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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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31/33

031

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 17時32分

 斜崎(ナナサキ)家、那太郎(ナタロウ)の部屋

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

【俺】

「オラァ! PKサンダー体当たりだオラァ!」

 

【アツシ】

「ちょ⁉ やめい! ソレやめい! いたいんじゃー!」

 

【俺】

「ぬっふっふ……!」

「あ、やべ、ハンマーが、」

 

【アツシ】

「ガハハハハ!」

「逆転じゃあ!」

 

【俺】

「ぐぬぁああああ⁉」

 

 それから俺たちはずっとゲームをしていた。

 

 アツシが「ボタンが多いのはむずいからヤじゃ」とか言いだしやがったので、最初は〝星のカービィ スーパーデラックス〟からはじめ、その後〝スーパーボンバーマン3〟を経由してから本命の64(ロクヨン)を取り出し〝大乱闘スマッシュブラザーズ〟へと移行する。

 

 アツシは当初、不慣れなアナログスティックとボタンの数にブツクサ文句を言ってたが、ラウンドを重ねるにつれドンドンとのめり込み、互いに白熱したバトルを繰り広げる。

 

 そうこうしている内にあっという間に時間が過ぎ、気づけばもう夕方になっていた。

 

【アツシ】

「お、こんな時間か……」

 

 リザルト画面で二本目の〝桃の天然水〟を飲み干すアツシ。

 

【俺】

「……どーでもいいんだけどよ、」

「お前、もしかしてピンクが好きなのか?」

「飲んでんのもモモテンだし、使うキャラもカービィ一択だしよぉ……」

 

【アツシ】

「そ、そそそ、そんなワケないじゃろ!」

「偶然じゃ偶然! ガ、ガハハハハ!」

 

 ……なんちゅーわかりやすいヤツだ。

 

 もしかしてコイツ、レイコにもピンクの下着とかはかせてんじゃねーだろうな……。

 

【アツシ】

「そそそ、そんなことよりナタロー!」

 アツシが目を泳がせに泳がせながら話をすり替えた。

「いやー、おまえゲームいっぱい持っとんだのぅ! ビックリしたわ!」

「おまえんとこのオヤジさん、そんなに儲かっとんのか?」

 

【俺】

「……いや、んなこたぁねーよ」


【アツシ】

「でもハリウッドじゃろ? あのハリウッドで働いてんじゃろ?」


【俺】

「つってもB級映画スタジオとしか仕事してなかったからなぁ……」

 そのせいか、日本では父さんの認知度なんかないに等しい。

「一緒に暮らしてた限りじゃあ〝働けど働けど我が暮らしなんとやら~〟って感じだったぜ?」

 

 ましてや脚本家なんて不安定な仕事である。基本は夫婦そろって節約・倹約を徹底していた。

 

【アツシ】

「そうなんか……」

「ん? でも、そーなるとおまえ、こーゆーゲームとかどうやってそろえたんじゃ?」

「これだけの量、相当な額じゃろ」

 アツシの目線が室内をぐるりと一周し、棚のほうで止まった。

 

 そこには古今東西さまざまなゲーム機やそのソフトが、配線まで考慮した上でキレイに収められている。

 

【俺】

「自分で稼いで自分で買ったんだよ」

「アッチじゃ早けりゃ小学校高学年くらいからベビーシッターのバイトができっからな」

 

 端的に言えば俺はそこで稼いだお金をすべてゲームにつぎ込んだのである。

 

 もちろん、そのためには需要の確保が大事なので、ちゃんと赤十字社の講習を受けてライセンスも取ったし、最初は自分でチラシ(フライヤー)を刷ってスーパーの掲示板に貼りつけたり近所に配ったりなどした。

 

 また仕事にも一切手は抜かず、ご両親にはその都度シッター日誌を提出したし、子どもを寝かしつけた後は掃除などのちょっとした家事手伝いもやって他との差別化をはかった。

 

 ケータイの購入と契約に踏み切ったのもその一環である。

 

 実際、電話で連絡してくれれば即座に駆けつける、という対応はご近所のママさんパパさんたちにすこぶる好評だった。

 

【俺】

「だもんで子どもをあやすスキルばっかがどんどん上達してなぁ……」

「今でも一〇分あれば初対面の子とだって打ち解けられる自信があるぞ」

 

【アツシ】

「おまえも苦労しとったんじゃなぁ……」

 

【俺】

「あ、そうだ」

「なんかやりてーのあれば貸してやろっか?」

 

【アツシ】

「いいんか」

 

【俺】

「ああ。お前ん()、スーファミならあんだろ」

 

【アツシ】

「おう、つっても弟のじゃがの」

 

【俺】

「だったらスーファミのソフトでもいいし……」

 言いながら俺は棚から収納箱を取り出す。

「ドリキャス以外なら本体ごと貸してもいいぞ」

 

【アツシ】

「そうか? じゃ、じゃあ――」

 

 アツシの目がプレステへと移る。

 

 最初はやれボタンが多いだのどうこう言ってたが、興味自体はあったようだ。

 

 まあ、なにせ世界中で売れてる名機である。こんだけ人気があれば気にならないほうがヘンだろう。

 

【俺】

「ほれ、じゃあメモリーカードな。ケーブルはコレ使ってくれ」

「ソフトは何にするよ?」

 

【アツシ】

「ちょっと見せてくれい。うーん……」

 

 アツシが箱の中を覗き込んだ。

 

 プレステだけでも数十本はある。ましてや俺はジャンルを問わず楽しめるタイプなので、有名作品には取りあえず手をだしていた。

 

 これだけあればやりたいモノの一つや二つ、必ずや見つかるだろう。

 

【アツシ】

「 ! 」

 

 その時、アツシの手がピタリと止まる。

 

【俺】

「お、決めたのか?」

「ってお前、そりゃあ……!」

 

 アツシが手に取ったそのソフト――ピンクと評しても過言でない髪色の女の子が、葉っぱと花びらを背景にうっすらと微笑(ほほえ)んでいる。

 

【俺】

「……いっちゃえよ、なあ」

 ニヤリと笑う俺。

「だいじょうぶだって……()()()()()()()()()()

 

 俺はパッケージの女の子よろしく、悪魔の笑みをたずさえアツシを()()()へと(いざな)った。

 

 そのソフトの名は、

 

 

 

〝ときめきメモリアル ~forever with you~〟

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