神様になろう
「ついにできた」
N氏は薄暗い地下室で、輝く魔方陣の前に立っていた。
「子供のときに魔導書の断片を見つけてから二十年。世界中を旅して、手がかりを探し、ついに魔方陣を完成させることができた……」
喜びに微笑むN氏。
「では、呼び出そうか」
完成された魔導書の一節を読み上げる。
「……そうして、生け贄を喰らい、出よ!」
N氏が読み終わると同時に、魔方陣はその輝きを増した。
「お呼びでしょうか」
まばゆい光が収まると、そこには奇妙な生き物がいた。
黒々とした体に、刺々しい角と尻尾。
ーー悪魔である。
「悪魔よ、私を神にしろ」
N氏は、子供の頃からの夢を悪魔に語った。
世界は悲惨すぎる。
世界は不条理すぎる。
世界は不公平すぎる。
神は何をやっているのだ。
と、N氏は声を荒げた。
「こんな酷い世界を作った神を私は許さない。私が神となり、素晴らしい世界を創るのだ」
「お安い御用です」
悪魔が笑うと、N氏は神になった。
***
「神様、先ほどの台風に関して、死者が多かったせいで多くの苦情が来ています」
「神様、恋愛に関する苦情が、十万件程溜まっていますが……」
「神様、運命を呪う苦情がパンクしそうです」
「神様、受験に落ちたことに関して、話が違うじゃないかという苦情が……」
「神様、次の地震をどこに起こすか決めてください。早くしないと、エネルギーが溜まり過ぎます」
「神様、運命が決まっていない子供達が増えてます。早く決めてください」
秘書である天使達にガミガミ言われながら、N氏は地球を見渡せるスクリーンの前で右往左往している。
「こんなシステムじゃあ、現状維持もできないじゃないか……」
「ブツブツ言わずに、手を動かす!」
「もう、人間ってどうしてこうもわがままなんだ。必ず誰かは受験に落ちるに決まってるし、どこかには必ず地震を起こさないと行けないし、誰かは悲惨な運命を受け入れなきゃいけないんだよ!」
操作板を叩く手を止めて呟いた。
「こんなことなら、人間を絶滅させちゃおうかな……」




