第28話 密室で絶対にやってはいけない事
ノアVSメルクルディス。
『さあ、こちらは大本命! ノア選手対チーム水妖館の大将、メル選手の戦いが行われておりますが、先程からメル選手の見えない攻撃により、防戦一方のノア選手であります。なす術無くただ傷が増えて行くばかりのノア選手に、打開策はあるのかー⁉︎』
実況にグチるノア。
「そんなもんあったら、こっちが教えてほしいわい」
(どうじゃウル。奴の攻撃の正体は分かったか?)
『ホー、スマン。俺も目を凝らして見ているが分からん。ニーナの言う通り、確かに彼女の周りで微かに光が反射しているのは分かるんだがな』
(何かを投げていると言うなら、こうすれば分かるじゃろ)
《アイスウォール‼︎》
自身の周りは勿論足元や頭上も含め、完全に自分自身を氷で囲むノア。
『ああーとお‼︎ ノア選手、自分の周りを氷で完全に囲い込みましたー‼︎ これならば、全方位からの攻撃に対処出来そうです‼︎』
『ホー。確かにこれなら、直接的な攻撃であれば確実に何らかの影響はあるだろう。まあ、空間や時空を超えた攻撃、などと言うとんでもない物で無い限りはな』
(嫌な事を言うでない。あんな馬鹿な小娘にそこまでの力が有るとは到底思えんわい)
『ホー。だな』
(ああ、ひとつ貴様に言っておくぞ)
『ホ? 何だ?』
(今、余達は完全な密閉空間の中におるんじゃ……貴様、屁などこきおったら鳥ミンチにして魔物のエサにしてやるからの!)
『クワッ⁉︎ 俺がそんな非常識な事をする訳が無いだろう! いや、仮にこいたとしてもこのサイズなら大した影響は無い! 寧ろお前がこいた方が俺の命に関わるんだからな!』
(んなっ⁉︎ 花も恥らう乙女な余が、人前で屁などこく訳無いじゃろうが!)
『ホー⁉︎ お前、いつから身も心も乙女になったんだ⁉︎』
(言葉の綾じゃ! それぐらい分かれ、阿呆ドリめが!)
『クワアー‼︎ なにおおおー‼︎』
飛び上がってクチバシでノアを突こうとするウルに対し、手刀でウルをはたき落とそうとするノア。
『何だー⁉︎ ノア選手、戦闘そっちのけでフクロウと何やらケンカを始めましたー! 余裕なのか、それともバカなのかー⁉︎』
そんな様子を見ていたメルが、更に怒りだす。
「むうー‼︎ メルを無視すんなー‼︎」
その声に反応して身構える、ノアとウル。
『ホー! 来るぞ、ノア!』
(分かっとるわい!)
構えながら周りの氷の様子を見ているノアとウル。
その時、突如ノアの両腕から鮮血が飛び散る。
「何いっ⁉︎」
『ああーと、ノア選手またしてもダメージを受けました! しかし、ノア選手は全方位を氷で囲んで防御しているのに、メル選手はどうやって攻撃しているんだー⁉︎』
直ぐに周りの氷を確認するが、どこにも斬り裂かれたような跡は見られなかった。
(どうなっとるんじゃ⁉︎ 氷はどこにも傷ひとつ付いとらんぞ⁉︎ それなのに、何故攻撃が届くんじゃ⁉︎ まさか本当に空間跳躍、などと言うんじゃなかろうな⁉︎)
『ホー。彼女が高位の使い手ならば、有り得ない話では無いが……』
(む〜、あんなバカ娘がか? 有り得んじゃろ)
『ホー。悪いが俺もそう思う』
自分をジッと見つめて来るノアとウルに何かを察知したメルが、文句を言う。
「ああー! その目、今絶対メルの事バカにしたでしょ⁉︎ メル、そういうのは慣れてるから分かるんだからね!」
「慣れとるのか」
(しかしどうしたもんかのう? あ奴の能力の正体が分からん事には、迂闊に近付けんぞ?)
『ホー。俺も色々可能性を探っているんだがな。確信をもって言える程ではないからな』
そんな時、何かを思い付いたように、ポンと手の平を叩くノア。
(そうじゃ! いい策を思い付いたぞい!)
『ホォ? どんな策だ?』
「こうするんじゃ!」
そう言って、肩に乗っていたウルを掴み、自分の正面に腕を伸ばして構えるノア。
『ホ、ホア? これでいったいどうするつもりなんだ?』
(こうしておけば、奴の攻撃はまず先に貴様に当たるじゃろ? そのやられっぷりを見れば、どんな攻撃なのかが分かるという寸法じゃ)
「ホー、なるほどな。俺が先に斬り刻まれる事によって後方に居るお前が能力を見切るという事か。それならやってみる価値は、あるかー‼︎』
ノリツッコミをした後、再びノアとケンカを始めるウル。
「クワアアー‼︎」
『何だー⁉︎ ノア選手がまたフクロウとケンカをしております。ノア選手の行動から察するに、自分をおとりに使われると感じたフクロウが怒った、という感じでしょうか? それなら、怒るのは当然でしょう』
自分そっちのけでまたケンカを始めたノアとウルに怒るメル。
「んもうっ! またメルを無視して〜! 言っとくけど、フクロウを前に出したってメルの能力は防げないんだからね!」
「む⁉︎ そうなのか? ではお主の能力とは、いったいどういうものなんじゃ?」
「メルの能力は汗刃紐。メルが怒ったりして大量に出た汗を、紐状の刃にして敵を斬り裂く能力よ!」
「汗を刃にじゃと? そうか……だから殆ど目に映らんし、氷の壁は同じ水同士じゃから、すり抜けたという訳か?」
ノアのあまりに自然な質問に、あっさり能力をバラしてしまった事に慌てるメル。
「ああー‼︎ 何でメルの能力の事知ってるのよー⁉︎」
「いや、お主が今自分で喋ったんじゃろうが」
「あ、あなた! 精神操作系の能力者なの⁉︎」
「いや、単にお主が馬鹿なだけじゃ」




