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第5話:大いなる旅人たちの雪の街 —啓示— 俺は異世界から来た!

□■■■◆■■■□




POV:カイト




エリオットは、一体何にそんなに腹を立てているのだろう?




俺は彼の数段後ろを歩きながら、その強張った背中を見つめていた。キルヴェルが合流してからというもの、彼の機嫌がここまで劇的に変わってしまった理由が分からなかった。俺たちの間に流れる空気は、山の空気と同じくらい冷え切っている。




「ハナ、イーシャ、キルヴェルをしっかり支えてあげて」

俺は低い声で二人に頼んだ。





もう友達だと思っている奴が、闇に呑まれていくのを黙って見てるわけにはいかない。エリオットの気持ちも分かるつもりだ。彼はナナミと親しかった。それなのに、彼女がみんなと衝突し、あろうことか彼に剣の切っ先まで向けたのだから、傷つき、苛立つのも無理はない。




俺は歩幅を速めて彼に追いついた。注意を引くために、彼の黒いローブの裾をそっと引っ張る。彼は足を止め、暗い表情で振り返った。その瞳には深い苦渋がにじんでいて、まるで最悪のタイミングで邪魔をされたと言わんばかりだった。




「何用だ、カイト?」

風のように鋭く冷たい声だった。




喉の奥がぐっと詰まる。気圧された俺は視線を落とし、灰色の石段を見つめてから、もう一度彼と目を合わせた。俺の躊躇いが、彼の苛立ちをさらに煽ったようだった。彼は何も言わずに背を向け、また登ろうとしたが、俺は再びその服を引っ張って引き留めた。




「エリオット、俺は……」




「言いたいことがあるなら、今言え」

こちらを見ようともせず、彼は言い放った。




この最悪な状況を仲裁するための言葉を探している間にも、激しい地吹雪が吹き荒れ、俺たちの顔を打ち据えた。しかし逆説的に、その極限の寒さが俺の思考をクリアにしてくれた。俺は深く息を吸い込み、彼の目を真っ直ぐに見据えた。ナナミとちゃんと話し合ってほしい、そしてキルヴェルへの無礼な態度は水に流してほしい。心から話せば、きっと分かってくれるはずだ。




「ナナミと話し合ってみたらどうかな」俺はなだめるようなトーンで提案した。




「彼女だって……落ち着いて話せば、きっと分かってくれるよ」

エリオットは視線をそらし、その顔を苦々しげに歪めた。




「なぜそこまで俺を助けようとする?」




心底不思議そうに、彼は問いかけてきた。

神秘的な理由や、ひねった答えがあるわけじゃない。真実はもっとシンプルだ。




「俺たち、友達だろ?」




この過酷な場所へ向かう道中、エリオットと俺は一緒に歩き、他愛のない話をしてきた。そんな風に気兼ねなく話せる相手のプロファイルを、俺は「友達」と呼ぶ。




エリオットは沈黙した。否定も肯定もしなかった。ただ、一瞬だけ視線を泳がせた後、再び俺に目を戻した。その瞳の奥には、さっきよりも少しだけ柔らかい光が灯っていた。




「……確かに、俺はキルヴェルのことをよく知りもしないな」彼はため息をつき、それが白い水蒸気となって消えた。




「少し、歩み寄ってみてもいいかもしれない」




やった! 上手くいった! 俺は安堵の叫びを必死に噛み殺した。




「うん、そうしてみてよ!」俺は笑顔でうなずいた。




「それから、ナナミとも絶対に話すんだよ」

彼は小さく微笑み、頷いて再び歩き出した。




これ以上追及するのはやめておこう。俺たちの絆がもっと深まれば、誤解を解く時間はいくらでもある。




公平に見て、キャラバンが全滅したと知った時のキルヴェルの反応は、人間として一番正直で、当たり前のものだった。ただ、ナナミとキルヴェルの間には複雑な過去があるようだ。俺たちが少し間に入れば、きっと最後には全てが上手くいくだろう。




「カイト」




数段上で、エリオットが急に足を止めて肩越しに振り返った。その目は珍しく温かみを帯びており、山頂の強い風が彼の髪を激しく揺らしていた。




「ありがとう、カイト」




見返りを求めていたわけじゃない。だけど、その言葉を聞いた瞬間、胸の奥から溢れんばかりの嬉しさが込み上げてきた。




「どういたしまして!」




俺は笑顔を返した。

俺たちは登り続け、短くも過酷な道のりを経て、ついに頂上へと到達した。しかし、そこで俺たちを待ち受けていたのは都市ではなく、何もかもが荒廃した、ただっ広い空間だった。目の前に広がるのは果てしない白銀の世界と、遠くに見える険しい山々のシルエットだけ。




