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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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43/46

043

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 13時09分

 帯渡島(おびとじま)小中学校、校舎裏

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

令子(レイコ)

()()、ですって……?」

 令子の吊り上がり気味の目がカッと開かれる。

()()()を……?」

 

(シズク)

「はい……」

 雫は視線を落として肯定した。

 

【令子】

「………。………………。………………………。」

 

【雫】

「………。………………。………………………。」

 

 長い沈黙が両者の間に舞い下りる。

 

 ソレはまるで、粘度を持った瘴気(しょうき)のようだった。

 

 少しずつ少しずつ身体に(から)みつき、やがては思考を(むしば)んでいく――。

 

【令子】

「……フフ、フフフ、フフフフフフフ」

 令子は唇の端を歪め、(あざけ)りの笑みを浮かべようとした。

「何を言うかと思えば……」

 だができなかった。

 精緻(せいち)な造りの顔は、引きつったように強張(こわば)るのみ。

「バカね、シズク。そんなワケないじゃない」

 それでも令子は意志の力だけでどうにかそう言い切った。

 

【雫】

「ほ、ほんとーなんですよぉ……!」

「アレは絶対にユイだった………………と思います」

 雫も内心では認めたくなのか、やや尻すぼみ気味である。

「そりゃあ暗かったし、ボサボサに伸びた髪で顔もちょっと隠れちゃってたけど……」

「でも、目鼻立ちとかの感じは、どう見たってユイでした」

 

【令子】

「………。………………。………………………。」

 令子は一度ゆっくりと深呼吸をし、

「あのねえ、シズク」

 そこから(つと)めて柔らかい声を出した。

「よく考えてごらんなさい」

「もしアナタの言う通り、あの子が本当に()()()()()として――」

「それならなんで、戻ってこないの?」

 

【雫】

「あ」

 

【令子】

「どうしてそんなふうに隠れ続けているというの?」

「しかも、アナタが見たという場所は南地区でしょう」

「全然関係ないじゃない。()()()()ならともかく」

 

【雫】

「それは、たしかに……」

「ウチも、ちょっとおかしいなって思ってたんですけど……」

 

【令子】

「でしょう?」

「あの子さえ戻ってくれば、藤代(フジシロ)の家だって静かになるというのに……」

「なのになんで、戻ってこないの?」

 

【雫】

「で、でもでも!」

「レーコさんだって言ってたじゃないですか……!」

「他にも見たヒトがいるって」

「村会でもそういうウワサがあるって――」

 

【令子】

「……きっと何かの見間違いよ」

「実際ね、今ソレとはベツに不審者が(ひそ)んでるのはたしかなの」

 

【雫】

「……例の学校とか村役場を荒らしてたヤツのことですね?」

 

【令子】

「ええ。一昨日の夜は図書館にも入り込んだらしいわ」

「お婆様はもうカンカンよ。お母さまも頭を抱えていたわ」

 

【雫】

「そうだったんですか……」

 

【令子】

「だからね、シズク」

「アナタが見たっていうのも、他の人が噂してるのも、単にソイツを見間違えただけのことじゃないかしら?」

 

【雫】

「で、でもぉ――」

 

【令子】

「きっとそうよ」

「人間の想像力は時に壁のシミだって魑魅魍魎(ちみもうりょう)に仕立て上げるわ」

「……あれからもうすぐ一年だもの」

「アナタや他の人が、不審者をあの子と勘違いしても不思議じゃないわ」

 

【雫】

「で、でもレーコさん」

「ウチ、なんだかもうホント、こわくって……!」

 

【令子】

「……わからないからよ」

「わからないからこそ、こわくなるのよ」

「いつだって、理解の追いつかないことには恐怖が(とも)うわ」

「だから、ね。シズク――」

 令子は雫の小さな肩に手を()り、物々しい声色で切り出した。

 

 

 

「……()()()()()()()()()()

 

 

 

「あの場所に」

「〝八尾姫(ヤオヒメ)さまのお臥所(ふしど)〟に」

瑞古還(ミズコガエ)シはもう――明後日(あさって)なんですから」

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