儀式のメンバー 2
物事にそこまでこだわる人の気持ちが理解できない。あんなにたくさんのルールの中でどうやって生きていけるんだろう?
―簡単な質問、簡単な答え。だってそれが彼らの信念だから。
―時々、あなたは私をイライラさせる。
ツヤには依然として理解が追いついていなかった。一体、何が起きているというのか。これは一種の幻覚か何かなのだろうか。あるいは、何か別の狂気なのか。それ以外の理由など、あるはずがなかった。到底、信じられる状況ではなかった。
???1:「おい見ろよ、ディル。あの面、どんだけ怯えてやがるんだ」
ディル:「へへっ、違いねえな。見てみろよ、あの顔を」
ふたりは正気を疑うような、耳障りで甲高い高笑いを上げ始めた。ツヤは震える息を小さく吐き出し、問いただした。
ツヤ:「お前たちは誰だ……? 一体何がどうなっているんだ……?」
ディル:「イヤー、耳の奴に聞いてるぜ」
イヤー:「あぁ、そうかい?」
ディル:「答えてやらなきゃなぁ」
イヤー:「俺はイヤー(耳)、こいつはディル(舌)だ。俺たちは『奉納者』だ。そして貴様は悪魔の落とし子だ、青髪のガキ」
ツヤ:「……な?」
イヤー:「ギャハハハハ! 『な?』だとよ! 聞いたか? 『な?』だってよ!」
イヤーとディルは、再び腹を抱えて狂ったように笑い転げた。ツヤは、身長が低く痩せこけ、髪も皮膚も乾ききった、人間ともバケモノともつかないふたりの男を凝視した。恐怖と混乱で頭がどうにかなりそうだったが、胸の奥底には、わずかにその恐怖を和らげる別の感情が存在していた。
——これもまた、ただの「確率(可能性)」の出来事に過ぎないのではないか。
おそらくこれも、以前彼が経験したあの悲惨な出来事と同じなのだ。少しばかりの苦痛を味わった後で、これが単なる悪夢のような確率の残像に過ぎないと気づくはずだ。ツヤはこんな苦痛すら望んではいなかったが、これが直面している過酷な「現実」であるよりは、ずっとマシだと思おうとしていた。
ディルは強引に笑いを収めると、吐き捨てるように言った。
ディル:「お前は悪魔の落とし子だ、クソガキ。その漂う不快な匂いも、そのふざけた髪色もな……吐き気がしてきやがる」
イヤー:「聖なるエリス様よ! 今すぐぶち殺しちまうか?」
ディル:「いや、ダメだ。頭領の言ったことを忘れたのか? まずはこのガキを浄化しなきゃならん」
ツヤ:「誰なんだとお前たちに聞いている! 『奉納者』とは何だ!? それに、エリスとは誰のことだ!?」
イヤー:「この愚か者が! その汚ねえ口で軽々しく女神エリス様のお名前を口にするんじゃねえ!」
ディル:「この罪深き女めが!」
ツヤ:「……女神……?」
ディル:「マジかよ、イヤー。こいつマジで何も知らねえのか?」
イヤー:「ふたりの女神の使徒を知らねえのか? エリスとユタ、そして彼女たちが仕える女神エリスとユカのことをよぉ?」
ツヤ:「し、知らない……」
ディル:「おいおいイヤー、このバカ、本当に何も知らねえぞ」
イヤー:「構うかよ! どうせこれから浄化するんだ!」
ディルとイヤーは、錆びついているものの凶悪に研ぎ澄まされた、歪んだ形状の短剣を抜き放った。
イヤー:「とりあえずこいつはここに置いておくぞ。追跡していたあの女を先に痛めつけなきゃならんからな!」
ディル:「わかってる、わかってるよ!」
ふたりの男は、湿り気のない不快な高笑いを残し、ツヤを冷たい床に放置して立ち去った。しばらくすると、重重しい扉が激しく閉まる音が響き渡る。ツヤはそこに閉じ込められたのだ。
ツヤは猛烈な不安と激動する鼓動に苛まれながら、必死に思考を巡らせていた。心臓の拍動があまりに速く、息苦しさに胸が詰まる。だが、それでも「これはただの確率に過ぎない」という微かな希望に縋っていたため、かろうじて理性を保っていた。
ツヤは立ち上がり、周囲を観察しようと試みた。しかし、そこにあったのは深い暗闇と、どこかの隙間からかすかに差し込む街頭の太陽光だけだった。その光が、ツヤの閉じ込められている空間を薄っすらと浮かび上がらせている。おそらくどこかの建物の地下室だろうが、異様に広大な空間のようだった。
しばらくすると、再び重い衝撃音が響き、見通せぬ闇の奥から足音が近づいてきた。ディルとイヤーが下品な笑い声を上げながら、何かを軽々と引きずってくる。彼らの手元には、縄で頑丈に縛られ、必死に抵抗する誰かの姿があった。ふたりはその人物を、ツヤのすぐ隣の冷たい床へと容赦なく投げ捨てた。
