058
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21時01分
八尾姫神社付近
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それから俺たちはどちらからともなく神社へと引き返す。
社務所がそのまま家でもあるミコトは言うに及ばず、俺も帰るならそっちまで戻った方が早いからだ。
瑞古還シが済めば、祭りも実質終わりである。
すでに屋台の大半は畳まれ、休憩所でクダを巻いてた酔っ払いたちも二次会へと移りつつあった。
〝祭りのあとの侘しさ〟なんて言葉があるが、まさしく今この状況である。
あれだけきらめいていた電飾が一つ、また一つと消え、この島本来の静かな夜へと戻っていった。
まるで夢のように楽しい時間だっただけに、モノ言わぬ暗闇の冷たさが痛いほど胸に染みいる。
俺もミコトも、その痛みからはあえて目を背け、〝まだ終わらない〟〝終わりたくない〟とする思いに引きずられながらノロノロと夜道を歩いていた。
【ミコト】
「なあ――」
そんな中、ミコトがふと聞いてくる。
「オマエ、さ」
「なに願ってたんだ、さっき」
【ナタロー】
「おい、ソレ聞くのかよ」
【ミコト】
「い、いいだろベツに……!」
「それとも、聞かれたら困るようなことなのかよっ」
ツッとそっぽを向くミコト。
【ナタロー】
「いや、そーいうワケじゃあねーけど……」
【ミコト】
「ならいいじゃん」
【ナタロー】
「……笑うなよ」
【ミコト】
「笑わないよ」
【ナタロー】
「あと〝意味わかんない〟とかそーいうのもナシだからな」
【ミコト】
「わかったわかった」
「そんで? なんなの、結局」
【ナタロー】
「……幸せになりたい、だ」
俺が言った途端、
【ミコト】
「へ?」
案の定ミコトは目を点にした。
「ナニソレ? どーいうこと」
どーいうこともなにも、そのままの意味である。
――幸せになりたい。
これ以上にシンプルにして、欲の皮がつっぱった願いはないだろう。
だからこそ、人事を尽くすのはもちろん、神頼みだってせにゃならんワケだ。
【ミコト】
「……ふぅーん」
俺の説明に何やらうろんげな視線で返してくるミコト。
そのまま、不機嫌そうにブツブツとつぶやく。
「……なんだよ、ボクのことじゃないのかよ」
【俺】
「え? なんか言ったか」
【ミコト】
「なんでもないっ」
【俺】
「いや、でも――」
【ミコト】
「だ・か・ら!」
「なんでもないって言ってるだろっ」
……どうやらこれ以上つつくとヘビが出てきそうである。
俺はそう判断し、話題を変えた。
【俺】
「まあ、ならいいけどよ――」
「んで、お前は?」
【ミコト】
「は?」
【俺】
「だから、お前は何をお願いしてたんだよ」
「あんなに真剣になってさ」
【ミコト】
「……やだ」
【俺】
「あん?」
【ミコト】
「……やだ、言いたくない」
【俺】
「おいおいおいおいおい」
「人のは聞いといてソレかよ?」
【ミコト】
「うぐ……!」
【俺】
「言ってみろよ、笑いやしねーから」
【ミコト】
「ほ、本当にか……⁉」
「絶対、絶対笑わないなっ」
【俺】
「ああ、絶対に絶対に笑わない」
俺が言ってうなずくと、ミコトはしばらくためらったのちに、えいやっと切り出した。
【ミコト】
「……に、行きたい」
【俺】
「ん? なんだって」
【ミコト】
「だから!」
「 同じ高校に、行きたい 」
「………。………………。………………………。」
「……ナタローと」




