新しき絆
「見知らぬ人ならぬ者との絆を断ち、その睦まじさを遠ざけるは、誰人が相手であれ難きことなり。」
「ご自身が、本当に正しいとお思いなのですか?」
ルーサーはその動きを途中でぴたりと止めた。
「……なんですって?」
「貴女は心から、自身のその言葉を信じておいでなのですか?」
その場にいた全員の視線が、一斉にウイタへと注がれた。
「ツヤが本当に危険を及ぼすと? あるいは、私たちが? 聞き覚えのない遠方の民族からやって来た、右も左も分からぬこの一行が、本当に貴女がたの脅威になるとお思いなのですか?」
誰もが驚愕に目を見張り、息をのんでその光景を注視していた。
「確かに、不審ではあるかもしれません。ですが……特に貴女のようなお方にとってみれば、あらゆる部外者が最初から不審人物なのではありませんか? 誰であれ、最初から危険な存在に見えているのではないですか?」
「……」
「あらかじめ哀れみ、自分よりも遥かに格下の存在だと見下している私たちが、本当に貴女に危害を加えられるとお考えなのですか?」
——。
「私たちがそれほど哀れな弱者であるならば、何の証拠もなく、ただ圧倒的な力に任せてツヤをこのような窮地に追い詰めることが、果たして理にかなっているでしょうか?」
ルーサーは両目を大きく見開き、言葉を失って固まっていた。何が起きたのか理解が追いつかない様子で、剣を握る手が微かに震えている。
「それが、家族と誇りを守る戦士としての貴女の矜持に叶う行いなのですか? それとも……貴女も、そして貴女のご兄弟がたも、元よりその程度の存在でいらっしゃったのですか?」
ルーサーは頭を強打されたかのような衝撃を受けていた。歯を食いしばる彼女の脳裏で、『それとも貴女も、そして貴女のご兄弟がたも、元よりその程度だったのですか?』という言葉が激しく渦巻き、彼女の存在理由そのもの、戦士としての真髄すらも痛烈に否定していた。
長い沈黙が、その場を支配した。
「黙りなさい……ッ! この……不快な女が……ッ!」
ルーサーはツヤの首元から素早く剣を引くと、激しい音を立てて鞘へと納めた。そして荒々しい足取りで扉へと向かい、酒場の店内へと消えていった。
ツヤは恐怖に怯えながら自らの首元を手で押さえ、ゆっくりと体を起こした。その瞬間、シンソが勢いよく飛びつき、ツヤの首にしがみついた。
「すごく……すごく怖かったよぉっ!」
ツヤは首元にしがみつくシンソの体を、優しく抱き返した。
「……大丈夫だ、俺なら無事だよ。俺も……すごく恐ろしかった。でも、もう大丈夫だから」
他の仲間たちもツヤの元へと駆け寄せた。ナツキがゆっくりとしゃがみ込み、ツヤの震える手を優しく包み込んだ。
「まったく……嫌なことばかり、全部ツヤのところに降ってくるんじゃないわよ」
ナツキは怒りを滲ませた眼差しでサラマを睨みつけた。
「一体どういうおつもりですか? 私たちがここに居ることが、それほどお気に召さないのですか?」
サラマは何も答えなかった。しばらくの間、気まずそうに彼らをじっと見つめていたが、やがて背を向けて店内へと入っていった。
「これから……どういたしましょう」
「あちらと取り乱さずに話し合う必要がありますわね。朝食の席は、良い機会になるはずです」
ツヤはシンソを抱えたまま、ゆっくりと立ち上がった。
時間が巻き戻らないのを見て、ツヤはこれが単なるループ(可能性)の光景ではなく、やり直しのきかない現実であることを悟った。もしあの土壇場でウイタが声を上げていなければ、自分の命は間違いなく絶たれていただろう。
かつてのループで目撃した彼女たちの疑念が、そのまま現実の脅威として襲いかかってきた事実に、ツヤは背筋が凍るような恐怖を感じていた。このような不意打ち同然の追及に対処する準備など、彼には到底できていなかったのだ。
ウイタの言葉は、まさに天地を揺るがすほどの破壊力を秘めていた。絶対的な自信に満ち溢れていたあの女戦士の動きを、完璧に封じ込めてみせたのだから。しかも、その相手は他でもない、あの冷酷なルーサーなのだ。
巧妙に練り上げられ、相手のあらゆる思考と感情の急所を的確に射抜いたウイタの弁舌は、決定していたはずの死の運命を根底から書き換えてしまった。
ツヤが唯一確信できたのは、自分が強い衝撃を受けたということだった。ルーサー、そしてレツカ一族が見せていた完璧な演技の恐ろしさにも、そして何より——すぐ隣に立つ少女の、圧倒的な洞察力と言葉の力にも。




