エピソード4:上昇
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1段、2段、3段……。その時、息を切らしながら、標高約1000メートルの場所で私は不意に足を止めた。
「あとどれくらい登り続ければいいんだ? この階段、まるで見当がつかないほど無限に続いているように見える……」私はハナを見つめながら、途切れ途切れに呟いた。
彼女は私より3段ほど先を歩いていたが、私とは違って、まるで何事もないかのように涼しい顔をしていた。
……
「もう休みたい……」カイトが顔を真っ赤にしながら不満を漏らした。
私たちは山の中にある都市、「大旅人の雪の都」へ向かうために階段を登っていた。しかし、その道のりは果てしなく続いているように思えた。
「文句を言うのはもうやめなさい」ハナがそっけなく言った。
「そうだよ、みんな、不満ばかり言わないの。これくらい大したことないじゃない」ナナミがそれに続いた。 二人からは、疲労の気配など微塵も感じられなかった。
少し前まで最後尾にいたナナミは、私とカイトをあっさりと追い抜いていった。彼女はハナの隣に並ぶと、その首に腕を回し、私たちに満面の笑みを向けた。
「冗談だろ……。二人とも、少しも疲れてないのか?」カイトが明らかな挫折感をにじませながら、彼女たちを見つめて呟いた。
ハナはかすかに微笑むだけで、ナナミを伴ってその果てしない階段を登り続けた。
この時点で、私たちは約1時間もの間、一度も止まることなく登り続けていた。石段の状態は決して良いとは言えず、高度が上がるにつれて、寒さと疲労、そして酸素の薄さが激しく私たちを襲った。――いや、「私たちを襲った」というのは、厳密には私とカイトのことだ。 ハナは自身の魔法が同じ氷の属性を持っているおかげで、この極寒の気候の影響を受けていないようだった。
一方のナナミは、私の元の世界の一流アスリートさえ凌駕するほどの、凄まじい身体能力の持ち主だった。
「こんなの、どう考えてもお marches おかしい(筋が通らない)」。
私は呼吸がだんだんと遅く、重くなっていくのを感じながら考えた。
息を整えるために何度か深く空気を吸い込み、右側に広がる冷たい深淵へと視線を落とした。
「落ちたら、痛いのだろうか? ……いや、そんなことはないはずだ」。
自分自身の中で葛藤し、今にも虚無へと一歩を踏み出しそうになったその時、数段下にいたカイトが囁いた。
「何をしてるんだ……?」 …… 私はため息をつき、視線を階段に戻して歩みを再開した。
再び登り始めた。
■■■
鼻が痛み、太ももが焼け付くように熱かった。結局のところ、ここへ来る前に何ヶ月も部屋に引きこもっていたことが、完全に仇となっていた。 1段、また1段、そしてもう1段。次から次へと。
「暗くなってきたし、休もう」ナナミが告げた。
階段の脇には、時折、雨風をしのぐのに最適な小さな洞窟が現れた。中には岩壁に蝋燭が埋め込まれている場所もあった。
私たちはその一つを見つけ、中に入って身体を休めることにした。 「こんな高度で、蝋燭なんて何の意味があるんだ? 酸素が足りなくて火なんて点くはずがない」。
その時、カイトが芯の一つに近づき、指をパチンと一鳴らしして火を点けた。そして、得意げな笑みを浮かべて私たちを振り返った。
「へえ、魔法が使えるんだね」ナナミが言うと、カイトは驚いて飛び上がった。
「そ、それは……つまり……」彼は目に見えて震えながら、しどろもどろになった。
まるで、ここで自分の能力を使ったことで、彼女に即座に処刑でもされるかのような怯え方でナナミを見つめていた。
「安心しなよ、何もしないから」彼女は気楽なトーンで言った。
「何も……しないんですか?」
……
「うん。あの噂は嘘だよ。子供たちが悪さをして問題を起こさないように、脅しで言っているだけ」
カイトは安堵したようだったが、同時に少し納得がいかない様子でもあった。私の察するに、この世界では一般人が自由に魔法を使うことは許されていないのだろう。
ハナがどう思っているのかを確かめようと彼女を見たが、彼女は片眉を上げて私を見返してきただけだった。
……
■■■
……
洞窟に落ち着き、完全に夜が更けた頃、みんな深い眠りに落ちたようだった。私は静かに隠れ家を抜け出し、階段の縁に立って、暗く果てしない深淵を見つめていた。 …… 地面を探して手頃な石を見つけると、屈んでそれを拾い上げ、虚無へと投げ落とした。