「お兄ちゃん、街はどこにあるの!?」

イーシャが辺りを見回し、明らかに困惑した声を上げた。




ここに家々が立ち並んでいるはずだった。しかし、奇妙な建築様式なのか、あるいは魔法の類なのか、そこには本当に何もなかった。

数メートル先では、俺たちの到着を予期していたかのように、ナナミが岩の上に腰掛けていた。エリオットは彼女の姿を見て身体を強張らせ、じっと見つめていたが、彼女は視線を合わせようともしなかった。




「おい、障壁を解け。邪魔だ」ナナミが冷たく言い放つ。

障壁? 俺は首を傾げた。

ナナミの鋭い視線がキルヴェルへと向かう。彼は足元をふらつかせながら、見るからに疲弊した様子で歩みを進めていた。




「イーシャ、ハナ、もう大丈夫だから……」




キルヴェルは二人の支えから優しく身を引き、そう呟いた。

彼は疲れ切った様子で背を丸めながら数メートル進み、ナナミの厳しい監視のもと、完全なる「虚無」の前で足を止めた。キルヴェルは彼女の方を少しだけ振り返り、距離のせいで聞き取れないほどの小声で何かを囁いた。次の瞬間、彼が手をかざすと、驚いたことにその指先が見えない強固な壁にぶつかったかのように、空中でピタリと止まった。




「なっ……!?」俺は息を呑んだ。




「お兄ちゃん、何してるの!?」イーシャが声を荒げる。




キルヴェルはこちらを振り返り、手で制して静かにするよう促した。そして、目の前にある見えない表面へ、全神経を集中させた。




POV:キルヴェル




正直に言えば、今すぐにでも王都の雑踏に戻りたかった。俺の魔法を見て驚く人々の顔が見たかったし、ミミルとまた話がしたかった。だが現実は違った。過ぎた時間は変えられない。なら、この現実を受け入れて、甘んじるしかない。

俺は深く息を吸い込み、魔力を練り上げながら、解放の呪文を唱えた。




「開け……勇敢なる冒険者たちの魂が、安らかに眠れるように。解放せよ、恐れを知らぬ男、女、老人、そして子供たちが、その魂の意志に従えるように」




最後の音節を紡ぎ出した瞬間、大気が震え、衝撃波が幻影をかき消した。俺たちの目の前で、固まった雪の地面が、美しい木と石で作られた雪山の街の街並みへと姿を変えていく。




イーシャを捜しに出発する前、王都での暴動を聞いた俺は、念のためにこの隠蔽障壁を展開しておいたのだ。あの時は、その混沌が王国全土を巻き込む全面戦争の前触れではないかと危惧していた。だが、キャラバンが全滅し、現実がこの顔を引っ叩いてきた今となっては、そんな警戒などどうでもいいことだった。




「お兄ちゃん、今のは何!?」




イーシャがいきなり俺の背中に飛び乗ってきた。仕方がなく、俺は彼女をおんぶして支える。


「魔法だ」短く答える。




「そんなの知ってるよ! でも、あんなの教えてもらったことない!」

妹は頬を膨らませて抗議した。




その横をナナミが通り過ぎていく。俺たちを見ることも、感謝の言葉を口にすることもなかった。ただ、魔法の壁が消えたことで現れた石畳の道を、毅然とした足取りで進んでいく。




「まあな」俺は歩き出しながらイーシャに言った。「知ってはいても、あまり人に見せびらかしたくないものだってあるんだよ」




POV:エリオット




よく覚えている。かつて前の世界で、父さんと母さんと一緒に新穂高ロープウェイに乗った時、あまりの高さに胸が圧迫されて息が苦しくなった。あの果てしない石段を登っている間も、ずっと同じような息苦しさに苛まれていた。しかし、かつて障壁が守っていた境界線を一歩またいだ瞬間、空気はにわかに温かく、軽くなった。何の問題もなく息ができる。ファンタジー世界特有の、奇妙だが心地よい異常性だった。




俺はグループの3番手、カイトのすぐ後ろを歩きながら、周囲の景色を観察していた。




「王都とは、ずいぶん違うな……」

俺は独りごちた。




この集落は、さっきまでいた中世のような街よりも、はるかに近代的な雰囲気を備えていた。まるで現代の山岳リゾート地だ。ただ奇妙なことに、通りには人っ子一人おらず、静まり返っている。

