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第29話 何かを思い出すのは脳の訓練になる

 再び、クラフトVSスチーム


 今の状況を整理するクラフト。


(俺様の絶対防御はせいぜいあと3回ってとこだけどよぉ、あいつはどんだけタバコ持ってやがんだ? 一発一発でさえとんでもねぇ威力なんだ。数で押されたら、とてもじゃねぇが対処しきれねぇぞ)


 そんなクラフトの表情を見て、何かを察したスチーム。


「あんた、その顔は俺があとどれだけタバコを持ってるか気になってるって顔だな?」


「いや、昨日の晩飯何食ったか思い出せなくて悩んでたんだ」


「認知症かっ⁉︎ いや、俺の能力によるダメージの影響かもしれないからな……お詫びに良い物を見せてやろう」


「良い物?」


 そう言って、バッとコートを広げるスチーム。


「テメェ! 変質者かっ⁉︎」


「違うわっ‼︎ よく見ろ‼︎」


 スチームが広げたコートの裏には何と、大量のタバコの箱が並んでいた。


「なっ⁉︎」


「分かっただろ? 俺に弾切れはねぇ。諦めて降伏しな」


「お前……そんなに吸ってたら病気になるぞ?」


「魔族が自分の身体の心配なんかするか!」


「でもよぉ。そんなに大量に買い込んだら、金がかかってしょうがねぇだろ?」


「そうなんだよ。しかもどんどん値上げしやがってよー。ただでさえ吸わねえ奴等から白い目で見られるってのに……って何の話だっ‼︎」


『スチーム選手、何故かタバコについて愚痴り始めましたがその肩身の狭い気持ち、同じ喫煙者としてよく分かります‼︎』


「そんな事はどうでもいい! 降伏しないってんなら、これで終わりだ‼︎」


 火のついたタバコをクラフト目がけて投げるスチーム。


「だから、ポイ捨てすんなっての!」


 それを何とかかわしてスチームに接近しようとするクラフト。


(弾切れは無くても、タバコに水蒸気を貯めるのに時間がかかる筈だ。その間に少しでも近付く!)


「一発や二発かわした所で無駄だ!」


 次々にタバコをくわえては火を付けて投げるスチーム。

 必死にかわしていたが、遂に避けきれずに爆発に巻き込まれるクラフト。


「グウッ‼︎」


『クラフト選手、遂に爆発に巻き込まれましたー‼︎ 能力が使えるならおそらくは無事だと思われますが、どうなんだー⁉︎』


 爆煙が晴れ、無傷で現れるクラフト。


『クラフト選手無事です‼︎ どうやら絶対防御で防いだようです‼︎』


(チッ! 絶対防御、1回使っちまった。あと2回か……)


 再びスチームに向かって走り出すクラフト。

 そんなクラフトの姿を見て、客席から女性客の声援が飛ぶ。


「キャー‼︎ クラフト様カッコイイー‼︎」


「あたし、今までウル様一択だったけど、クラフト様も良いかも」


「頑張ってー‼︎ クラフト様ー‼︎」


 だが皮肉にもその声援により、スチームの爆発の威力が増す事となる。


「チキショー! 女の声援を浴びやがって、リア充めー!」


「グハアー‼︎」


 さっきまでかわせていた爆発だったが、威力が増した事により被爆してしまうクラフト。


「キャー‼︎ クラフト様ー‼︎」


「立ってクラフト様‼︎ 勝てたらキスしてあげるー‼︎」


 それを聞き、更に激昂するスチーム。


「クソッ! クソッ! クソー‼︎ リア充共は全員死ねー‼︎」


「い、いや待て……こ、これはただの声援であって、別に俺様がモテている訳じゃねぇだろ?」


 倒れながら必死に訴えるクラフト。


「うるせー‼︎ 女に声をかけられた時点でリア充だー‼︎」


 口一杯にタバコをくわえ、一斉に火を付けて投げるスチーム。


「なっ⁉︎ 防ぎきれ……」


 大爆発に巻き込まれるクラフト。


「クラフト様ー‼︎」


『い、今までに無い、とんでもない大爆発が起こりましたああー‼︎ クラフト選手、もしもJPが尽きていたなら、跡形も残らないぞー‼︎』


 大量の煙が晴れたその場所に、一面血の海に横たわるクラフトが居た。


「かろうじて姿は保っているが、さすがに大ダメージを負ったようだな? それはつまり、完全に魔力が尽きたという事。さあ、トドメをさしてやろう」


『クラフト選手、大ピンチー‼︎ いや、それ以前にまだ生きているのかー⁉︎ 生きているなら、どうか立ってくれー‼︎ 頑張れクラフトー‼︎』


 実況者の我を忘れた声に呼応するように、客席からクラフトを応援する声が沸き起こる。


「クラフト様ー‼︎ 死なないでー‼︎」


「立って、クラフト様ー‼︎」


「立ってくれたら何でもしてあげるからー‼︎」


 そんな声援を嘲笑うように、タバコをくわえながら倒れたクラフトに近付くスチーム。


「フッ。立ても何も、例え立った所で魔力が尽きてんだから何もできねーよ。良かったなーあんた。最後にモテモテじゃねーか。来世ではイケメンに生まれるんだな。あばよ」


 スチームがくわえたタバコに火を付け、クラフトに投げる。

 しかし爆発が起こった瞬間、爆煙の中からいきなり飛び出して来るクラフト。


「何いっ⁉︎」


「俺様は充分イケメンだー‼︎」


 クラフトの渾身の右パンチが、完全に気を抜いていたスチームの左頬に炸裂する。


「ぐぶおわはあぁー‼︎」


 数メートル吹っ飛んだ後、数回地面を転がりながらようやく止まるスチーム。


「グウ……バ、バカな……」


 うつ伏せに倒れた状態から、何とか上半身を起こすスチーム。


「な、何故だ? あ、あんたの魔力は完全につ、尽きていた筈……」


「ああ、尽きていたさ。あの大爆発の時にな」


「じ、じゃあ何故最後の爆発に……た、耐えられたんだ?」


「声援だよ」


「声援?」


「確かにあの大爆発を防ぐ為に、残りのJPを全部使って防御した。だがそれでも大ダメージを負っちまった。俺様自身、もう完全に諦めてたんだがよ……俺様を応援する声で、僅かにJPが貯まった。それで一か八か絶対防御を使ってみたら何とか発動した。まあJPが足りなくて絶対防御、とまでは行かなかったがな」


「フッ……やっぱ、天才かよ……」


 そう言い残して、気を失うスチーム。


「違う。俺様は、イケメンの……天才、だ……」


 そう言いながら、後ろに倒れるクラフト。


『相討ちー‼︎ クラフト選手対スチーム選手の戦いは、壮絶な相討ちだー‼︎ い、いや……最後に立っていたのはクラフト選手ですから、これはクラフト選手の勝利と言っていいでしょう‼︎』


 ー クラフトVSスチーム ー

 クラフトの辛勝。





 




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[一言] 最初から敵のリロードのタイミングで絶対防御使いながら突っ込んだら勝てた説
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