ツヤ:「……誰だ、その人は?」
イヤー:「誰だと? お前と同じ罪人だよ。だがこいつはもっとタチが悪い……この若さで『通姦』の罪を犯していやがる」
ツヤは目を丸くし、隣に転がされた少女を見つめた。緑色の髪に青い瞳を持った、十四、五歳ほどに見える少女だった。
ツヤ:「それが……彼女を罪人にする理由だとでもいうのか!? それに、どうしてそんなことが分かるんだ!?」
イヤー:「それだけじゃねえ。お前と同じような不吉な色付きの髪をしてやがるからな。『通姦』の上に『悪魔の落とし子』だ。すぐに浄化してやらねえとな」
ツヤは猫背のふたりの男を鋭く睨みつけ、歯を食いしばった。
ツヤ:「俺は罪人なんかじゃない! 一度だって罪など犯したことはない!」
ディル:「ハッ、お前のその肌、全然健康そうに見えねえな。普段から相当呪いを吐き散らしてやがるんだろ?」
イヤー:「ハハッ、うめえこと言うじゃねえか!」
イヤーとディルは互いの肩を叩き合いながら、腹を抱えて笑い転げた。
緑髪の少女は、手首と足首を縛る縄から抜け出そうと、必死に身体を身悶えさせていた。
ツヤが少女に向かって頷こうとした、まさにその瞬間だった——少女の表情が一変した。
あごの下から、一筋の刃が深々と突き立てられていた。
少女の目が大きく見開かれる。だが、それも一瞬のことだった。ディルは狂ったような笑い声を上げ続けながら少女を引き寄せ、胸元へと何度も何度も短剣を叩き込んだ。ツヤは言葉を失い、あまりの恐怖と惨状にただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
ディル:「よし、終わりだ。使徒エリス様が、お前を女神エリス様のもとへ送り届けるにあたり、慈悲を与え許してくださいますように。女神がお前を赦しますように……」
少女は激しく痙攣した後、完全に息絶えた。
イヤー:「いい仕事だったぜ、ディル」
ディル:「次はあの青髪のガキの番だ」
イヤー:「待て待て、焦るなよイヤー。この罪人は、自分は罪人じゃないと言い張っていたろ?」
ディル:「ああ。だがそれがどうした?」
イヤー:「なら、証明させてみようじゃねえか。おいガキ、少し待ってろ」
イヤーは暗闇の奥へと消えていった。そして間もなく、ツヤの視界に、イヤーの手の中でひっきりなしに蠢く、白く毛羽立ったヒル(蛭)のような不気味な生物が映し出された。
イヤーは歩み寄ると、息絶えた少女の腹部をナイフで深く切り裂いた。そして、その切り傷の中へヒルを押し込んだ。
ヒルは傷口から体内へと潜り込み、一瞬、静寂が訪れた。
——次の瞬間だった。
少女の死体が、突如として自律的に激しく痙攣し始めた。間もなく、少女の耳、鼻の穴、両目、口、そして股間から、無数の白いヒルが溢れ出すように蠢き出てきたのだ。体内で凄まじい繁殖を遂げ、内側から肉体を喰らい尽くしたのだ。
ツヤは瞬時に顔を背けた。凄絶な悪夢に息を呑み、込み上げる強烈な嘔吐感を必死で押し殺す。
イヤー:「これで、こいつがこの世に残した罪の痕跡は、すべて白ヒルによって浄化された。我が女神エリス様、どうかこの者を赦し給え!」
ディル:「我が女神エリス様、どうかこの者を赦し給え!」
ツヤは打つ手もなく、恐怖のあまり完全に氷ついていた。
イヤー:「さて……次はお前の番だ」
イヤーは歩み寄ると、少女の死体から指を一本、刃物で叩き切った。
ディル:「自分が罪人じゃないと証明したいなら、その指を喰ってみろ」
ツヤ:「……な……!?」
イヤー:「言われた通りに聞こえただろ、青髪のガキ! これを喰え!」
ツヤ:「嫌だ……頼むから……やめてくれ……!」
イヤーは下品な高笑いを上げ、ツヤに向かってじりじりと距離を詰めてきた。
イヤー:「どうしたクソガキ? 俺たちに潔白を証明したいんじゃなかったのか、あぁ!?」
ツヤは必死で後ずさろうとしたが、無駄だった。イヤーはツヤの胸の上に乗り上げると、空いた手でツヤの顎を力任せにつかみ、強制的に顔を上げさせた。
イヤー:「でかい口を開けな、ガキ……!」
ツヤ:「嫌だ! 離れろ、触るな!」
イヤー:「暴れんじゃねえよ……このふざけた口を開けやがれ……!」
その時、一瞬の静寂が空間を包んだ。
ディル:「……おいイヤー、今……何て言ったんだ?」
イヤー:「嘘だろ、ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ! クソッ! 聖なる口で呪い(暴言)を吐いちまった……!! ああああああああ!!」
