005
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7時53分
帯渡島港
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【俺】
「お前……どうして、どうして、」
俺は言いながらゴシゴシと目をこする。何度も何度もまばたきをする。
が、やはり目の前の光景は変わらない。
パッチリとした目、日に焼けた肌、男にしては少し長めの黒髪。
……マコトである。やはり、どこからどう見てもマコトその人である。
首から上に関しては。
問題なのはその下だ。
ワンピースである。白の、ワンピース。胸の辺りがキュッと持ちあがり、よく日に焼けた手足がスラリと伸びて。
これじゃあまるで……女の子じゃないか。
どどど、どこからどう見たって、女の子じゃあないか……!
【俺】
「ハッ⁉」
その時、俺に一筋の天啓が下る。
「も、もしかしてマコトの姉ちゃん……いや、それとも妹か⁉」
【マコト?】
「……ち、ちがうっ」
ちがうらしい。天啓ちがうらしい。
そーいやそうだ。アイツは一人っ子だった。よしんばその後、妹が生まれたとしても七歳以下である。目の前の人物は明らかに俺と同じ中学生くらいなので妹のはずがない。
なにが天啓だよ。ペッ。
【俺】
「じゃ、じゃあお前……マコトなのか? ほんとのほんとに、マコトなのか⁉」
【マコト?】
「オ、オマエ、まだボクのことを――っ」
どうしてだろう。
俺が〝マコト〟と呼ぶたびに、肩をビックン、眉毛がギュイン、身体をプルプルと震わせている。
だがやがてそれらが収まると、
【マコト】
「そうだ……!」
なんだかいかにも不服そうだったが、最後には認めてくれた。
マコトだと。
今、俺の目の前にいる人物がマコトだと。
七年ぶりに再会した、幼馴染その人なのだと。
………。
………。………………。
………。………………。………………………。。
えぇえええええええええええぇええええええええええっ⁉
【俺】
「うっそだァー⁉」
【マコト】
「うそなんかじゃない……!」
【俺】
「いやいやいや! んなはずねーだろ⁉ あのマコト⁉ お前がか⁉ 信じらんねーよ!」
間違いなく、間違いなく、七年前のマコトは男だった。
一緒に海パン一枚で海や川で遊んだりしてたんだぞ?
そんなはずがない! そんなはずがないんだ!
だが俺のそうした追及に、
【マコト】
「ああ、よく覚えてるよ……! オマエ、イヤがるボクにウミウシを投げつけたりしてきたよなぁ……⁉」
【俺】
「うぐぅ⁉ な、なぜそれを――」
【マコト】
「それだけじゃない! 還津山に虫取りに行った時はナメクジをつきつけてくるし、六歳の時の瑞古還シじゃ途中でボクをほっぽりだしてアツシとどっかに行っちゃうし!」
【俺】
「うぐうぐぅ⁉」
そんなことまで知ってるだと……⁉
たしかに、たしかにそうだ。言われて思い出したが、そんなことをした記憶がある。
そしてその記憶は間違いなくマコトと共有しているはずのものだった。
じゃあ。
目の前の、一見すると女子にしか見えないコイツは本当に――
【俺】
「マジで……マジで、マコトなのか……!」
【マコト】
「~~っ、だから! 最初っからそうだって言ってんだろ!」
マコトはほとんど地団駄を踏みながら肯定した。
【俺】
「そんな――っ」
俺は言葉を失った。
頭の中で急速にパズルのピースが組み上がっていく。
目の前の人物はマコト。
どこからどう見ても女子にしか思えないが、マコトなのである。
子どもの頃、この帯渡島で共に七年の月日を過ごした幼馴染だ。
――であれば。
であれば、結論は必然的に一つしか出てこない。
……こわかった。俺は、こわかった。その結論を、口にするのが。
だがそれでも、たしかめなければならない……!
人は、たしかめることでしか前に進めぬのだからっ。
【俺】
「じゃ、じゃあマコト。お前、お前――」
【マコト】
「……なんだよ」
【俺】
「 女装に目覚めちまったんだな……⁉ 」