……
「私は一体、どうすればいいんだ……?」
……
……
……
石が底に着いた。その音は聞こえず、見えず、知る由もなかった。
「いつか、元の家に帰れるのだろうか?」 「帰ることができるのか……?」
それも分からなかった。それが嫌だった。答えがないことに、心の底から怒りを覚えた。自分がこんな目に遭うようなことを何かしただろうか? 何もしていない。
時間が経つにつれて、不確実性はより重く、耐え難いものになっていった。再び深淵に目を向けると、絶対的で容赦のない闇が私を見返してきた。その光景が、ある記憶を呼び覚ました。
……
「星がすごく近いね」
「本当だ。まるで宇宙にいるみたい」
宇宙……
そうか……
……
「本当に宇宙にいるみたいだね! そう思わない、エリ?」
……
「そうだね……」
……
そこは宇宙ではなかった。山だった。ただ、視線で星に触れられるほど十分に高い山。それは、私が好きだった少女と一緒に過ごした夜であり、彼女に自分の想いを告げた夜だった。あの日以来、彼女が私に話しかけてくれることは二度となかった。
……
……
……
「ねえ、こんなところで何してるの?」
声の主を確かめるために振り返ると、そこにいたのはナナミだった。ほんの数分前までよだれを垂らして熟睡していたはずなのに、今の彼女は私よりもはっきりと覚醒しているように見えた。
「どうして私が外に出たことに気づいたんだ?」 今となっては、それを知ることに大した意味はなかった。
彼女は私の隣、その冷たい深淵のすぐ縁に腰掛け、沈黙の中で寄り添ってくれた。
「何をしに来たんだ?」私は尋ねた。
……
「私の方が先に聞いたんだから、答えなよ」彼女は私を見ようともせず、月をじっと見つめたまま返事をした。
……
「あのさ……君が何に苦しんでいるのかは知らないけど、山から飛び降りたって何も解決しないよ」 気づかれていた。どうやって? どうでもよかった。
「山から飛び降りても、解決にはならない」。
彼女の言う通りだろうか? おそらく、そうだ。
現実から逃げ出したくなった時、心は時に空虚へと自分を突き動かそうとするが、それは何の解決にもならない。
飛び降りたところで、事態が好転するわけではない。死んだところで、私が抱える疑問の答えが得られるわけでもない。それは単に、後悔に満ちた人生を後に残し、何よりも、もう二度と母に会えなくなることを意味するだけだ。
一歩ずつ進み、この泥沼から抜け出さなければならない。まずは一つ質問することから始めよう。この新しい世界について、まだ分からないことが多すぎるのだから。
「どうしてカイトは、魔法を使うのを見られた時、あんなに怯えていたんだ?」私は問いかけた。 ナナミは微笑み、私に視線を向けた。
「君って本当に好奇心が強いんだね。そういうところ、好きだよ」
「え……?」
「ふふふっ」
私の困惑した様子に、彼女は小さく笑い声を漏らした。私は何が起きたのか理解できず、何度も瞬きをしながら彼女を見つめ続けた。
「まあ……君は本当に何も知らないみたいだからね」ナナミは手の甲で目元の小さな涙を拭いながら言った。
「質問に答えてもらえるか?」
「わかった、わかったよ……。子供の頃から、魔法は使っちゃいけないって教えられるんだよ」
「なぜ?」
「とても危険だから。自分自身を傷つけるかもしれないし、他の誰かを巻き込むかもしれない。だから、大きくなってから正式に使うことが許されているの」
「なるほど」
「カイトとハナは本当に特殊なケースなんだ。二人は孤児で、教育も受けていなければお金もない。魔法をコントロールする方法なんて知っているはずがないのに、それなのに……」
ナナミは自分の言葉を遮り、再び月を見上げて続けた。
「君は……魔法が使えないんだよね?」
「使えない」
「そうだと思った。それに、すごく弱そうに見えるしね」
「分かっている」
……
「ごめんなさい」 私は彼女をじっと見つめるために身体を巡らせた。
「なぜ謝るんだ?」
……
「君も、ハナも、カイトも……みんな私のせいで苦しんでいる。私のせいで……みんなが……」
「ナナ……」
「いいえ、本当のことだよ。みんな無事に到着するはずだったのに……私は無力だった。本当に馬鹿だった」
……
ナナミは月を凝視したまま動かなかった。その緑色の瞳には月の光が反射していたが、今は涙で潤んでいた。なぜ、これほど美しく優しい人が、明らかに自分一人の責任ではないはずの重荷を背負い込んでいるのだろうか?
