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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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【俺】

「ふぅ……」

 

 念のため、俺はもう一度タックンのメールを最初から読み直した。

 

 やたらと抽象的だったり婉曲(えんきょく)的だったりな表現が多かったが、間違いない。

 

 タックンはハツホをふったのだ。

 

 俺の解釈が正しいなら、理由は都会で新しい彼女ができたからである。

 

 ……てかタックンさぁ。

 

 結論は先に書こうよ……。

 

 読むのすげーしんどかったよ……。

 

 アメリカだとマジで嫌われるからな、そーいう書き方……。

 

 まあ、ソレはさておき、

 

【ハツホ】

「   」

 

 俺はようやくコイツのむごたらしい有様(ありさま)に納得がいった。

 

 つまりはこのハツホ――先ほどからうつろな目で口からヨダレがダラダラのおねーさま。

 

 現在絶賛失恋+傷心中である。

 

 まぁ無理もない。

 

 あんだけ毎日電話なりメールなりでイチャついてたとこに、いきなりのこの強烈なアッパーカットだもんなぁ……。

 

 そりゃあ、ノックアウトも必至(ひっし)でしょ。

 

【ハツホ】

「   」

 

【俺】

「………………………。」

 

 俺は。

 

 俺と瓜二つの顔をした従姉(いとこ)の、傷つき迷えるその姿を見て。

 

 

 

 俺は、俺は――

 

 

 

【俺】

「 ブワァァアアアアッハッハッハッハ! 」

 爆笑した。

「 ホヒヒ、ホヒヒィ! ホヒヒヒヒッ! 」

 腹の底から、爆笑しまくった。

「も、〝木綿(もめん)のハンカチーフ〟女でげそ!」

「この、平成の世に! 2000年を控えたこの時代に!」

「都会に男を取られた、ハンカチーフ女がいるでげそーっ!」

「アーッハッハッハッハハハ!」

「ブヒャヒャヒャヒャヒャヒャホヒャヒャ!」

「……ぼ、ぼくを! ぼくをゆるちてー!」

「ウヒャーッヒャッヒャッヒャッヒャ!」

「お、おなかいたい!」

「ポンポンいたいよぉー!」

「オヒャーッヒャッヒャッヒャッヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 なんならその場で倒れ込み、ゴロゴロと転がりながら腹を抱えて笑いまくってやった。

 

 コイツにはさんざんドーテーだのなんだのバカにされてきたからな。

 

 こんくらいやってもバチはあたるまいよ、うん。

 

【俺】

「オラァ! 最後のわがままねだるんだろ⁉」

「木綿のハンカチーフが欲しいんだるるぉ⁉」

「ナーッハッハッハッハハハハハハハハ!」

 

 調子に乗り、俺はゲシゲシとハンカチーフ女を足蹴(あしげ)にしていたが、

 

 しかしそこで、

 

【ハツホ】

「………。」

 いきなり無言でぬおんと立ち上がるハツホ。

 

【俺】

「お、おおん……⁉」

 

 やばい。

 

 さすがにキレたか?

 

 俺はそう思いあせったが――()()()

 

 ()()()()()()

 

【ハツホ】

「………………。」

 

 ハツホはおもむろにソファで仰向(あおむ)けにゴロンと横になった。

 

 しかもあろうことか、大股開きで。

 

 本人(いわ)く、三枚で千円いくかいかないかの安物パンツを()しげもなく〝コンニチワ!〟させながら。

 

 ……え?

 

 なになに。突然どーしたの? なにしてんの、コイツ。

 

 ハツホの予想外の行動に俺は戸惑いを隠し切れなかったが、しかしながらヤツが次に口にした言葉は、大気圏外まで一直線にかっ飛ぶような、さらなる衝撃的なソレだった。

 

【ハツホ】

「……もーこうなったらキサマでかまわん」

 

 

 

「 抱け 」

 

 

 

【俺】

「……はぁ?」

 

【ハツホ】

「聞こえなかったか?」

「抱け、と言っている」

 

【俺】

「……念のために聞くがソレは性的な意味でか?」

 

【ハツホ】

「念のために答えてやるがコレは性的な意味でだ」

 

【俺】

「………。」


【ハツホ】

「………。」

 

【俺】

「………。………………。」


【ハツホ】

「………。………………。」

 

【俺】

「………。………………。………………………。」


【ハツホ】

「………。………………。………………………。」

 

【俺】

「……いやいやいや、」

「いやいやいやいやいや」

「なに言ってんだお前。頭おかしいんじゃ――」

 

 

 

【ハツホ】

「 うるせぇぇぇぇぇぇええええええええええっ! 」

 

 

 

 キ、キレた。ブチキレた。

 

 いきおいよくガバっと飛び起きる。

 

 そのまま〝ガシィ!〟とコッチの襟首(えりくび)掴んできた。

 

【ハツホ】

「こちとらなぁ!」

「来年までに卒業できなきゃ()()()()なんだよ!」

「ボロクソのクソミソにバカにされちまうんだよォォォオオオッ!」

 

【俺】

「知らねーよ!」

「むしろ知りたくもなかったよ!」

「……てかそもそもよく考えろ!」

「お前だって言ってたろ⁉ 散々言い続けてきたんだろ⁉」

「〝()()〟って!」

「お前とだけは〝()()()()()()()()〟って!」

 

【ハツホ】

「……でーじょうぶだ」

「そのことならアタシに考えがある」

 言ってハツホはテーブルに置いてあった白のビニール袋を取り出した。

 ……うわぁ、イヤな予感しかしねぇ。

「コレかぶれ、な?」

「頭からかぶれ、な?」

「そーすりゃお互い顔みなくて済むから――」

 

【俺】

「 どんなトラウマもんの初体験だよ! 」

 

 なに考えてんだコイツ⁉

 

 頭わいてんじゃねーか⁉

 

 てかせめてかぶるんなら自分でかぶれよな!

 

 その間に逃げっから!

 

【ハツホ】

「うっせぇぇぇえええええええっ!」

「いーから黙って×××だせ、オラァァァ!」

 

【俺】

「……ギャ、ギャアアアアアア⁉」

「た、助けて! 誰か助けてー!」

「犯されるー! レイプー!」

 

 ………。

 

 ………。………………。

 

 ………。………………。………………………。

 

 結論を先に言おう。

 

 俺はどうにか事無きを得た。

 

 カホ叔母さんが虫の知らせで様子を見に来てくれたからである。

 

 おかげで俺は助かったが……。

 

 ハツホは死んだ。

 

 殺された。

 

 どうか迷わず成仏してほしい……。

 

 合掌(がっしょう)

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