英雄と冒険者の酒場 2
短い探検旅行
ツヤは顔を上げ、これから向かう建物を見上げた。
「……じゃ、行くとしようか」
一行が『一行の手続きと装備の館』へと向かう中、ニーチェとエラはメンバーたちが食事を取っているエリアで周囲を観察していた。
多種多様な料理屋や酒場、あるいはただの休憩所が立ち並ぶこの建物には、広い中庭も備わっていた。登録を済ませた獣人、人間、そして異国の装束に身を包んだ人々が腰を下ろし、食事を楽しんだり、大声で歓談しながら互いの時間を満喫していた。
「へえ、見てよ。思ってたよりずっと広いじゃない」
「同感だよ。僕も驚いた」
二人は館内を歩き回りながら会話を続けた。
「ねえエラ君、新米冒険者が最初にやるべきことって何だと思う?」
「うーん……分からないな、ニーチェ君。一体何だい?」
「本当に分からないの? 前の世界の読み物や物語から学ばなかった?」
「ううん、だって僕はそういうのに注目してなかったからね。それに、物語の主人公たちの状況と僕たちの状況は違うでしょ」
「まあね。でも教えてあげるよ。一番重要な鉄則は、たくさんの仲間や同盟を作ることさ。背中を預けられる相手や、いつでも頼れる相手を見つければ、絶対に挫けることはないんだから」
エラは少し悪戯っぽい笑みを浮かべて彼女を見た。
「へえ、大したものじゃないか。僕の可愛いお友達、ニーチェ君は随分と賢い策を考えたんだね」
ニーチェは誇らしげに胸を張り、くすくすと笑った。
「当然でしょ! 私を誰だと思ってるのさ!」
「はいはい……調子に乗りすぎないでよ、ニーチェお嬢様。どうだい?」
「分かったわよ、もう……」
◇
一方、ウイタは三つの建物に囲まれた中庭を一人で散策していた。自ら観察を行うウイタは、これが後々どれほど自分たちの役に立つか熟知していた。かつてツヤが学校でやっていたように、彼女から学んだこの手法を、この新世界で生きる人々に対して応用できるはずだ。これまでのところ、ルーサーやその家族に対しても、幼馴染たちに対しても、親切で礼儀正しい人物という役割を見事に演じ切っていた。
しかし、彼女に理解できないのは、なぜ誰も前の生活を気にかけないのかということだった。ウイタは母を、そしてあの頃の暮らしを深く恋しく思っていた。今この瞬間も、両親がどれほどの恐怖に怯えているか想像に難くない。特に父親にとって、それは筆舌に尽くし難い苦痛であるはずだ。ウイタは彼にとって唯一無二の愛娘であり、生涯を自分に捧げてくれた父に対して、強い罪悪感を抱いていた。だが今重要なのは、どう立ち回るかだ。
他の者たちが未だにこれを遊びのように捉えているのは、ウイタにとっても都合が良かった。それは、彼らをより容易に誘導できることを意味する。彼らがこの世界について何も学ばないうちに、ウイタがより早く知識を得られれば、その導きは一層簡単になるだろう。仲間たちを守り、そして必ずや元の家へと帰らなければならない。
ウイタは静かな足取りで、ルーサーが入っていった建物へと向かった。
◇
その頃、シンソウ、ナツキ、そして持ち直したツヤの三人は、『一行の手続きと装備の館』に展示された、多種多様な仕立ての衣装や制服を眺めていた。そこには数々の弓、剣、紋章、そして印章が並んでいた。
「すげえ……なんて広い場所なんだ」
「わあ、すごい! たくさんの物があるね」
「失礼、若き冒険者諸君。何か手伝えることはあるかな?」
三人が背後からの声に振り返ると、そこには彼らに近づいてくる一人の老人の姿があった。
「わしはイエト・ビエルノ。勇者や冒険者一行の手続き、ならびに装備の管理を担当しておる。ここを任されている者じゃよ。何か困りごとかな? 見かけない顔だが」
「あ、はい! 僕はナツキです。こっちはシンソウとツヤ」
「お呼びいただき光栄じゃ。して、どのようなご用件かな?」
「ルーサーさんと一緒に登録をしに来たんです。僕たち、8人グループで」
「なるほど、理解したぞ。だが、ここからは登録手続きはできないのじゃが、ご存知かな?」
「はい。ルーサーさんが登録のために『ヌツクキ』という人を探しに行きました」
「ふむ、そういうことか。ならば、ごゆっくり見学していくとよい」
老人は温かい微笑みを残し、三人を開放した。だがその直後、ウイタがキメケノ、キメント、ニーチェ、エラを伴って中へと入ってきた。
「みんな、ルーサーさんが合流してほしいって!」
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