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7月23日(金曜日)
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……シズクが失踪してから、かれこれもう二日が経つ。
シズクの親はその日の内に警察へ届け出たらしい。
島は重苦しい空気に包まれていた。
今日も青年団が朝から島のあちこちを捜索しており、俺も午後から加わる予定である。
俺だけではない。
ミコトも、アツシも、レイコも。
みんなで、シズクを探しにいく。
………。
………。………………。
………。………………。………………………。
……アイツらは。
何かに怯えていた。
明らかに、一目見てわかるほどに。
けれども、俺にソレを語ることはなかった。
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7月24日(土曜日)
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シズクについで、レイコまでもが姿をくらましてしまった。
具体的にいつ、そうなったのかはわからない。
レイコはその日もシズクの捜索にでていて、途中から足取りがつかめなかったのである。
――アツシは。
取り乱していた。
ひどく、取り乱していた。
見ていられないほどに。
まるで、別人のように。
けれど、それでも俺には何も語ってくれなかった。
……いや。
厳密に言えばひとつだけ、アツシが激情と共にこぼした言葉がある。
だがソレが何を意味するかが、俺にはまるでわからない。
――――――人魚。
アツシはたしかにそう言っていた。
恐怖と怒りと後悔が入り混じった目で、そう言っていた。
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7月26日(月曜日)
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そのアツシまでもが。
いなくなってしまった。
今やほとんど島民総出で探しに出ている。
アツシの父親たちは苦渋の表情で舟を出し、島の周囲をくまなく調べ回っていた。
ここは孤立した島である。最悪の可能性のひとつとして、海に落ちた場合なども考えなければならないのだ。
俺は、アツシのおじさんがあんなに辛そうにしているのを初めて目にした。
警察が人員を増やしたそうだがあまり期待はできない。捜査はまったく進んでいないようだった。
三人は依然として行方知れずのままである。
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7月28日(水曜日)
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……この数日、俺は何度もミコトの下に足を運び、あの夜、あの場所でいったい何が起きたかを問い質していた。
だがミコトは。
やはり何も答えてはくれなかった。
まるですべてが終わったような、すべてをあきらめたかのような遠い目をするのみである。
――だがそれでも。
最後の最後に、ひとつだけ教えてくれた……のかもしれない。
アイツは途方もなく苦し気な顔で、まるで身体中の臓器を口から吐き出すかのようにして、ポツリとつぶやいた。
【ミコト】
「アイツらは……人魚を殺してしまったんだ」
「これはその……罰なんだよ」
もしかしたらソレは俺に語ったのではなく、懺悔のような独り言だったのかもしれない。
ミコトが失踪したのは、その直後だった。
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7月31日(土曜日)、8時13分
八尾姫神社、本殿
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そして――今日。
七月の終わりを迎えた、今日この日。
【人魚】
『おねがい、たすけて……』
『とめて、あのひとを……』
俺は、人魚と出くわした。
ボロボロと、ボロボロと、大粒の涙を流す人魚と。
夏の晴天を背に宙を泳ぐ、八尾の人魚と。
【俺】
「な⁉」
次の瞬間、俺の身体は、意識は、白い閃光に包まれた。




