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地図と宴

時には、珍しい食べ物が素晴らしい味と体験をもたらしてくれることがあります。そして、友達と一緒なら、楽しさはさらに増します!

ヒラマが豪快に笑い声を上げると、無表情を貫くキメントを除く全員の顔に、自然と笑みがこぼれた。

それからほどなくして、厨房から二つの巨大な大皿が運ばれてきた。皿の上には、皮を剥がれて香ばしく揚げられ、熱々のバターと濃厚なトマトソースがたっぷりと回しかけられた巨大な蜘蛛の脚が、それぞれ八本ずつ放射状に鎮座していた。


「料理の準備ができたわよ、みんな」

ツクモが温かい声をかける。


「キリシマ、もう一つの皿は子供たちの席の方へ置いてもらえるかしら?」

「ええ、任せて」


キリシマが若者たちの座るテーブル端へと皿を運ぶと、ツクモはもう一方の皿を大人たち——レツカやヒラマの前に手際よく並べた。


「それじゃ、私たちは小鉢と副菜を持ってくるわね」


ツクモとキリシマが再び厨房へ戻っていくと、一行は強い興味と隠しきれない空腹感が入り混じった視線を、香ばしく揚がった白い肉へと向けた。鼻腔をくすぐる芳醇な香りは、想像以上に食欲を強烈にそそるものだった。


自信満々に微笑むサラマの横で、ツヤはその肉の質感をじっと冷静に観察していた。ニッツェとシンソは今にも飛びつきそうな勢いで身を乗り出しており、ウイタは箸を使っておそるおそる脚の表面を突いている。エラはウイタと視線を交わし、それが本当に安全な食べ物なのかどうかを慎重に確かめようとしていた。


その様子を見て、家長であるレツカが手にした箸を彼らに向け、呆れたように声を上げた。


「何をそう遠巻きに見てやがる。まるで毒物でも見るような目つきをしやがって」


「あ、いや……すみません。ただ、私(わたし)たちの郷里では、あまりこういったものを食べる習慣がなかったもので」

ウイタが丁寧な口調で、苦笑いしながら弁明する。


「俺は食うぜ! 絶対美味いって!」

ニッツェが即座に前のめりになった。


「少しは落ち着いてくださいな……」

ナツキが呆れ顔で、たしなめるように言う。


そこへツクモとキリシマが戻ってきた。手元には多種多様な調味料やソースが添えられている。追加のトマトソースが入った小さな鉢に、ピリリと辛い辛味ソース、香ばしいニンニクソース、さらには数種類のスパイスが卓上に並べられた。細やかな配慮が行き届いたのを確認すると、二人の母親も席に着いた。


ヒラマが盃を持ち上げるようにして言った。

「それじゃあ……いただきます!」


「いただきます!」

ウイタたちも元気よく声を揃える。


一斉に料理へと手が伸びた。ニッツェが大口で肉を噛みちぎると、その瞬間、彼女の目がカッと見開かれた。


「な、なんだこれ……う、美味すぎる!!」


「嘘だろ、本当に……?」

半信半疑のツヤも一口かじり、慎重に咀嚼した。次の瞬間、彼もまた驚きのあまりわずかに目を見張った。


「……驚いたな。本物だ、信じられないくらい美味い」


シンソとナツキも恐る恐る口に運び、続けて他の面々も肉を味わった。蜘蛛の肉とは到底思えない、とろけるようにジューシーな旨味が口いっぱいに広がる。誰もが感動に包まれながら、夢中で食を進めた。


「正直、ここまでとは思わなかったぜ! なんで蜘蛛の脚がこんなに美味いんだよ!?」

ニッツェが興奮冷めやらぬ様子で叫ぶ。


「本当ですね……奇跡みたいだ」

シンソも花がほころぶように頬を緩ませて同意した。


全員が料理を満喫する中、ツクモは幼いキクロに離乳食を与えつつ、楽しそうに食卓を囲む娘や若者たちの姿を温かな微笑みで見守っていた。レツカとヒラマの兄弟は昔話に花を咲かせ、若者グループもすっかり打ち解けた様子で会話を弾ませる。