俺たちが沈黙のまま進んでいると、イーシャが兄を呼び止めた。




「お兄ちゃん、行き過ぎだよ」




「あ……ああ、すまん……」




キルヴェルは明らかに心ここにあらずといった様子で答え、数歩引き返した。イーシャが背中から降りると、彼は雪の上にしゃがみ込んだ。そして、地下に眠る何かを呼び覚ますかのように、地面へ右の手のひらを向けた。数秒後、地面がかすかに揺れ、表面から長方形の大きく滑らかな黒い岩がせり上がってきた。それを見るや、キルヴェルは立ち上がり、冷たい鉱石の上に手を置いた。

突如、岩がまばゆい光を放ち、その内部から若い少女のような、少し歪んだ声が響いた。




『ハロー、どなたですかー?』




キルヴェルは俺たちをちらりと見回した後、再びその魔道具に意識を向けた。




「キルヴェルだ」




『本物のキルヴェルだって、どうやって証明するの?』声は疑わしげに返してきた。






彼はうんざりした表情を浮かべ、選択肢を吟味するように黙り込んだ。




「考えさせてくれ……」




『あ、分かった!』岩の向こうの声がいたずらっぽく遮った。『本物のキルヴェルしか言わないようなことを言ってみて!』




キルヴェルは眉をひそめ、ついに堪忍袋の緒が切れたようにため息をついた。




「ふざけてないで、早く通せ」




『それそれ! 本物だー!』

声が嬉しそうに弾けた。




次の瞬間、キルヴェルの手がまるで水に触れるかのように岩を通り抜けた。数秒後、彼の全身がその中へと沈み込み、姿を消した。続いてイーシャが渡り、ナナミ、ハナ、カイト、そして最後に俺が後に続いた。

石の結界をくぐり抜けると、雪の盲目的な白さは消え去っていた。俺たちが立っていたのは、広大な地下図書館だった。重厚な木製の書棚が立ち並び、あらゆるサイズの魔導書や古い羊皮紙が収められている。棚には蛍光色の液体が入ったボトルや、奇妙な標本が浮いている瓶が所狭しと並んでいた。




「ばあ!」

いきなり目の前で声がした。




「うおっ!?」

思わず飛び退く。




風変わりな少女が、俺を驚かせようとしていた。恐怖というよりは、深い困惑が勝った。髪も瞳も完全に真っ白で、肌にいたっては、太陽の下で見たら眩しさで目が潰れそうなほど白い人を見るのは初めてだった。彼女は足首まであるゆったりとした白いガウンをまとっており、周りを見渡す限り、この土地の習慣なのか彼女も素足だった。




「キルヴェル、この冒険者たちは誰?」




本棚の影から、新たな人影が現れた。80歳前後と思われる老人だ。その白雪のような髪と透明な虹彩を見て、一目で少女の祖父だと分かった。

「彼らは王都から来ました。アルバードさん、彼らを治療していただけませんか?」キルヴェルが敬意を込めて頼んだ。




アルバードと呼ばれた老人の分析的な視線が、ゆっくりと俺たち一人一人を巡っていく。しかし、その目が俺のところでピタリと止まった。彼は眉を寄せ、二人の距離を縮めるように一歩前へ踏み出してきた。




「若者よ……お主、この世界の人間ではないな?」




地響きのような低い声が、部屋の壁に木霊した。




心臓が跳ね上がる。なぜ分かった?




一瞬にして、部屋にいた全員の視線が俺に集中した。静寂が。重苦しく、息が詰まるような期待感が部屋を満たす。誰もが俺の反応を、俺の答えを待っていた。




一瞬、この奇妙な服装のせいでアルバードに見破られたのかと思ったが、すぐにその可能性を打ち消した。俺のローブは全身を覆っており、21世紀の衣服の痕跡などすべて隠している。ならば別の何かだ。俺のエネルギーか、あるいは目つきか。




自分がこの場所に馴染んでいないことを、ついに誰かに見抜かれたのだ。隠れる時間は終わったと理解した。胸の奥に固く閉ざしていた秘密を明かすなら、今しかない。




「俺……」俺は喉を鳴らし、声の震えを抑えようとした。




カイト、キルヴェル、そして老人を見つめる。




「みんなに言わなきゃいけないことがある。冗談なんかじゃない」

彼らの顔に好奇心の色が濃くなる。空気が張り詰めた。




「俺は、異世界から来たんだ」




完全な困惑が場を支配した。全員が何度も瞬きをし、まるで古代の死語を聞かされたかのように情報を処理しようとしていた。その静寂を破り、目を丸くして最初に声を上げたのはキルヴェルだった。




「……マジで?」




■■■□◇□■■■



これからは、エリオットにとって物事がより円滑に進むはずです。この取り組みの真髄は、まさに今この瞬間から始まります。

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