「ナナミ」
彼女が振り向いた。その瞳は涙の限界で輝いていた。
「君のせいじゃない。誰もこれ以上のことはできなかったはずだ……。雪の中で死にかけていた私を、誰も救えなかった。カイトとハナは私が死体のようだったと言っていたが、君が私を救ってくれたんだ。森での出来事は君の責任じゃない、あの忌々しい城が爆発したのが原因だ……」
ナナミは私を断続的に見つめ、視線を固定することができないようだった。このような喪失と向き合うのは容易なことではない。だからこそ、私には彼女の気持ちが痛いほど理解できた。
「うん……」
彼女はかろうじてそう囁いた。 私はかすかに微笑み、視線を前方へと戻した。 私たちはあまりにも違っていた。状況が悪化した時、ナナミは月を見上げ、闇の中に差す微かな光を探そうとした。彼女は、どんなに遠く、苦しくても、何か輝くものに手を伸ばそうと希望を持って闇に立ち向かっていた。一方で、物事が複雑になると、私はすぐに深淵の、あの息の詰まるような暗闇に目を向けた。光を探そうとはしなかった。私にとって、そんな光は最初から存在しないか、あるいは探す勇気がなかっただけだ。私はいつも逃げていた。
……
おそらく少し前、ナナミは私が本当に飛び降りようとしていたことには気づいていなかったのかもしれない。あの「山から飛び降りても何も解決しない」
という言葉は、きっと彼女自身に向けられたものだったのだ。
だからこそ、私はあの場所にいて、彼女がそれを口にしてくれたことが嬉しかった。心から感謝していた。 私たちは二人で月を見つめ続けた。
「ありがとう……」
ナナミは身に着けていた首飾りの緑色の真珠を掴むと、涙の浮かんだ目に哀愁を帯びた笑みを浮かべ、それを外した。
「え?」
「ほら、これ着けて」
私が抗議する暇もなく、ナナミの首飾りはすでに私の首に回されていた。彼女自身の手で、それを私に着けてくれた。
……
……
「ちょっと……あんたたち、こんな外で何してるの?」
その瞬間を遮るように、眠たげな声が響き、私たちは振り返った。ハナだった。彼女の髪は鳥の巣のように乱れており、頬は眠気で明らかに膨らんでいた。
……
私は微笑みながら地面の縁から立ち上がり、ナナミに手を差し伸べた。
「行こう、明日も登り続けなきゃいけないんだから」
……
ナナミは微笑んで私の手を取り、その勢いで立ち上がった。そして私たちは三人で洞窟の中へと戻った。中ではカイトがよだれを垂らしながら気持ちよさそうに大いびきをかいており、蝋燭の火が彼の重い呼吸の調べに合わせて踊っているようだった。
「馬鹿だな」
彼の姿を見て、かつて母親が私の寝顔の写真を教えてくれた時のことを思い出した。あの時、私は夜更かしをしていて酷い顔をしていたが、母はそれでも「可愛い」と言い張っていた。
私の思考を遮るように、ナナミがそっと私の肩に触れ、最後に「おやすみ」の微笑みを向けて眠りについた。ハナの方は私を見ようともせず、自分の場所に戻って丸くなり、目を閉じた。まだ解決していない疑問が頭を巡り、思考に囚われていたが、最終的に私も横になることにした。
■■■
翌朝、目に見えるほどの心地よい暖かさを持った太陽の光の中、私たち4人のグループは洞窟を後にした。私たちは1人ずつ外へ出て、日の光を浴びながら身体を伸ばした。最初にカイト、次にハナ、その後に私、そして最後にナナミが出た。
「おはよう……」ハナが、まだボサボサの髪のまま呟いた。
……
「わあ、ずいぶん素晴らしい夜を過ごしたみたいだね、ハナ。まるでビーバーの赤ちゃんみたい」ナナミがお調子者のトーンでからかった。
「うるさい」ハナは不機嫌に返した。
……
「よし、二人はどうやって目覚めた?」ナナミが私とカイトを見つめて尋ねた。
カイトが肯定のサインとして小指を立てると、ナナミも同じジェスチャーを返した。
……
その瞬間、誰もが再び歩き出す準備を整える前に、足音が聞こえてきた。それは階段を駆け下りてくる、急いた、慌ただしい足音だった。全員が音のする方へと振り向くと、突然、一人の少女が私たちの前に姿を現した。彼女は長い青髪に、同じ鮮やかな色をした瞳を持っていた。大急ぎで階段を降りてきているところだった。
「痛っ!」
少女は私たちの存在に気づいていなかったため、足をもつれさせて地面にしりもちをついた。
「大丈夫?」
