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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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39/42

039

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 19時32分

 帯渡島(おびとじま)本道、南地区方面

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

 五淵(ゴブチ)(シズク)令子(レイコ)のネチネチとした愚痴から解放された頃には、()はすっかりと地平線の彼方(かなた)にまで沈み込んでいた。

 

 街灯(がいとう)の少ないこの島では、夜はあっという間に広がっていく。

 

【雫】

(早く出ていきたいな、こんな島……)

 

 この暗い景色を目にする(たび)、雫はそう思わずにはいられなかった。

 

 (わび)しい明かりに人の気配……。

 

 たまに出向く内地とは何もかもが別世界である。

 

 大袈裟(おおげさ)でなく、雫にとってこの島は、まるで居心地の悪さと閉塞感で満ちた監獄のようだった。

 

 

 

 ましてや――――――()()()()()()()()()

 

 

 

【雫】

(いた)っ⁉」

 何かに蹴躓(けつまづ)いて転んでしまった。

「もー、サイアク……!」

 しかもその拍子(ひょうし)(かばん)から小物が外れ、コロコロと坂を下り、ガードレールをくぐって斜面(しゃめん)の林へと落ちてしまう。

 

 よりにもよって内地で買ったお気に入りのヤツだった。

 

 こんな下らない理由で手放したくない。

 

【雫】

「ちょっとちょっと――!」

 

 雫はあわてて後を追い、身体のあちこちに樹木や草葉の青臭い匂いを()みつかせながら、どうにかモノを見つけて手中に収めた。

 

          ――()()

 

【雫】

「やだ、もぉ……!」

 

 顔や手に泥がついている。

 

 こんなところに一秒だって長居はしたくなかった。

 

 早く上へと戻ろう。

 

 雫は小さな歩幅で一歩ずつ斜面をのぼった。

 

          ――()()()()

 

【雫】

「え?」

 

 何か今……()()()()()()()()

 

 足音。

 

 自分以外の。

 

【雫】

「………………。」

 

 雫はピタリと足を止めた。

 

 だが……無音。静寂(せいじゃく)

 

 波の音や虫の声こそ聞こえるものの、(あや)しい物音など何一つない。

 

 後ろへ振り返ってみても、月明かりさえ(さえぎ)られた暗い林が広がるのみだ。

 

【雫】

(気のせい……かな)

 

 雫は再び前を見た。

 

 

 

          ――()()

 

 

 

【雫】

「~~⁉」

 

 雫は無我夢中で斜面を駆け上がる。

 

 もう間違いない。 

 

 何か――いや、()()がいる。

 

 こんな人気のない、夜の林に。

 

          ――()()

          ――()()()()

          ――()()()()()()()()()()()()ッ!!

 

 自分を追い掛け回す、得体の知れない何者かが!

 

【雫】

「誰⁉」

「誰なの⁉」

 斜面をのぼりきり、ガードレールを飛び越えた雫は、数少ない街灯を背にとうとう振り返った。

「隠れてないで出てきなよ、ほら!」

 

 しかし反応はない。

 

 足音は林の中でピタリと止まっていた。

 

 まるで彼方(かなた)此方(こなた)、闇と光、決して越えられぬ境界線がそこにはあるかのように。

 

【雫】

「いい加減にしてよね……!」

 

 雫の中で恐怖と怒りがせめぎあっていた。

 

 マーブル色になった感情は冷静さから程遠(ほどとお)く、雫に必要以上の無理をさせる。

 

 だからそれは――――――ある意味で、()()だった。

 

【雫】

「え……⁉」

 

 暗闇に染まった林の中で、ぼうっと、幽鬼のように浮かび上がった()()()を目にしてしまうのは。

 

 その顔。

 

 長く伸びた黒髪で覆われているが――()()()()()()()()()()()()

 

【雫】

「そんな……」

「ウソ、でしょ……⁉」

 

 いや。

 

 聞いていた。

 

 雫も、聞いていた。

 

 最近になって――()()という話を。

 

 そんな噂を。

 

 聞いてしまっていた。

 

【雫】

()()()……!」

 あっという間に怒りは(しぼ)み、代わりにはち切れんばかりの恐怖が膨張(ぼうちょう)する。

「あ、あ、あ……、」

 唇が震えた。冷や汗が首筋を(つた)った。身体中に怖気(おぞけ)が走った。

「ウワァアアアァァァアアアアァァアアッ!!!」

 

 雫は半狂乱になってその場から逃げだす。

 

 一度たりとて、振り返ることもできぬまま――。

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