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7月21日(水曜日)、8時32分
帯渡島小中学校、昇降口
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瑞古還シの翌日、七月二〇日は海の日で休みだ。
この島では例年、さらにその翌日――つまり瑞古還シから二日後の今日が終業式となっており、明日からはいよいよ夏休みである。
……だが。
あれだけ心待ちにしていた夏休みを目前にして、俺の心は今、沈み込んでいた。
海に落とされた鉄クズのように。
深く、深く、沈み込んでいた。
【俺】
(アイツら……、いったいどーしちまったってんだよ……⁉)
あの後。
神社に一人残された俺はなすすべもなく、家へと帰った。
それからというものの、アツシたちからの音沙汰は一切ない。
昨日の夕方には我慢できず俺の方から電話してみたものの、露骨に居留守を使われた始末である。
【俺】
(イヤな予感がする……)
イヤな予感。
それは、そう――あの日にも感じていたモノだった。
大丈夫なのか。大丈夫だろう。いや、もしかしたら……ただひたすらに、そのせめぎあいだ。
延々と思考が負のループに陥ってしまう。
【俺】
(ミコト……)
今日に限っては、アイツとも一緒じゃなかった。
いつもみたいにキタテンの辺りで落ちあおうとしたが、いくら待っても姿を現さなかったのである。
【俺】
(多分、たまたま早めに家を出たかなんかだろ……)
(そうだ、そうにきまってる……)
俺は自分に言い聞かせながら、靴を履き替え教室へと向かった。
……何故だか今日は、廊下がやけに長く感じる。
まるで眩暈がしそうなほどに長く長く感じる。
たかだか数個の教室しかない、ちっぽけな校舎のはずなのに。
となりにミコトがいないからだろうか。
それとも――
これからいなくなってしまうからだろうか?
【俺】
(なにを――なにを考えてんだ、俺は!)
自分で自分が情けなくなる。
どうしてこう、モノゴトを悪い方、悪い方にしか考えられないんだろうか。
この炎天下にもかかわらず、痛いほどに冷たくなっていた汗は、俺の小心っぷりの証左に他ならない。
【俺】
(そんなワケがないんだ、そんなワケが――)
俺は自分に暗示をかけるように、心の中で何度も否定を繰り返した。
もう、教室はすぐそこである。
これ以上、足踏みしていられない。
冷や汗で濡れた手を扉にかけ、俺はいざ、中へと入った。
すると、そこには――
【ミコト】
「あ、ナタロー」
「……おはよ」
【俺】
(……なんだよ、いるじゃねーか)
思わず膝から崩れ落ちそうになるくらい、心底ホッとした。
ミコトである。
ごく普通に、そこにいる。
やはり、今朝はたまたま早く登校していただけのようだ。
それだけではない。
アツシだっているし、レイコだってもちろんいる。
シズクだけは姿が見えなかったが……なあに、アイツが遅刻しがちなのはいつものことだ。
たぶん、今にも後ろから小さな身体でトコトコと駆けつけてくるだろう。
このまま俺がモタモタしていたら、あのクソナマイキな口から罵詈雑言が飛びだしてくるにちがいない。
そうだ。
きっとそうだ、そのはずだ。
俺はそう、思っていた。
………。
………。………………。
………。………………。………………………。
俺はそう、思っていたかった。
だが。
結局その日、いつまで経ってもシズクが姿を見せることはなかった。
そしてソレは、その日だけではすまなかった。




