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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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24/29

024

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

(15分前)

 12時00分

 帯渡島(おびとじま)小中学校、プール

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

【俺】

(そういやあったなぁ、こんなの……!)

 

 俺はプールの横のスペースに腰を下ろした。

 

 視線の先には……水中で白熱したバトルを繰り広げる小学生たち。

 

 あれこそが〝プール・ザ・デスマッチ〟である。

 

 端的に言えば宝探し競争みたいなゲームだ。基本的には先生が水に沈むゴムボールのようなモノを投げ(後でミコトに聞いたところ〝ダイブボール〟という名前らしい。知らなかった)、それを多く集めた者の勝ちである。そこにこの島独自のルールがいくつか加わって、中々にゲーム性が高い。

 

【俺】

(冷静に考えるとデスマッチぜんぜん関係ねぇな……)

(てゆーかこの場合〝ザ〟を挟んだらおかしくねえか……?)

 

 いや、100%の自信があるワケではない。

 

 俺もアッチに七年住んじゃあいたが、最後まで冠詞(アーティクル)はよくわからんかった。

 

 授業で作文(エッセイ)があるたびに、やれ「theをつけろ」だの「そこはthe じゃなくaにしろ」だの色々言われたが、イマイチ基準がわからない。中には「aもtheもどっちもつけなくていい」なんて場合もあるし、そもそも先生によって言ってることが違う時もあってでますます混乱した。

 

【俺】

(ま、考えてもしゃーなしか。どうせノリでつけた名前だろうし)

 

 まさに〝言葉は生き物〟である。

 

【アツシ】

「……いやぁー、ナタロー!」

 そこへアツシがやってきて、俺のとなりにドサッと座り込んだ。

「おっまえ泳ぐの速いのー! ぜんぜん追いつけんかったわ!」

 

【俺】

「ぬっふっふ。ようやくお前から一本取ってやったぜ」

 

 泳ぐのはずいぶん久しぶりだったが、それでも一度身体で覚えたことは簡単に忘れやしない。

 

 ついさっきまでやってたコース別練習で、俺たちは誰が一番速いかを競いあい、結果、アツシには勝つことができた。

 

 そう、アツシ()()

 

【ミコト】

「ふふん。でもオマエ、ボクにはかなわなかったな」

 そこへミコトがやってくる。とんでもないドヤ顔をひっさげながら。

 

 ……理由は言うまでもなかろう。

 

【俺】

「くっそ……! まさかお前に負ける日が来るとは……!」

 

【ミコト】

「まー、もう圧勝だったね。圧勝。勝負になんないくらい」

 

【俺】

「だいたいお前、水泳部だったんだろーが!」

「きたねーぞ、コッチにゃ数年越しのブランクがあんのに――」

 

【ミコト】

「あっれ~? 聞こえない? なんかどっかからワンワン聞こえない?」

「負け犬の遠吠えってヤツかな~、アハハハハ!」

 

【俺】

「……よーし、見てろ。次は絶対、俺が勝つからな!」

 

 次というのはプール・ザ・デスマッチのことである。

 

 今、小学生クラスがやってるのが終わったら、今度は入れ替わりで俺たちの番だった。

 

【ミコト】

「ふふん、何度やっても同じだよ」

 

【アツシ】

「ワシだって負けん!」

 

【俺】

「あ、そうだ。なら給食でなんか賭けようぜ」

「買ったヤツが一品、好きなモンもらえるってのはどーだ?」

 

【アツシ】

「お、いいのう! そーするか!」

 

【ミコト】

「ハハハ、なんだナタロー。お前むこうで貢ぎグセでもついたのか?」

「ボクに勝てるワケないじゃん!」

 

【俺】

「よし、決まったな」

「あー、でもそうなると三人だけじゃちょっとさびしいな……」

 俺はパッと立ち上がり、

「おーい! レイコー、シズクー!」

 少し離れたとこにいる二人に声をかけた。

「聞いてたろー? 次のゲーム、お前らも賭けようぜー?」

 

 だが、ヤツらの反応は、

 

【レイコ&シズク】

「「………………。」」

 

 無言。無言である。目を細めての、無言。

 

 多分、視線でモノを語れるなら「いい年して、バッカじゃないの」とでも言いたいのだろう。

 

 ノリの悪いヤツらだ………………いや、それともコレが月日の流れというモノだろうか。

 

 少なくとも、昔だったらここまで冷たい反応はされなかった。

 

 こちらからにせよ、あちらからにせよ、互いに声をかければ普通に遊んでいたのである。

 

 それが今や……これがオトナになるということか。

 

 こっちに戻ってきて早五日。

 

 正直、今日が一番、七年という時間の重みを痛感した。

 

【アツシ】

「……んー、まあ、仕方ないじゃろ」

 

【ミコト】

「……二人とも、あんましそういうの好きじゃないからね」

 

 さすがにアツシとミコトは俺よりもこういったコトに慣れてるようだ。

 

 というか、もしかしたら二人だって多少はムリして俺にあわせてくれているのかもしれない。

 

 俺からしてみれば、二人はまるで、思い出のアルバムからそのまま飛び出してきたような友人たちだったが……多分、それは幻想だ。

 

 俺だって七年で変わったように、みんなだって変わっている。

 

 きっとそういうことだ。

 

 オトナになるというのは、そういう寂しさも含め、時間を受け入れていくことなのだろう。

 

 ――まあ、

 

【俺】

「……しゃーねえ、ちょっくら行ってくっか」

 

 だからといって、そう簡単に引き下がる俺ではないが。

 

【ミコト】

「ちょ、ちょっと……ナタロー?」

 

【アツシ】

「おいおいおい……!」

 

 二人があわてる。

 

 俺がレイコたちの方へとズンズン歩いていったからだ。

 

【レイコ】

「……それ以上、近寄らないでくれる? ニンシンしちゃうわ」

 

 なんだよソレ……。流行(はや)ってるのかよ……。

 

 ていうかお前が流行(はや)らせてるのか?

 

 普通に傷つくからやめてくれよ……。

 

【シズク】

「アハハ。そーだ、そーだぁ。レーコさんに近づくなー。ケダモノー」

 

 コイツはコイツでケラケラ笑いながら悪ノリしてくるしよ……。

 

【俺】

「……わかった。じゃあこれ以上は近寄らねー」

 

 だがコイツらは知るまい。

 

【俺】

「こっからでいいから、話を聞いてくれ」

 

 俺の持つ()()()を――。

 

【俺】

「docomo、IDO、J-PHONE、Tu-Ka……」

 ピクリ。レイコとシズクの細眉が露骨(ろこつ)に反応した。

「ウチに、最新のカタログあんぞ。ケータイの」

 

【レイコ&シズク】

「「⁉」」

 

【俺】

「ついこの間、東京で手に入れたばっかだ」

 

【レイコ&シズク】

「「⁉ ⁉ ⁉」」

 

 

 

【俺】

「お前らが勝ったら、タダでくれてやるよ」

 

 

 

【レイコ&シズク】

「「⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」」

 二人が落ちた瞬間だった。

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