走馬灯
人間が死ぬとき、その一瞬の間に一生分の時間を再体験するという。
俺は死んだ。
色々やった挙げ句、拳銃に脳天を撃ち抜かれた。
額に徐々に突き刺さって行く銃弾がスローモーションのように見えた。
ーーああ、こんな人生だったのか……やり直せるならやり直したいものだ……
死のその瞬間。
走馬灯が駆け巡った。
俺は生まれた瞬間から全てを追体験した。
泣きわめく俺をあやしてくれる父さんと母さん。
俺は何もしゃべれないが、二人は暖かく俺を包み込んだ。
そのまま眠りに落ちる。
小学生になった俺は悪さをして親に怒られていた。
毎日毎日、いろいろなことを思いついては、試して、怒られた。
学校の授業はつまらなく、全然聞かずに空想ばかりした。
中学生になると地元の不良の先輩について回って、色々なことをした。
犯罪スレスレどころか、犯罪だってやった。
両親は諦めた目で俺を見ていた。
高校には行かず、事務所に出入りするようになった。
兄貴達の命令は何だってやる。
俺自身の人生はどうでもいい。
下積みでのし上がった俺は、重大な仕事も任されるようになる。
危ない橋を幾度も渡り、渡り切るたびに、賞賛や女や酒や薬や金が手に入る。
俺は、いい気になった。
調子に乗って多くの仕事に手をのばす。
しかし、長くは続かない。
仕事に失敗した俺は、敵の組の奴に追いつめられた。
そして、銃弾が俺の脳天を貫く。
一瞬の間に一生分の時間をもう一度巡ってみて思う。
ーーああ、こんな人生だったのか……やり直せるならやり直したいものだ……
死のその瞬間。
俺は生まれた瞬間からの追体験を始めた。
走馬灯の中の走馬灯が駆け巡る。




