の手よりだいぶ小さかった。
指が触れるだけで崩れてしまいそうで弱々しくなった田中のことが放って置けなくて彼女の手にふれたつもりだった。しかし田中の手から伝わる体温と感触の所為で妙に意識してしまう。
隣り合い誰かと手を繋ぐ。この行動に俺はデジャブを覚えた。記憶は勿論ない。しかし小さい頃もこうして誰かが隣で俺の手を握っていてくれた気がした。
唐突に田中が呟き無言の間が破られる。
「……ごめんね」
「えっ?」
田中を見遣ると彼女はうつむき話し始めた。
「私ね、昔、いじめを受けてたの……」
田中から発せられた言葉に俺は絶句した。田中は床を見つめたまま話を続ける。
「それで一回死のうとしたの。いじめた子達の所為にして死ぬつもりだった……。でもできなかった。悔しかった。だから生きる理由を探したの。そしたら見つかった。私が誰よりも優れた存在になって見返してやるって……。だから私は死ぬ気で頑張った。そして誰よりも優れた存在になった。そしたら手のひらを返したようにいじめをした子達が私を慕うようになった。それでおかしくなったんだね……。私はいつのまにかいじめる側の人間になってた……。助けてくれる人が誰もいないのに青空君が私を助けてくれた時にね、弱い子を助けたいって思ってた気持ちを思い出したの。酷い事をいっぱいして今更許されるとは絶対思わない。だけど言わせてください……」
涙を流した田中の視線が向いた。
「本当にごめんなさい……」
田中は深く頭を下げた。
俺はそんな田中になんて言葉をかけていいのかわからなかった。只、酷い奴、憎い奴としか思っていなかった彼女からいきなりこんな言葉をかけられるなんて……。
俺は田中から視線を外した。
すると田中はゆっくり俺の手から自分の手を退けた……。
その時、男子生徒の叫び声が聞こえた。
声がした方角をみると男子生徒が少しだけ開いた扉から外を見上げていた。
男子生徒は慌てて扉を開き体育館の外に出た。それを見ていた先生が扉の外を見上げた。
そして先生はわめき散らした。
「早く! 早くこの体育館からでて!! ヘリコプターが落ちてくる!」
その言葉を引き金に体育館に集まった生徒達が一斉に駆け出した。
瞬時に田中を抱き上げ屋外に向け走った。
生徒達が次々と体育館の外へ出て行く。俺も他の生徒達に揉まれながらも体育館の外へ出ることができた。
空を見上げるとコントロールを失ったヘリが回転しゆっくりと落ちてくる。俺はできるだけ遠くへ走った。
ヘリコプターはゆっくりと体育館へ落下し爆発する。
耳をつんざく爆発音。
爆散した火の粉が体育館を燃やし始める。辺りに騒ぎ立てる声はなかった。どうにか体育館にいた生徒と先生達は外に出られたようだった。
俺は燃え上がる体育館を呆然と眺めた。すると正門の方から車のエンジン音が聞こえ始める。音のした方角を見つめると校門から迷彩色の車両が続々と学校に入ってくる光景が見えた。




