006
……頭がフットーしそうだった。
メラメラと、メラメラと、俺の中で何かが燃え盛る。
ふしゅー、ふしゅー、ふしゅるるるぅ……!
意図せず呼吸が荒くなる。身体が理性の外側で酸素を求めていた。
この身に滾る炎をさらに燃やせと言わんばかりに。
【マコト】
「は? 女装……?」
マコトは呆気に取られたような顔でこちらを見返す。
俺も俺で一瞬たりとて視線を外さなかったので、自然、二人は見つめあう形となった。
……マコト。
ああ、マコト。
俺にとって弟同然だったお前が、まさか……まさか、こんなことさ、してくるだなんて……!
【マコト】
「お、おいナタロー……どうしたんだよ、おい?」
わがってる……!
オラにはもぉ、すっかりわがってる……! お見通しさぁ……!
そったらカッコして、オラを………………オラを、かつごぉってんだなぁ⁉
もぉ、ゆるせねぇ……!
モー、ゆるせねぇだかんなぁーっ⁉(スイッチ・オン)
【オラ】
「かぁーッ! マコト! まったくおめぇっちゅーヤツぁ! 男のクセになんちゅーカッコしとるさぁ⁉」
【マコト】
「はぁ⁉」
【O★RA】
「そったらカッコしてオラを――オ、オ、オ、オラをかつごぉったって、そぉーはいがねぇんだからなぁ⁉ ……そぉ~~~は、いがねぇんだかんなぁ⁉(圧力)」
【マコト】
「なに言ってんだオマエ⁉」
【†O★RA†】
「そ、そそそ、そったらことしでっからなぁ! 〝ちきゅー〟が……オラだちの〝ちきゅー〟がなぁ、アチくなっちまうんでしょーがぁ!(地球温暖化) ……あやまれ! 〝ちきゅー〟さんにあやまれぇ!(いきおい)」
【マコト】
「意味わかんねーよ! ……てかくんな! こっちくんな、離れろ!」
【天上天下†O★RA†唯我独尊】
「カァ~~~! まったく、胸にこんな詰め物まで仕込みおってからに! お前っちゅーヤツは――」
ぐにぃ!
その時、地球が静止した。
【俺】
「……? ……?? ……???」
ぐにぃ! ぐにぐに、ぐにぃん!
何度か確認を繰り返すも手応えは変わらない。同じである。
こう……やけにこちらの手を押し返してくるような。
それでいて、やわらかくもあるような。
つまるところ肉々しい。生々しいまでに、肉々しい。
あと、あたたかかった。明らかに生命の息吹が宿ってるそれである。
詰め物なんかでは、決してない。
……と、いうことは。
もしかして。
これってもしかして――
Is this "OPPAI" …?
(訳:これは〝おっぱい〟ですか……?)
Is this … "OPPAAAAAAI"!?
(訳:これは……〝おっぱい〟なのですね⁉)
Yes! This is "OPPAI", Yeahhh!!
(訳:ああ、そうさ! こいつぁ〝おっぱい〟だぜ! いえーい!)
俺が思考の迷宮から真実というたった一つの光を標に抜け出したその時、
【マコト】
「 おい、オマエ……! 」
マコトが重々しい空気で話しかけてきた。
「 ボクに何か、言うべきことがあるんじゃないか……⁉ 」
低い声。低ーい声である。まるで地獄からどよめく怨嗟のソレだ。
もしかすると、もしかするとだが、怒ってらっしゃるのかもしれない。
【俺】
「………。………………。………………………。」
俺は思索に耽る哲学者のような憂いを帯びた眼差しで、マコトから与えられし命題に対して真摯に取り組む。
ちなみにその間も手はモミモミと動き続けたままだった。
やがて、長き思考の旅路の果てに言うべきことを見つけた俺は、キッとマコトの視線を真っ向から力強く、だが何よりも優しく受け止める。
【俺】
「………………ありがとう?」
【マコト】
「 死ねぇぇぇぇえええええええええっ! 」
殴られた。