およそ一時間後、賑やかな夕食の宴は幕を閉じた。誰もが満腹感と深い満足感に浸り、背もたれに深く体を預けて幸せな余韻を楽しんでいた。


シンソは両頬を手で包み込み、可愛らしい笑みを浮かべた。

「んん〜……本当に美味しかったです……」


「ああ、素晴らしい食事だったな」

ツヤも深く頷く。


一心地ついたところで、ウイタ、エラ、サラマの三人が手際よく立ち上がり、ツクモの手伝いとして空いた皿を厨房へと運び始めた。


ツヤは腰を浮かせ、レツカへと真っ直ぐに視線を向けた。

「あの……レツカさん。もしよろしければ、この世界についての情報をもう少し教えていただけないでしょうか?」


レツカが重い口を開こうとしたその時、バタンと重厚な扉が開き、黄金色の髪に美しい鎧を身にまとった一人の女性が室内へと入ってきた。


「ちぇっ……夕飯に遅れちまったか」


厨房から顔を出したツクモが声をかける。

「心配いらないわよ、ルーサー。まだ蜘蛛の脚は残っているわ。サラマたちが新しいパーティで十匹も狩ってきたのよ」


ルーサーと呼ばれた女性は、片付けの手を止めてこちらを見たサラマへと視線を向けた。

「へえ……案外やるじゃない。あんたにしては上出来ね」


サラマは嬉しそうに胸を張った。

「えへへ、ありがと、ルーサー姉さん!」


ルーサーの鋭い視線が、そのままウイタたち一行へと注がれる。一人ひとりを品定めするようにじっくりと見つめた後、彼女は露骨に眉をひそめた。


「で? この連中は誰よ。まさか、本気でこんな奴らと狩りに行ったわけ?」


ソファでくつろいでいたニッツェが、片目を薄く開けて不満げに声を上げる。

「おいおい! 聞こえてるぞ。俺たちのどこに問題があるってんだよ?」


「見ての通りよ。もやしっ子のガキが集まっているようにしか見えないわね」


その挑発的な言葉に、キメケノが即座に反応して身を乗り出した。

「ああん!? てめえ、今なんつったコラ!?」


「ルーサー、そこまでにしとけ。座りな、話の途中だ」

家長であるレツカが、凄みのある厳格な声で制する。


「……チッ」

ルーサーは不機嫌そうに鼻を鳴らすと、横柄な態度で空いている席へとドカッと腰を下ろした。


険悪になりかけた空気を和らげるように、サラマが一行に向かって紹介する。

「みんな、こちらは姉のルーサーさんよ。腕の立つ軽剣士で、今は冒険者として活動しているけど、将来は『剣聖』を目指しているの」


「へえぇ……すごくカッコいいですね!」

シンソが純粋な憧れを込めて声を弾ませた。


だが、ルーサーはフンと鼻を鳴らして吐き捨てる。

「あんたに褒められても嬉しくないわよ、可愛いお嬢ちゃん」


「僕、女の子じゃありません! 僕は男です!」

シンソがプッと頬を膨らませて抗議すると、ウイタが慌てて会話を引き取った。


「あの……無礼な態度をとってしまってすみません、ルーサーさん。私(わたし)たちはこの土地に来たばかりで、右も左も分からない状態なんです。でも、どうにかして自分たちの力で生活を立て直したくて……」


ニッツェも腕を組みながら、真剣な表情を浮かべる。

「それに、俺たちだってこのまま指をくわえて立ち止まっているつもりはない。伸び代ならいくらでもあるはずだ。あんまり舐めないでくれよな」


ルーサーはしばらく無言で一行を観察した。特に、青い髪を持つツヤの姿をじっと見つめている。そこへ母親のキリシマが温かい湯気が立つ皿を運んできて、そっと彼女の前に置いた。


レツカが煙草の煙をふぅと吐き出しながら口を開く。

「こいつらは口だけのナマクラじゃねえよ。かなりの見込みがある。でなけりゃ、お前が留守の間に俺がわざわざ情報を教えてやるはずもないだろうが」


ルーサーは父親の顔を見つめた後、手元の料理に視線を落として深く息を吐き出した。

「……はあ、分かったわよ。そこまで言うなら、冒険者ギルドへの登録の手筈くらいは整えてあげる。私のアドバイスもつけてね。ただし! 登録が終わったら容赦なくテストさせてもらうから。覚悟しておきなさいよ!」


「よっしゃあ! 決まりだ!」

ニッツェが元気よく拳を突き上げる。


「さて……それじゃあ、さっきの質問の続きだ」

レツカが座り直すと、サラマに向かって命じた。

「サラマ、俺の書斎からイタニリア帝国とスカウン領の政治地図を持ってきてくれ」


サラマは待ってましたとばかりに席を立ち、きつく丸められた羊皮紙を二本抱えて戻ってきた。

レツカはそのうちの一本を受け取り、木製の食卓の上にバサッと大きく広げた。


「これがイタニリア帝国の政治地図だ」


広げられた地図を全員が覗き込もうとした時、ルーサーが肉を咀嚼しながら疑問を投げかけた。

「ちょっと待ちなさいよ。見れば見るほど、あんたたち部族の人間って風貌じゃないわね。どこの田舎から来たら、イタニリア帝国の存在も、種族や民族の知識すら持たずに生きていられるわけ?」


「答は簡単だぜ、実は俺たち――」

ニッツェが気軽に口を開きかけた瞬間。


――ガツンッ!


優しき母のようなエラの、容赦のない鋭い肘打ちがニッツェの脇腹に深く突き刺さった。


「グハッ……!?」


ニッツェが悶絶して強制的に沈黙させられる中、ツヤが冷静な表情を一切崩さずに問いを重ねた。

「……この世界には『果て』があるのですか?」


「は? 丸い形をした世界に果てなんてあるわけないでしょう」

サラマが何を当たり前のことを、と言わんばかりに首を傾げる。


ツヤは胸中で深い溜め息をついた。

(くそっ……地球と同じ球体説が常識として定着しているレベルの文明度か……)


ウイタが極めて自然な動作で、会話の軌道修正を試みた。

「なるほど……ではレツカさん、解説を続けていただけますか?」


「ああ。ここが俺たちのいるイタニリアだ。ご覧の通り、俺たちはこの西北端に位置する『イオトゥノ市』にいる。北部の他の都市と比べても、なかなかデカい規模だろう?」


一行は食卓の地図に身を乗り出した。イオトゥノ市のすぐ隣には「スクト」と呼ばれる小さな都市があり、さらにその隣にはスクトとは比較にならないほど巨大な「クゼツァ」という都市が描かれている。


ヒラマが煙管の灰を落としながら、指で地図をなぞった。

「これらの都市はすべて北部地域に属している。イタニリアは大きく分けて『北部』『中央部』『南部』の三つの領域に分かれていてね。見て分かる通り、北部と南部には都市の数こそ三つずつしかないが、中央部の都市群に比べて一つひとつの規模が圧倒的にデカいのが特徴なんだ」

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