ナナミが手を差し伸べ、彼女が立ち上がるのを手伝いながら尋ねた。
「うん、ありがとう、あはは」少女は照れくさそうに笑いながら答えた。
私はある違和感に気づいた。私はハナと、その新しくやってきた少女の顔を何度も交互に見比べ始めた。 「瓜二つだ」。
その信じられないほどの酷似に気づいているのが自分だけのようだったため、私はあえて口を閉ざすことにした。
「名前は何ていうの?」ナナミが問いかけた。
……
少女は私たちを警戒するように分析しながら、答えるまでに少し時間を置いた。彼女の視線は、最終的にナナミのところで止まった。
……
「私はイシャ。あなたたちは?」
「私たちは王都から来たの。北のキャラバンの、唯一の生き残りだよ」
……
私はナナミのトーンに特に注意を払った。彼女の言葉からは、深く純粋な悲しみが感じ取れた。
「ああ、なんて気の毒に……。王都でのこと、お悔やみ申し上げます……」
イシャは敬意を示すように頭を下げて、静かに呟いた。
「イシャ、どうしてそんなに急いで降りてきていたんだ?」カイトが口を挟んだ。 彼女は彼を見つめ、引きつった笑みを浮かべながら話題をはぐらかした。
「まあ……それは今はいいじゃない。登りましょう」 イシャはきびすを返し、自分の足跡をたどり始めた。
驚いたことに、彼女は完全に裸足だった。
……
やがて私たちは遅れ始め、取り残されそうになった。彼女はこの果てしない階段の過酷さに完全に慣れており、彼女のペースを維持することは、残された私たちにとって気が遠くなるような重労働となった。
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……
「クリバーは上にいるの?」ナナミが、凍てつく風のうなりをかき消すように声を張り上げて尋ねた。
その名前を聞いた瞬間、イシャはぴたりと足を止めた。彼女は緊張に満ちた表情を浮かべ、ゆっくりと振り返った。
「クリバーを知っているの?」 全員の視線が一瞬にしてナナミに集中した。
彼女は注目を浴びて、気まずそうに笑った。
「なんでみんなそんな目で私を見るの? ええと……うん、知ってるよ。一緒に勉強した仲だしね」
「なるほど、それは光栄です」イシャは彼女をじっと見つめながら呟いた。
「ええ、光栄だわ。私はクリバーの妹よ」
「彼に妹がいるなんて知らなかったな」
「あはは、まあ、これで知ってもらえたね」
「一体そのクリバーって奴は何者なんだ?」 イシャは再び階段に意識を戻し、上昇を続けた。私たちは彼女のすぐ後ろに従った。
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……
「これに慣れてきた気がする、そんなに悪くないな」。
「誰を騙そうとしてるんだ? 最悪だ」。
私はすでに、両足の筋肉に何度も激しい痙攣を起こしていた。もしこのまま消耗の激しいペースを続ければ、私の四肢は間違いなく限界を迎えて崩れ落ちるだろう。
……
「あいつは誰だ?」カイトが、私の1段後ろから声を漏らした。
「誰だって?」 顔を上げると、全員の目が空の一点に釘付けになっていることに気づいた。私は彼らの視線の先を追った。
「何だ……?」
……
「お客さんを連れてきたみたいだね、イシャ」
声の主は、広大な深淵の上で宙に浮いている、浮遊した一人の男だった。
彼は白い魔法使いの長いローブを身にまとっており、それが凍てつく突風に激しく煽られていた。
「こんにちは、お兄ちゃん……あはは」イシャが震える声で挨拶した。
「久しぶり、クリバー」ナナミが際立つ冷静さで言った。
その人物――クリバーの黄色い瞳は、私たちの顔を一人ずつ綿密に吟味していった。彼は虚無の上を浮遊しながら、私の方へと移動してきた。純粋な反射命令で、私は脇に避け、彼が私の空けた石段に着地して立つのを許した。
「やあ」
彼は微笑みを浮かべながら私に言った。
私はその仕草を返し、彼に小指を立てて見せた。
この世界において、その指を立てることは親指を立てること、あるいは親切な挨拶と同義だった。
クリバーはナナミの方を振り返る前に、私のジェスチャーを真似てみせた。
「さて、ついに王都の連中が到着したようだね」 クリバーは視線を下の階段へと向け、もう一度私たちを見渡した。
……
「他の奴らはどこだ?」
……
