儀式のメンバー 1
神の意図する生き方をしない者は、より多くの災難に見舞われると言われています。
まあ、私たちにも当てはまるのかもしれませんね。
サラマは後方で見守っていた一行のもとへ歩み寄った。
サラマ:「あの……今は二人にしておいてあげた方がいいと思う。準備をして。私があくせつきゅう(冒険者酒場)まで案内するから。ここはこれから、かなり慌ただしくなると思うし」
一行とサラマが奥へ移動する間も、キリシマの哭声は絶え間なく響き渡っていた。建物の中に入った彼らは、以前使用していた剣などを手際よくまとめていく。
サラマ:「みんな、準備はいい?」
一行が無言でうなずいたその時、裏庭の扉からふいにルーサーが入ってきた。何やら不機嫌そうに独りごちている。
ルーサー:「ったく……間違いなく葬式になるわね」
ふと、ルーサーは一行とサラマの姿に気づいた。
ルーサー:「ハ? 何やってるのよ、サラマ」
サラマ:「姉さんが辛そうに見えたから……それに、これから葬式の準備で色々と大変でしょう? 私がみんなを連れて行った方がいいと思って」
ルーサーは深く息を吐き、一度目を閉じてから再び開いた。
ルーサー:「いいえ。自分の身内の葬儀だってことは分かっているけれど、知っての通り、私は昔からお葬式ってやつが大嫌いみなのよ」
長らく姿を見せていなかったキクロが、突如として上の階から下りてくると、好奇の視線をこちらへ向けてきた。
ルーサー:「あ、なによガキ。また屋根裏にでも潜んでたわけ?」
キクロはしゃぶっていたおしゃぶりを外すと、ルーサーに向かってべーっと舌を出し、そのまま裏庭へと駆け去っていった。
ルーサー:「それに、おじいちゃんが来たらどうなるか分かってるでしょう」
サラマ:「……分かったわ。確かに家にいないのが一番正解かもね。でも、あんまり長居しないでよ? 嫌でも、少しは参列しなきゃいけないんだから」
ルーサー:「分かってるわよ。正論ばかり言って私を苛立たせないで」
ルーサーは一行に視線を向けると、出口に向かって歩き始めた。
ルーサー:「行くわよ。昼の依頼が始まる前にね」
ルーサーと八人の一行は酒場を後にし、オユコの深部へと足を進めた。行き交う馬車、通りを往来する異国情緒漂う人々、ひしめき合う露店の商人たち。そして以前目にしたような、二〜三階建ての建物がどこまでも連なっている。
ウイタ:「あの、ルーサーさん。ラナタというのはどこにあるのですか?」
ルーサー:「ハ? 急に何の話よ」
ウイタは少し恐縮しながら答えた。
ウイタ:「ええと……手紙に書いてあったものですから」
ルーサー:「ラナタはイオトゥノ、スクト、クゼツァの都市を包括する地域の名よ。これから向かう酒場は、それぞれの都市でその地域を代表する拠点のひとつなの」
ニツェ:「じゃあ、強い人たちもたくさんいるのね」
ルーサー:「実にさまざまな奴がいるわよ。剣聖に魔導士、支援のスペシャリスト、そして何より『本質』の使い手。彼らがいつだって最強よ。まあ、数は滅多にいないけれどね」
エラ:「レツカさんは、イオトゥノやイタニリア全体には『本質』の使い手が大勢いるとおっしゃっていましたが……」
ルーサー:「ええ、いるわよ。けれど彼らはそこらの有象無象じゃないわ。大抵は皇帝と繋がっている『英雄評議会』か、多くの国が加盟する『オーバーロード同盟』のどちらかに所属している。国家にとって『本質』の使い手をどれだけ抱えているかが、そのまま圧倒的なアドバンテージになるのだから」
キメケノ:「ふん、その『本質』だかなんだか知らねえが、そんなに大勢持ってるなら手に入れるのも簡単なんじゃねえの?」
ルーサーは呆れたように目を丸くした。
ルーサー:「せいぜいそう思い上がっているといいわ、デブ。本質を宿すに相応しいと認められるには、並外れた精神的耐久力と、何より鋼のような強靭な自我が必要なのよ。誰にでも手に入るような代物じゃないの」
キメケノ:「ッ……大袈裟だなー。……って待て、今誰のことデブって言った!? 俺はガッシリ体型なだけだ! デブじゃねえ!」
ルーサー:「夜ぐっすり眠るための気休めにしては上出来ね」
キメケノ:「このアマ……ッ!」
ニツェがそのやり取りにクスクスと笑い声を漏らす一方、残りのメンバーは興味深そうに周囲の街並みを観察していた。奥へ進むにつれ、のどかな農村の風景は姿を消し、次第に活気あふれる都市の様相を呈して混雑を増していく。買い物を楽しむ人々や、時折、トカゲ男が引く馬車なども行き交っていた。
ツヤ:「へえ……」
ナツキ:「こんなに賑やかだとは思わなかったな」
ニツェ:「本当よね、同感だわ」
ルーサー:「ええ、だから私から離れないでちょうだい。オユコの中心部に近づいているけれど、街が発展しているからといって治安が良いとは限らないわ。ここはもっと質が悪いんだから」
ウイタ:「分かりました。ですが、目的地まではあとどれくらいでしょうか?」
ルーサー:「もうすぐ着くわ。着いたらまずヌツクキさんと面談して、それから……運が良ければトゥーさんがいるはずよ。あの人があなたたちに仕事を斡旋してくれるわ。できれば私のパーティに入ってくれればいいのだけれど」
ツヤ:「普段はパーティを組んでないのか?」
ルーサー:「ええ、私は単独行動が好きだから」
ルーサー:「もし私のところに入れなかったら、自分たちでパーティを組んで鍛練に励みなさい。色々な依頼を受けて、人と出会い、何かしらの技術を身につけること。特に基礎魔法と戦闘技術ね。いつまでもそうやってベタベタと固まって生きていけると思わないことよ」
ウイタ:「おっしゃる通りです。全力を尽くします」
シンソ:「そして、その第一歩がここから始まるんだね」
ツヤ:「ああ――」
その瞬間、一体何が起きたのだろうか。
つい先ほどまで目標について語り合っていたはずなのに、気がつくとツヤは、二人の見知らぬ者に担ぎ上げられ、凄まじい speed で疾走する景色を目にしていた。二人は手際よくツヤの体を縛り上げ、そのまま遠ざかっていく。
どのようにして連れ去られたのかすら、脳が追いつかない。わずか三十秒前まで仲間たちの隣にいたはずなのだ。今、何が起きている? ツヤはしばらくの間、強いショックで茫然自失となっていた。
二人はツヤを担いだまま、街の入り組んだ路地裏へと凄まじい速さで飛び込んでいく。裏通りに入ると、そこにあった古い建物の地下室へと押し入り、ツヤを容赦なく床へ投げつけた。
???1:「ヒハハハハ! ついにやったぞ! 長い追跡だったぜ!」
???2は卑しげに舌を突き出した。
???2:「アァー、最高だぜ。だが、この極上品のためなら苦労した甲斐があったってもんだろ? なぁ?」




