052
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20時06分
八尾姫神社、拝殿
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聞いた話によると、内地の大きな神社では舞殿や神楽殿などと呼ばれる専用の建物があり、そこで神サマへの歌や踊りをささげるらしい。
だが、ここ八尾姫神社にはそんなモノないので、代わりに拝殿を使っての奉納舞が習わしとなっていた。
俺たちは今、その拝殿の近くで一緒に舞台を眺めている。
【俺】
(こんなにちゃんと……やってたんだな)
あれほど鳴り響いていたスピーカーは止められ、屋台も休止していた。
島の大半の者が拝殿に集まり、真剣な面持ちでじっと鑑賞している。
数少ない観光客もその空気に呑まれたのか、黙って舞を見ていた。
その時、
【俺】
(……あれ?)
俺はふと気づく。
(どこいったんだ……アイツら)
アツシたちのことである。
花火が終わり、拝殿に来るまでは一緒だったのだが……。
【俺】
(あ、いた。あんなとこに)
何故だかアイツらは俺たち――俺とミコトから遠く離れた位置にいた。
【俺】
(もしかして、気ぃつかってんのか……?)
二人っきりにさせようとか、そーいう魂胆だろうか。
だとしても、あんな遠くまでいかなくてもいいと思うが……。
アツシたち三人がいたのは、人だかりの境目、もうほとんど輪の外みたいな場所である。
俺がそのことを怪訝に思っていると、
【ミコト】
「……おいっ」
ミコトが小声で圧をかけてきた。
「キョロキョロしてないでちゃんと前見てろよな、前」
【俺】
「いや、わりぃ……そーだよな」
俺は言われた通り舞台へと視線を戻す。
ただいかんせん……どーにもしんどかった。
この奉納舞である。
笛や鈴の独特な音色、ゆったりとした舞の動き、場に染み入るような歌……。
幻想的ではある。いや、もはや神秘的ですらあった。
むこうは言うに及ばず、日本でもこういった伝統的なモノを見られる機会は今時そうそうなかろう。中々に貴重な経験のはずだ。
しかし、
だがしかし、
【俺】
(ナニ言ってっかさっぱりわからねぇ……)
そこが非常にキツかった。
この奉納舞は島の成り立ちを物語る、いうなればミュージカル的なモノのはずなのだが、肝心のその歌詞がよくわからない。
昔の言葉――古語、というヤツだろうか。
全編がソレで語られているのである。
こっちに戻ってはじめて〝古典〟という難関科目に遭遇した俺にとっては、いささか荷が重かった。
まるで字幕なしでフランス映画かドイツ映画でも観ているかのようである。
たまにわかる単語がでてくるのだが、かえってソレが頭にひっかかり理解をいちじるしく阻害していた。
正直、これならまだ子ども頃の方が楽しめてた気がする……。
【ミコト】
「……寝るなよな?」
【俺】
「うぐぅ……!」
どうやらミコトにはすべてお見通しだったらしい。
梅雨前線みたいな湿度の高い視線で睨めつけてくる。
【ミコト】
「はぁ、」
そのまま小さなため息をひとつ吐くと、
「……しょーがないな」
【俺】
(んんん⁉)
突然距離を詰めてきた。
ただでさえ肩と肩が触れあうくらいだったにもかかわらず、だ。
これではほとんど身を寄せているレベルである。
みみみ、身を寄せているレベルである!(二回目)
俺は思わず「こここ、こったらトコでか……⁉」などとバグりかけるが、ミコトの意図はそうでなく、
【ミコト】
「いいか、まずアソコにいるのが……」
単に周囲の迷惑とならぬよう小さな声で耳打ちし、俺に舞台の内容を教えてくれようとするモノだった。
その語るところによれば――