イヤーは発狂したかのように取り乱すと、持っていた錆びた短剣で自らの耳を躊躇なく切り落とした。背後ではディルが、狂ったように赦しを乞う祈りを唱え始めている。
イヤー:「エリス様! 偉大なる女神様! どうかお怒りを鎮め給え! 愚かな僕が過ちを犯しました! ごめんなさい、ごめんなさい! 代償としてこの耳を切り落としました! どうか、どうかお許しを……!」
ツヤは、さらに苛烈を極める惨劇を、恐怖に目を見開いて見つめることしかできなかった。するとイヤーは、血走った恐ろしい眼光で突如ツヤを睨みつけ、荒い鼻息を漏らした。
イヤー:「このクソガキが……! お前のせいで、聖なる母上が俺を嫌いになっちまうかもしれねえだろ!!」
イヤーはツヤの口を力任せにこじ開けると、切断された少女の指を無理やり口内へ突っ込み、狂暴な力で顎を閉じさせた。
イヤー:「噛め!!」
ツヤは涙を流しながら、惨めにイヤーを見つめ返した。
イヤー:「噛めと言っているだろ、このクソガキが!!」
イヤーの凄まじい平手打ちが、ツヤの頬を激しく殴りつけた。
ツヤが一度だけ歯を立てると、強烈な吐き気が喉元まで押し寄せてきた。あまりの気持ち悪さに、怒りと嫌悪感で全身が激しく震える。極限まで緊張した肉体が、徐々に痺れていく感覚があった。
——だが、まさにその次の瞬間だった。
ツヤの意識は、かつて目にしたことのある、清廉で澄み渡る水のような空間へと引き戻されていた。完全に静寂と平穏に満ちたその場所で、彼は結晶のような模様が浮かぶ真っ白な床の上に座り込んでいた。一体どうやって、ここへ辿り着いたのだろうか。
現実世界では、イヤーがツヤに無理やり指を噛み砕かせようとしていたその瞬間、彼の腕に強烈な力で手首を掴まれる感触があった。
フィリップ:「どけよクソ野郎、俺の上に乗っかってんじゃねえ!」
イヤーは弾かれたように後方へと吹き飛んだ。困惑した眼差しで前方に視線をやると、そこには黒いエネルギーの奔流を纏い、グチュグチュと骨の鳴る不気味な音と共に、髪色と顔つきを一変させた「ツヤ」の姿があった。
降臨したのは、フィリップ(Philip)だった。その頭上には、いつものように小さな王冠がふわふわと漂っている。
フィリップはゆっくりと立ち上がった。
フィリップ:「あーあ……すげえ深い怒りの感情が、俺をここへ呼び寄せやがった。このガキに一体何があったってんだ?」
フィリップは周囲を見回した。無残な少女の死体と、手に短剣を握りしめたふたりの「奉納者」が目に入る。
フィリップ:「あぁ……なるほどね。つまりお前たちか、このヘタレどもは?」
ディル:「こ、これは……『本質』……!?」
イヤー:「それも、始まりと終わりを司る『始祖にして原初』の本質……!?」
フィリップ:「へっ、冗談だろ?(笑) そんなこと俺だって知ってるっつーの、バカどもが」
イヤー:「バカな……どうしてこんな——」
フィリップ:「そんなことはどうでもいいが、お前ら、随分と好き勝手やってくれたみたいだな? このガキから、尋常じゃねえ恐怖と絶望を感じるぞ。以前のあの『豚』の件よりもずっと重えじゃねえか」
ディル:「俺たちは——」
フィリップ:「お前らはもう喋らなくていいぞ、宗教野郎。だってさ、あと数秒後にはその口を口走る能力ごと失うんだからな」
フィリップは凄まじい速度でイヤーへと肉迫した。その身体を強固に掴み上げると、腕を一気に引き千切った。悲鳴を上げる間もなくその首を力任せに叩き折って地面へ叩きつけると、そのまま頭部を容赦なく踏みつぶした。
フィリップ:「へえ……また出力が上がってやがるな。このガキがどうやってんのか知らんが、いい仕事してんじゃねえか」
ディル:「この……悪魔め……っ!」
ディルは狂ったように短剣をフィリップに向かって振り回したが、その刃はフィリップの身すくめる距離にすら届かない。
フィリップ:「哀れすぎて欠伸が出るぜ」
ディルが最後のあがきとして繰り出した一撃だったが、フィリップの肩付近から突如として出現した数本の「腕」が彼の首を強固に絞め上げ、骨を砕いて床へと投げ捨てた。
フィリップ:「ふぅ、いいウォーミングアップになったぜ。……で、ここは一体どこなんだ?」
やあ、こんにちは!作者です。皆さんお元気でお過ごしでしょうか。さて、新しい章をお届けします!どうぞお楽しみください。またね!




