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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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25/29

025

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 12時16分

 帯渡島(おびとじま)小中学校、プール

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

 それにつけてもイナカの哀しさよ……。

 

 ケータイショップ? 代理店?

 

 んなモン、あるワケねーよ……。

 

 電気屋だってないんだぜ……?

 

 そりゃ電池とか電球くらいならナナマートでも売ってるが、洗濯機やテレビ、冷蔵庫とかになると、船便で数日、ヘタすりゃ数週間かけて取り寄せるしかないのである。

 

 ケータイに関しちゃもっとヒドかった。購入だけでなく契約までしなきゃならんので、内地に渡る以外にやりようがない(しかも帯渡島から東京までは片道九時間。必然的に泊まりがけが前提となる)。

 

 だもんでこの島ではケータイひとつ買うのにも結構な〝覚悟〟が求められ、それだけにいざモノを手にした日にゃあ、ケータイ本体のみならず、そこまでのプロセスや得た情報にすら価値が生まれるのだった。

 

 ましてやカタログなんて言わずもがなである。

 

 この島ではお金を出したって手に入れようがないのだから。

 

【俺】

(へっへっへ、レイコ……! 俺が()()()()()()とでも思ってたかぁ……⁉)

 

 島に戻って以来、あのツンケンした女がただの一度だけ俺に興味を示した瞬間がある。

 

 mova(ムーバ)を出した時だ。その時だけは、吊り目気味のレイコが目を丸くしてたのを覚えている。シズクもまったく同じ反応だった。

 

 コレは使()()()――二人の反応から即座に見て取った俺は、今日の今日まで切り札を温存し、とうとうヤツらを交渉の場へと引きずり下ろすのに成功したのだった。

 

【俺】

「ヒャッハー! レイコォー! シズクゥー!」

 プールへの着水後に叫ぶ。

「なんだったら俺が懇切丁寧(こんせつていねい)に契約プランの説明もしてやったっていいんだぜェー⁉」

 

【レイコ】

「死ね。ヘンタイ……!」

 

【シズク】

「くたばれ。クズ……!」

 

 冷たい目。冷たーい目である。プールの水よりもよほどヒエッヒエだった。

 

 ……どうやら俺にいいようにされたのが相当くやしいらしい。

 

 だが残念だったな!

 

 ここ数日、お前らの冷たい視線や態度にさらされ続けた俺に死角はない!

 

 むしろスクール水着とくやしそうな顔のマリアージュを楽しんでやるぜェーッ!

 

【サヤカ先生】

「はーい。じゃあみんな、いっくよー」

 サヤカ先生が水に沈む名状(めいじょう)しがたきゴムボールのようなモノ――その真名(まな)をダイブボールという――を数個、プールの四方八方へと次々投げた。

 

【俺】

(よっしゃ、近い!)

 

 俺は内の一つを水中ですかさずつかみ、サヤカ先生のいるプールサイド付近へと()()()()。そして、事前に置かれていた俺のカゴに放り込んだ。

 

 これこそがプール・ザ・デスマッチにおける固有ルールの一つ。

 

 このゲームでは、通常の宝探し競争とは違い、水中でいくらボールをゲットしてもポイントにはならない。それらを持ち帰って自分のカゴに入れた時、はじめて得点となるのだ。

 

【ミコト】

「へっへーん! こっちも一点追加ー!」

 

【レイコ】

「シズク! アナタはあっちよ! ワタシはこっちに行くわ!」

 

【シズク】

「はーい! りょーかいでーす!」

 

 さすがにコイツらはよくわかっている。計算され尽くした動きだ。

 

〝ゲーム性〟というのはリスクとリターンで特徴づけられる。その点、このプール・ザ・デスマッチはよくできていた。

 

 プール内でボールを拾うだけでなく、そこから〝カゴまで持ち帰る〟というリスクを背負わねば、リターン=ポイントは得られないのだ。

 

 ましてやボールを複数持ってると、手が(ふさ)がるので泳ぐ速度が落ちる。ボールを落とす可能性だってあるのだ。なのでリスクは容易に増大する。

 

 そして今、この戦場(プール)には、リターンに目がくらみ明らかな悪手を打ったヤツが一人いた。

 

【アツシ】

「は⁉ し、しまった――」

 

 アツシである。

 

 幸か不幸か、アイツの陣取った初期位置には多めのボールが投げられていたのだが……それが完全に(あだ)となった。

 

【俺】

「ふっふっふ……ア~ツ~シ~!」

 

【アツシ】

「み、見逃してくれいナタロー! 見逃してくれぇー⁉」

 

【俺】

「見逃さないでか! タッチだオラァーッ!」

 

【アツシ】

「んぎゃああああああああああ~っ!」

 

 プール・ザ・デスマッチの固有ルールのその二。

 

 ボールを持っている時にタッチされると、そのボールは無効。のみならず、ただちに先生の(もと)まで戻しにいかねばならない。

 

 言うまでもなく、これは圧倒的なタイムロスである。

 

 何せその間、他の者は新たなボールを拾いに行くなり、得点するなりできてしまうのだから。

 

【サヤカ先生】

「はーい、じゃあ一〇秒前ねー! じゅー、きゅー、はち……」

 

【アツシ】

「んぁあああ! やばいやばいやばい!」

 

 そして第三の固有ルール、制限時間。

 

 今回の場合、三分間隔だ。

 

 三分間隔で、その時点での最下位は問答無用で脱落となる。

 

 これがあることによって、このゲームにはボンバーマンのサドンデスじみた緊迫感が生まれていた。

 

【アツシ】

「も、もぉダメじゃぁあああああっ!」

 

 最下位。

 

 哀しいことに、それはアツシの他にありえない。

 

 なにせアイツだけが未だに得点ゼロなのだから……。

 

 こういう事故が起こるからこそ、俺やミコト、レイコにシズクは、まずは手堅く一点を取るのに集中していた。

 

【俺】

「……あばよ、アツシ。お前のことは忘れねー」

 

【アツシ】

「おまえのせいじゃろーがぁぁぁあああああっ!」

 

 はっはっは。

 

 負け犬の遠吠えが心地いいぜっ!

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