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昔、昔のそのまた昔。
この島は無人島だった……らしい。
当時はまだ帯渡島の名もなく、周辺の激しい海流から、一度入ったら出られない〝帰らず島〟としておそれられてたとか。
この海流は〝帯走り〟と呼ばれ、人を容易に呑みこむ荒々しさの反面、よい潮目を作ることでも知られており、近隣の島々の漁師にとってはきわめてハイリスク・ハイリターンな環境となっていた。
ある日、その帯走りにヨビトという若者が挑む。
だが、結果は惨憺たるモノ。帯走りの厳しい流れの中、船は大破し、ヨビトは海に放り出される。
その末に漂着したのがここ、帰らず島だ。
半死半生のヨビトは、もはやここまでかと覚悟を決める。
だが、次に目を覚ますと……見知らぬ女がそばにいて、岩屋でヨビトを介抱してくれているではないか。
人っ子一人おらぬはずの帰らず島に、女がいた――。
その事実にヨビトはおどろくが、聞けばこういう話らしい。
女の名はヤオ。かつてどこぞの集落を追い出され、この島に流れ着いたのだとか。
ヤオは美しい娘で、傷ついたヨビト甲斐甲斐しく世話してくれた。
……男が一人、女が一人。そこに一度入ったら出られぬ帰らず島とくれば、先の展開などきまってる。
ヨビトの傷が癒える頃には二人は夫婦となり、それから少しずつ島を開拓した。
住む場所も岩宿から川のほとりへと変え、そこに建てた家でやがて八人の娘をさずかる。
帰らず島は食べるものも少なく、けして楽な生活ではなかったが、どうしても食うに困った時には、ヤオが夜、海に出て貝や海藻をとってきてくれた。ヨビトは怪我が原因で足を悪くしており、その姿を直接目にしたワケではなかったが、ヤオの腕は確かなようである。
そうしてヨビトは、ヤオや娘たちと一緒に慎ましくも幸せな日々を送っていた――。




