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郵便

誰かが亡くなった時、最も辛い思いをするのは母親だ。

ウイタ:「では……そろそろ朝食の準備が整う頃合いでしょうか」


ツヤ:「ああ、そうだな」


場に、ピンと張り詰めたような重苦しい沈黙が落ちた。誰もが席に着いたまま、ただじっとテーブルの一点を見つめている。会話の糸口すら掴めず、言葉を発する者はいなかった。ツヤは必死に心を鎮めようと意識を集中させた。こんな風に取り乱したところで、誰の助けにもなりはしないことは百も承知だった。強くあらねばならない。ここで最もパニックに陥ってはならないのは、自分なのだから。


ほどなくして、キリシマ、ツクモ、サラマ、そしてルーサーが運んでくる皿によって朝食が配膳された。先ほど回収したたまごが使われているのだろう、鮮やかな黄身が際立つ巨大な卵料理が四つの大皿に盛られ、その脇には彩り豊かな付け合わせと香ばしく焼き上げられた干し肉が添えられている。実に食欲をそそる美味しそうな光景だった。


シンソ:「うわあ……」


ニツェ:「あんたも驚いてるわね」


エラ:「ええ、冷めないうちにいただきましょう」


全員がそれぞれの皿へ、手際よく料理を取り分けていった。風味豊かなソースと付け合わせによってさらに引き立てられた料理は、ひとくち運ぶごとに腹を満たし、その絶品な味わいに自ずと笑みがこぼれそうになる。


ツクモ:「あなた、お父様を呼んできてちょうだい」


サラマ:「はーい!」


ルーサー、ツクモ、キリシマがそれぞれの席に着く中、レツカがまだ大あくびを噛み殺しながら体を伸ばし、怠そうにやって来て腰を下ろした。サラマはその背後から、小さくため息をつきながら続いて入ってきた。


ツクモ:「それじゃあ、皆さん召し上がれ――」


その瞬間、静寂を切り裂くように、荒々しく扉を叩く音が響き渡った。


キリシマ:「あらあら……驚かないでね、みんな。きっと郵便配達員さんよ。毎週このくらいの時間に来るの」


ツクモ:「でも、届いていた手紙はもう読んだはずでは……?」


レツカは料理に手を伸ばしながら、淡々と言い添えた。


レツカ:「どうせ子供たちの誰かからだろう」


キリシマは立ち上がり、階段を下りて酒場の扉を開けた。


郵便配達員:「ここはレツカ・レツカさんのお宅でお間違いないでしょうか?」


キリシマ:「ええ、私が妻ですけれど」


配達員は鞄の中をガサゴソと探った。


郵便配達員:「確認できました。こちらお届物です。では、失礼します」


キリシマは手紙を受け取り、戸を閉めた。表面を不審そうに見つめながら、再び上の階へと戻ってくる。


キリシマ:「手紙が届いたわ」


レツカ:「座って読みなさい」


キリシマが封を切る間、若者たちは雑談をやめ、その視線を一斉に家族へと向けた。


キリシマ:「『イオトゥノ市・ラナタ地区冒険者および英雄ギルド酒場より。レツカ・レツカ様、ならびにキリシマ・レツカ様。このような形で報せをお送りすることとなり、大変遺憾に存じます。お二人がオユコにお住まいとは存じ上げず、何卒ご容赦ください。大変申し上げにくいことですが、ご子息であるハラシマ、ケツカのご両名が、任務中にカルト教団の襲撃に遭い、殉職いたしました。当酒場といたしましては、事前の接触を控え、遺体をそのままご実家へと搬送いたします。どうかこの報せを冷静にお受け止めいただけますよう、お願い申し上げます。敬具。酒場支配人:ヌツクキ・ビエルノ』」


食卓全体が、冷や水を浴びせられたかのような絶句に包まれた。キリシマの吐息が激しく震え、その瞳にはみるみるうちに涙が溢れていく。ツクモは咄嗟に口元を手で覆い、信じられないという表情でレツカを見つめた。レツカは動かしていた手を止め、ただ無表情に手元の皿を見つめつづけている。ルーサーは信じがたい事態に目を限界まで見開き、呆然と母親の姿を見つめていた。


キリシマは立ち上がろうとしたが、わずか一歩を踏み出したところで膝から崩れ落ちた。ツクモとルーサーが慌てて駆け寄る。ツクモがその体を強く抱きしめると、キリシマは堰を切ったように激しく泣き崩れた。


キリシマ:「嘘よ……こんなの現実じゃないわ……!」


キリシマ:「なんで! なんでこんなことが起きるの!? あの子たちは……あの子たちは強い優秀な戦士だったのよ! どうして死ななきゃならなかったのよ!」


ツクモ:「落ち着いて……お願いだから落ち着いて……」


キリシマ:「どうして行かせたりしたのかしら! ルーサーみたいに私のそばに置いておけばよかった! 息子をふたりとも失うなんて……!」


ツクモは彼女をより強く抱きしめた。


ルーサー:「お母さん……」


キリシマ:「どうして……なんで……」


レツカはようやく重い腰を上げると、目元に溜まった涙をそっと拭い、無言のままその場を後にした。


ツクモ:「ねえ、みんな……手を貸してもらえるかしら?」


シンソ:「あ、はい! もちろんです」


シンソ、ツクモ、ルーサーの三人は、泣き叫ぶキリシマを床から抱え上げ、寝室へと運んでゆっくりとベッドに横たえた。


我が子を失ったあまりにも深い喪失感に打ちひしがれるキリシマを前に、一行はかける言葉も見つからず立ち尽くすしかなかった。これは余人には立ち入れぬ家族の深い悲劇であり、自分たちのような余計 established 者が軽々しく口を挟むべきではないと悟っていたからだ。


ルーサー:「父さんはどこだ?」


ウイタ:「分かりません……ですが、家を出て行かれたようです」


ルーサー:「……遺体を引き取りに行ったんだな」


それからしばらくして、外から荒々しい馬の蹄の音が響き、ほどなくして激しく扉が叩かれた。ルーサーとツクモが下へ下り、扉を開ける。


レツカ:「儀式を始める前に、子供たちの顔を見ておきなさい。裏庭に来るんだ」


裏庭には、二つの無機質な wooden カンが静かに佇んでいた。ツクモはすぐにキリシマへ報せに行った。


キリシマは振り振りとした足取りで駆けつけ、その棺を目にした瞬間、より一層激しく泣き叫んだ。


キリシマ:「あの子たちに会わせて! 棺の鍵を開けなさいよ!」


レツカ:「お前……分かっているだろう、それはできない」


キリシマ:「開けなさいと言っているでしょう!」


レツカ:「あの姿をお前に見せるわけにはいかないんだ! 俺が見た、父親である俺がこの目で見て、十分に抱きしめてやったんだ! お前にあれを見せたら、俺は良い夫ではいられなくなる! 頼むから……」


キリシマは歯を喰いしばり、悔しさに体を震わせながらも、二つの棺に取りすがり、むせび泣き続けた。ルーサーはそんな母親の隣にぴったりと寄り添い、溢れ出そうになる涙を必死にこらえていた。

こんにちは!作者です。素敵な一日をお過ごしでしょうか?新しい章が公開されましたので、気に入っていただけると嬉しいです!また近いうちにお会いしましょう!

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