彼の言葉を聞いた瞬間、私の背筋に冷たいものが走った。私は最悪の展開を恐れながら、期待混じりにナナミを見た。彼女は永遠とも思える沈黙を保った。
……
「みんな死んだよ」
……
その告白を聞いた瞬間、クリバーの瞳孔が限界まで収縮した。彼は表情を硬くし、ハナを突き飛ばしてナナミの1段後ろに陣取ると、単なる口論を遥かに超えた強烈な眼差しで彼女を睨みつけた。
……
「ふざけるなよ、ナナミ」
……
「ふざけるな。ミミルと一緒に仕掛けた、お前のくだらない冗談のどれか一つに違いない」
……
「いいえ。本当のことだよ」
……
クリバーは彼女の目から視線を外し、乾いた、可笑しみの一切ない笑い声を漏らした。残された私たちは、状況が制御不能に陥らないことを張り詰めた緊張感の中で祈りながら、その光景を見守るしかなかった。
……
「ふざけるな……」
……
クリバーの細いが驚くほど力強い手が、言葉への純粋な拒絶に突き動かされて、ナナミのシャツの襟元を激しく掴んだ。
……
「お前、みんなを見殺しにしたのか……?」
……
ナナミは答えなかった。クリバーが周囲の完全な静観の中で崩壊し始める間、彼女は暗い表情でただ彼の視線を受け止め続けた。
「ミミル……」 魔術師の力が抜け、ナナミの服を掴んでいた手が離れた。
クリバーは完全に心が折れ、その場に膝をついて激しく泣き崩れた。私は周囲の人間が、自分自身のものよりもさらに酷く見える個人的な地獄を経験しているのを、ただ見つめることしかできなかった。
……
「ちょっと!」
……
ナナミは全員に背を向け、イシャの呼びかけに完全に耳を貸さずに階段のステップを再び登り始めた。 言葉にできない感情に突き動かされ、私は走り出していた。階段にいる他の面々を追い抜き、彼女の後を追った。
「くっ……」
太ももが焼け付くような痛みを訴えたが、私は止まることを拒んだ。止まりたくなかった。彼女に追いつくまであとわずか3段というところまで迫った、その時――金属的な音が空気を切り裂いた。彼女の腰から剣が素早く引き抜かれ、私の胸元へと真っ直ぐに向けられたのだ。
「ついてこないで」
……
「え……?」
……
「私を助けようとしないで」
……
特徴的だった光が完全に消え失せ、どんよりと濁ったその緑色の瞳が、鋼の刃の脅迫的な輝きと共に私の目に突き刺さった。
……
「これらはすべて……私のせいなの」
……
ナナミの視線が私の首元へと下がり、今や私を飾っているその装飾品にピタリと止まった。あの首飾りは、彼女にとって計り知れない感情的な重荷を強いているようだった。彼女は目を強く瞑り、一突きで剣を鞘に収めると、足早に立ち去り、階段の上へと消えていった。
……
「私は今、一体どうすればいいんだ?」
……
分からないことが嫌だった。行く先のない無力感が嫌いだった。肩を落とし、私は残されたグループの元へと階段を降りて戻った。
「ナナミはどうしたの?」ハナが尋ねた。 私は答えなかった。代わりに、クリバーをじっと見つめ続けた。彼は床の石段に視線を落としたまま膝をついており、ハナ、カイト、イシャが彼を立ち上がらせようと手を貸していた。
「お前は、本当に馬鹿な奴だ」
私の言葉を聞き、全員の目が困惑と驚きに満ちて私に注がれた。私はもう、あの男と関わり合いたくなかった。近づいて、彼の首に手を回し、殴りつけ、引き倒し、その態度をズタズタに破壊してやりたい衝動に駆られた。
しかし、踏みとどまった。代わりに視線を外し、全員に背を向けた。 私は再び登り始めた。1段、2段、3段
……
さらにもう1段。立ち止まらず、途中で誰を置き去りにしているのかを確かめるために振り返ることもせず。
「糞食らえだ」。
……
「どうすればいいか分からない……」
……
「ただ、家に帰りたいだけなのに」。
……
結局のところ、私は孤独に完全に慣れきっていたのだ。彼らの誰の友情も必要としていなかった。もし彼らが私の本質を深く知れば、遅かれ早かれ自ら離れていくことを私はよく知っていた。ナナミとは本物の絆を築きつつあると思い込んでいたが、自分が間違っていたことは明白だった。
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お知らせです。現在かなり忙しいため、投稿の頻度を少し落とすことにしました。ただ、明日は間違いなく新しい章を公開しますので、またその時に!




